江東区の税理士     経営アドバイザー

佐藤充宏 江東区で税理士事務所・ファイナンスコンサルティング会社を経営しています。

経営者及び経理担当者の方むけ:長期借入と短期借入の違い──借入の目的別に考える最適な資金調達法

経営者及び経理担当者の方むけ:長期借入と短期借入の違い──借入の目的別に考える最適な資金調達法

はじめに

会社経営において、資金調達は避けて通れないテーマです。

新しい設備を導入したいとき、

在庫を増やしたいとき、

あるいは

一時的な資金不足を補いたいとき 等

状況に応じて金融機関からの借入を検討する場面は多々あります。

その際に重要になるのが

「長期借入」と「短期借入」の違い

です。

どちらも資金を調達する手段ですが、返済期間・金利水準・借入の目的等が大きく異なります。

本記事では、長期借入と短期借入の特徴や違いを整理し、

さらに借入の目的に応じた資金調達の考え方を解説します。

経営者や経理担当者の方が、資金繰り対策や金融機関対応に役立てられる内容です。


長期借入とは

長期借入とは、返済期間が1年以上に及ぶ借入のことを指します。

金融機関の融資では、設備投資や長期的な運転資金の確保に用いられるケースが一般的です。

長期借入の特徴

  • 返済期間が長い(1年以上)
     設備投資や事業拡大など、長期にわたる収益を見込んで計画的に返済していきます。
  • 金利は比較的高めになりやすい
     長期間にわたり貸し出すリスクを考慮し、金融機関は短期借入よりも金利を高めに設定する傾向があります。
  • 月次の返済が分割され、負担が軽減される
     返済が長期にわたるため、資金繰りへの急激な負担は抑えられます。

長期借入の利用目的例

  • 工場や店舗の新設、設備投資
  • 事業拡大に伴う人材確保・研究開発
  • 借換え
  • 長期的な運転資金の確保

短期借入とは

短期借入とは、返済期間が1年以内の借入を指します。

日々の運転資金や一時的な資金不足を補う目的で利用されることが多いです。

短期借入の特徴

  • 返済期間が短い(1年以内)
     資金繰りをつなぐための一時的な利用が中心です。
  • 金利は比較的低いことが多い
     貸出期間が短いため、金融機関側のリスクが少なく、長期借入よりも金利が低めに設定されやすいです。
  • 資金調達のスピードが速い
     必要なときにすぐ調達できるケースが多く、つなぎ資金として有効。
  • 返済負担が大きくなりやすい
     短期間で返済するため、比較的キャッシュフローへの影響が大きいです。

短期借入の利用目的例

  • 仕入代金や人件費などの運転資金
  • 季節的要因による一時的な資金不足の補填
  • 売掛金回収までのつなぎ資金
  • 短期的なプロジェクトやキャンペーン費用

長期借入と短期借入の比較

項目長期借入短期借入
返済期間1年以上1年以内
主な用途設備投資、事業拡大、長期資金運転資金、一時的な資金不足補填
金利水準比較的高め比較的低め
資金調達スピード比較的審査に時間がかかる比較的早い
返済負担月々の返済額は少ない短期集中で比較的多い
契約条件比較的厳格(担保・保証人が必要な場合あり)比較的柔軟

借入の目的別に考える最適な資金調達法

経営者や経理担当者が判断に迷うのは、

「どの場面で長期借入を選ぶべきか」

「どの場面で短期借入が適しているか」

という点です。

ここでは代表的な目的ごとに考え方を整理します。

設備投資・事業拡大

設備投資や新規事業立ち上げなど、大きな資金が必要で回収に時間がかかるものは

長期借入が適しているとされてます。

収益が出始めるタイミングと返済スケジュールを合わせることで、資金繰りの安定性を確保できます。

運転資金の補填

一時的な仕入代金や人件費の支払いに充てる運転資金は、短期借入が有効とされています。

資金不足が一時的である場合は、返済期間が短い短期借入で対応した方が効率的です。

売掛金回収までのつなぎ

稀に売掛金の入金が遅れた場合や、季節的に売上と支出のタイミングがずれる場合には、

短期借入で資金をつなぐのが一般的とされています。

入金が確定している売掛金がある場合、金融機関も貸出に応じやすい傾向があります。

借換え

すでに借入している短期資金を、低金利の長期借入に切り替える事が有効な場合もあります。

借換えによって返済負担を軽減し、キャッシュフローの安定を図れます。


実務での注意点

  1. 資金用途を明確にする
     「何のために資金が必要か」を整理することで、                                     長期と短期のどちらが適しているか判断しやすくなります。
  2. 金融機関との信頼関係を築く
     長期借入はもちろんですが、短期借入でも金融機関との信頼関係が重要です。                    普段から資金繰り表や経営計画を共有しておくことで、いざという時にスムーズに借入が可能になります。
  3. 返済計画を無理なく立てる
     返済期間や返済額を誤ると、資金繰りが悪化する場合があります。                               売上予測や入金サイクルを踏まえ、余裕を持った計画を立てましょう。
  4. 借入はあくまで手段
     借入は資金調達の一つの方法にすぎません。                                                 自己資金や補助金、社債発行など他の選択肢と比較し、                                   自社にとって最も適した手段を選ぶことが大切です。

まとめ

長期借入と短期借入は、返済のスパンや金利条件に加え、 

資金の使い道やキャッシュフローへの影響に大きな違いがあります。

長期借入は設備投資や事業拡大といった「回収に時間を要する投資」に向いていると一般的にされており、

短期借入は「一時的な資金不足の補填」に有効とされています。

そして、経営者や経理担当者は、借入を検討する際に      

「資金の使い道」と「返済可能性」をセットで考えることが重要です。

その上で金融機関と良好な信頼関係を築き、資金繰りに無理のない資金調達を行うことが、

持続的な経営の安定につながります。


免責事項

本記事は参考情報の一つとしてご覧ください。

記載内容に基づく最終的な行動や判断は、リスクを十分ご理解のうえ、ご自身の責任にてお願いいたします。

Return Top