経理部門の仕事をしていると、実際の事業資金の出納業務を担当する機会があります。
日々取引先から送付されてくる請求書を会社の支払いサイトに応じて振込をする場合や、会社が月末等の請求締め日に合わせて得意先に請求書を発行して、滞りなく売掛債権が回収されているのかをチェックします。
日々の事業資金の管理は大切な業務です。
事業資金があるからこそ、事業活動は継続します。
目次
今後見込まれる経営数値を算出する予算業務は会社にとって必須業務です
ところで、実際の事業資金の出納業務はもちろん大切な業務ですが、一方では、将来の事業資金がいくら必要になるのかを見込む事も大切です。
市場環境の急変や新しいニーズに対応するために新商品を開発するのであれば、その開発に係る試作コストや量産コスト、マーケティングコスト、営業コストといった今まで発生した事のない支払いが出てくる事になります。
計画性のある入出金は事業の成長スピードを加速させます
新しい支払が発生する事が見込まれるという事は、その支払いに応じた手元資金がないといけません。
そして、それを既存商品やサービスの売上で賄うのか、金融機関からの融資で充てるのかといった事を見込む必要があります。
これは、事業資金計画でもありますが、合わせて会社の今後の経営数値を計画する事でもあります。
将来発生する売上がどのくらいであり、原価や費用がどのくらいなのかを予測する事により、これからの事業活動が明確になり、一つ一つの事業の採算性もイメージする事が出来ます。
例えば、もし、行き当たりばったりで営業費用を増やしても、それに見合う収入が全く計上出来なければ、会社は厳しい局面に陥ってしまいます。
予算を策定するのは、どのような規模の会社でも必要です
「うちの会社は小規模だから予算を考えるまでもない」
とお考えの方もいらっしゃいます。
しかし、そのような方でも、頭の中やメモ書きで来年度はどれくらいの売上を見込んで、固定費や変動費がどれくらい発生するのかの目安を立てています。
予算というと難しく考えてしまいがちですが、ほとんどの経営者がこのように今後の損益を見込んでいます。
予算を立てるからこそ、今後の事業活動がブラッシュアップされるのです
来年度予算は、たいてい、当年度中までに会社内の各担当部署からの情報を集計して策定します。
そして、経理部門は、この集計作業を担当し、経営層に予算報告をする資料を作成します。
(もちろん、経理部門自身の予算策定をする必要もあります)
この予算が承認されると、各担当部署はその予算達成に向けて努力します。
そして、その予算対象となる事業年度では、今度はその実績値が算出されます。
例えば、
4月の売上額が予算値では2.5億だったのが2億となっていたり、
人件費が8,000万円の予算で見込んでいたところ、実績値が8,500万円となっていたりします。
すると、各担当部署では、
なぜ、予算値が達成できなかったのか
というのを検証します。
売上が未達成(未達ともいわれます)であれば、生産が追い付かずに機会損失が生じてしまったのか、人件費であれば、予定外の業務が集中したために残業時間が大幅に増えてしまったのかというのように未達成の原因を見つけ出します。
この原因を洗い出さなければ、今後も減収・減益が続いていく事になってしまいます。
これらの検証資料を作成するのも経理部門の役割の一つです。
そのため、経理部門では、各担当部署の業務内容を理解するのも必要ですが、予算の仕組みというものを理解しなければなりません。
予算組みの大切さ、予算策定のプロセスやノウハウ。
予算に関する業務は経理部長には必須なのです。
まとめ
経理部長は、いくつもの経営数値の仕組みを理解し、その数値を迅速・正確に算出しなければなりません。
実績値はもちろんですが、今回ご案内した予算値を算出する事は会社全体の今後の事業活動の成否にも大きく関わってきます。
そして、予算の仕組みを理解・実践できる経理部長は、経理部門の各担当者だけでなく、他の担当部署にもその仕組みを理解してもらい、予算策定業務を実践してもらえるようにしましょう。