令和3年度の税制改正により、電子帳簿保存法が改正になり、電子取引の取扱いについては留意点が多いですが、今回は、
次の場合でのデータ保存方法等についてご案内します。
・電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領した場合
・インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)又は
ホームページ上に表示される請求書や領収書等のスクリーンショットを利用した場合
目次
電子取引と電磁的記録の定義
そもそも、法律上はどのようなものをいうのかについてご案内します。
電子取引の定義
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 ※最終改正日:令和03年03月31日
第2条 定義
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
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五 電子取引 取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。
以下同じ。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。
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電磁的記録の定義
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 最終改正日:令和03年03月31日
第2条 定義
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
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三 電磁的記録 電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によっては認識することができない方式(第5号において「電磁的方式」という。)で
作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。
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電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領した場合とインターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等のスクリーンショットを利用した場合の取扱い
上述の法令上のとおり、電子帳簿保存法上の電子取引に該当すると考えられます。
そのため、所定の方法により、請求書や領収書等に通常記載される日付・取引先・金額等の取引情報等に係るデータを保存しなければなりません。
電子帳簿保存法の改正前後の相違点の一つ
【令和3年度税制改正前】
データを出力した書面等により保存することも認められていました。
【令和3年度税制改正後】
データを出力した書面等の保存措置が廃止されました。
そのため、その出力した書面等は、保存書類(国税関係書類以外の書類)として取り扱わないこととされました。
データ保存の留意点
1、今回のケースでは、一般的に受領者側におけるデータの訂正削除が可能と考えられています。
そのため、受領したデータに法律上のタイムスタンプの付与が行われていない場合は、受領者側でタイムスタンプを付与すること又は一定の事務処理規程に基づいて、
適切にデータを管理することが必要です。
また、そのデータが添付された電子メールについて、そのメールソフト上で閲覧できるだけでは十分ではなく、その対象となるデータを検索できる状態で保存する必要があります。
2、各種税法に定められた保存期間が満了するまで保存する必要があります。
3、 取引慣行や社内のルール等により、データとは別に書面の請求書や領収書等を原本として受領している場合は、その原本(書面)を保存する必要があります。
消費税の仕入税額控除の適用にあたって
【現行法令】
消費税の仕入税額控除の適用をするためには、一定の帳簿及び請求書等(書面)の保存が必要です。
なお、取引金額が3万円未満の場合や、3万円以上でも「電子取引」のようにデータのみが提供されるなど、書面での請求書等の交付を受けなかったことに
やむを得ない理由がある場合には、帳簿のみを保存することにより仕入税額控除の適用を受けることができます。
【令和5年10月以降】
1、帳簿のみの保存で仕入税額控除の適用を受けることができるのは、一定の取引に限られます。
そのため、電子取引を行った場合に仕入税額控除の適用を受けるためには、適格請求書等として必要な事項を満たしたデータである電子インボイスの保存が必要です。
2、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力した書面等については、保存書類(国税関係書類以外の書類)として取り扱わないこととされましたが、
消費税法上、一定の方法で電子インボイスを整然とした形式及び明瞭な状態で出力した書面を保存した場合には、仕入税額控除の適用を受けることができます。
まとめ
令和3年度の税制改正による電子帳簿保存法の改正により、メール受領やホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータについての保存等については、
電子取引に該当すると考えられるため、一定の方法により、請求書や領収書等に通常記載される日付・取引先・金額等の取引情報等に係るデータを保存しなければなりません。
また、データ保存や消費税の仕入税額控除適用にあたっての留意点等がありますので、自社では、今後どのように運用するのかを事前に決めておきましょう。
出典参考資料:
国税庁
問4 当社は以下のような方法により仕入や経費の精算を行っていますが、データを保存しておけば出力した書面等の保存は必要ありませんか。
⑴ 電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領
⑵ インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)又は
ホームページ上に表示される請求書や領収書等のスクリーンショットを利用
⑶ 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
⑷ クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
⑸ 特定の取引に係るEDIシステムを利用
⑹ ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
⑺ 請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領