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佐藤充宏 江東区で税理士事務所・ファイナンスコンサルティング会社を経営しています。

金融庁より、「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を踏まえた有価証券報告書等の提出期限の延長について」がされました

金融庁より、「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を踏まえた有価証券報告書等の提出期限の延長について」がされました

4月14日付で、金融庁から「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を踏まえた有価証券報告書等の提出期限の延長について」が公表されました。

そして、日本取引所グループ(JPX)等でも、同日付で本件に関する案内が公表されました。

通常、3月決算の上場企業であれば、毎年6月頃に株主総会を実施して、株主にその年度の決算発表や今後の計画等を報告しますが、その元となる情報の主要な部分を占めるのが、この有価証券報告書等です。

今回は、この有価証券報告書等の提出期限を延長するという事ですが、この有価証券報告書とはどのようなものなのか等についてご案内致します。

有価証券報告書とは

この有価証券報告書は、略して「有報」とも言われますが、この有価証券報告書には、どのような内容が記載されているのかというと、

概して、株式を発行している上場企業やその他一定の企業が、自社の概況や経営状況をまとめた書類のことです。

そして、これに基づき、その会社の現在の状況や将来性が表され、市場の公正化や投資家の保護等を図る事を目的としています。

この有価証券報告書作成提出については、金融商品取引法では、次のように規定されています。

(有価証券報告書の提出)
第二十四条
有価証券の発行者である会社は、その会社が発行者である有価証券(特定有価証券を除く。次の各号を除き、以下この条において同じ。)が次に掲げる有価証券のいずれかに該当する場合には、内閣府令で定めるところにより、事業年度ごとに、当該会社の商号、当該会社の属する企業集団及び当該会社の経理の状況その他事業の内容に関する重要な事項その他の公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事項を記載した報告書(以下「有価証券報告書」という。)を、内国会社にあつては当該事業年度経過後三月以内(やむを得ない理由により当該期間内に提出できないと認められる場合には、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ内閣総理大臣の承認を受けた期間内)、外国会社にあつては公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして政令で定める期間内に、内閣総理大臣に提出しなければならない。
ただし、当該有価証券が第三号に掲げる有価証券(株券その他の政令で定める有価証券に限る。)に該当する場合においてその発行者である会社(報告書提出開始年度(当該有価証券の募集又は売出しにつき第四条第一項本文、第二項本文若しくは第三項本文又は第二十三条の八第一項本文若しくは第二項の規定の適用を受けることとなつた日の属する事業年度をいい、当該報告書提出開始年度が複数あるときは、その直近のものをいう。)終了後五年を経過している場合に該当する会社に限る。)の当該事業年度の末日及び当該事業年度の開始の日前四年以内に開始した事業年度すべての末日における当該有価証券の所有者の数が政令で定めるところにより計算した数に満たない場合であつて有価証券報告書を提出しなくても公益又は投資者保護に欠けることがないものとして内閣府令で定めるところにより内閣総理大臣の承認を受けたとき、当該有価証券が第四号に掲げる有価証券に該当する場合において、その発行者である会社の資本金の額が当該事業年度の末日において五億円未満(当該有価証券が第二条第二項の規定により有価証券とみなされる有価証券投資事業権利等である場合にあつては、当該会社の資産の額として政令で定めるものの額が当該事業年度の末日において政令で定める額未満)であるとき、及び当該事業年度の末日における当該有価証券の所有者の数が政令で定める数に満たないとき、並びに当該有価証券が第三号又は第四号に掲げる有価証券に該当する場合において有価証券報告書を提出しなくても公益又は投資者保護に欠けることがないものとして政令で定めるところにより内閣総理大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
一 金融商品取引所に上場されている有価証券(特定上場有価証券を除く。)
二 流通状況が前号に掲げる有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券(流通状況が特定上場有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券を除く。)
三 その募集又は売出しにつき第四条第一項本文、第二項本文若しくは第三項本文又は第二十三条の八第一項本文若しくは第二項の規定の適用を受けた有価証券(前二号に掲げるものを除く。)
四 当該会社が発行する有価証券(株券、第二条第二項の規定により有価証券とみなされる有価証券投資事業権利等その他の政令で定める有価証券に限る。)で、
当該事業年度又は当該事業年度の開始の日前四年以内に開始した事業年度のいずれかの末日におけるその所有者の数が政令で定める数以上(当該有価証券が同項の規定により有価証券とみなされる有価証券投資事業権利等である場合にあつては、当該事業年度の末日におけるその所有者の数が政令で定める数以上)であるもの(前三号に掲げるものを除く。)

この条文にあるとおり、上場企業等では、有価証券報告書を提出するのです。

ところで、金融商品取引法という法律は、どのような目的で制定されているのかというと、

(目的)
第一条
この法律は、企業内容等の開示の制度を整備するとともに、金融商品取引業を行う者に関し必要な事項を定め、金融商品取引所の適切な運営を確保すること等により、
有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、
もつて国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とする。

とあります。

そして、「国民経済の健全な発展及び投資者の保護」とあるとおり、投資家保護という点からもこの金融商品取引法は定められています。

よくメディアで見かける株主総会で、経営者が決算発表をし、その内容について、株主からの意見や質問が発言されるのは、投資家である株主が、有価証券報告書や株主総会での情報に基づき、投資先の経営状態を見極めるために、株主としての権利を行使している事でもあるのです。

そして、有価証券報告書を見るのは、現在の投資家に限った事ではなく、将来投資をしようと思っている潜在的投資家も含まれており、また、その企業との取引をしている会社や取引を使用としている会社、そして、債権者等も含まれます。

そのため、有価証券報告書は、重要な書類なのです。

有価証券報告書の記載内容

有価証券報告書を提出している企業は、通常、会社のホームページでも、投資家向けのIR情報として有価証券報告書を掲載しています。

そして、これには、四半期ごとに発表している「四半期報告書」というものもあります。
(四半期報告書は有価証券報告書と記載内容が異なる部分があります)

そのため、

報告書の年間構成の順番は次のようになっています。

四半期報告書(第1四半期)

四半期報告書(第2四半期)

四半期報告書(第3四半期)

有価証券報告書

そして、企業により異なる部分はありますが、次のような内容が掲載されます。

経営指標:
数年間分の売上高や当期純利益、株主資本比率、キャッシュフロー、従業員数等

沿革

事業内容

関係会社の状況

経営方針や経営環境及び対処すべき課題

事業リスク

財政状態及び経営成績及びキャッシュフロー状況

生産・受注・販売実績等

設備投資状況

大株主・自己株式の状況

配当政策

コーポレートガバナンス

役員の状況

役員報酬

投資先の情報

財務諸表  等

これら以外にも、多くの情報が掲載され、そして、その報告会社だけでなく、関係会社等の情報も表示されます。

このように、有価証券報告書は、その企業の情報を調べるには、有用であり、そして、必要なものなのです。

そのため、有価証券報告書の作成には、多くの関係者が関わり、そして、膨大な時間をかけて作成されるのです。

新型コロナウイルスの影響により、有価証券報告書の作成が遅れてしまう状況になっています

しかし、今回は、有価証券報告書の作成にも新型コロナウイルスの影響が及ぼしています。

報告書作成に関わっている人でいえば、報告書作成会社や関係会社の担当社員、監査法人の担当者等は、今までのように、各々の業務をスケジュール通りにこなすのが困難になってきています。

その他にも、新型コロナウイルスの影響により取り組まなければならない事もあり、有価証券報告書の提出を予定通りに完了させることができない事が想定されてくるようになりました。

そこで、今回の、有価証券報告書等の提出期限が9月末日までに延長される運びとなったのです。

今回の有価証券報告書の開示内容に新型コロナウイルス感染症の影響が織り込まれる場合も想定されます

有価証券報告書は、上記のとおり、その報告書提出企業に関する重要な内容が記載されますので、今回の新型コロナウイルスが、その会社の事業活動にどのような影響を与え、そして、その影響が今後どのような推移をたどるか等も記載される事になると想定されます。

経済活動にも多大な影響を与えている新型コロナウイルスが、その会社に対して具体的にどのような影響を与えているのかも、今回の有価証券報告書からも確認する事が出来ると思われます。

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