江東区の税理士     経営アドバイザー

佐藤充宏 江東区で税理士事務所・ファイナンスコンサルティング会社を経営しています。

経営者及び経理担当者の方むけ:普通の銀行とはここが違う!信託銀行の特徴と経営への活用ポイント

経営者及び経理担当者の方むけ:普通の銀行とはここが違う!信託銀行の特徴と経営への活用ポイント

はじめに

経営者や経理担当者の中には「信託銀行」という名前は聞いたことがあるけれど、具体的に何をしているのか分からないという方も多いのではないでしょうか。

一般的な銀行と同じように、預金や融資といった業務を行っている一方で、

信託銀行はその名の通り「信託業務」という独自の機能を持っています。

この信託業務は、

企業の資産管理や事業承継、

年金運用、

不動産の活用など、

経営に直結する領域で強みを発揮します。


つまり、銀行と信託銀行の違いを正しく理解し、自社の戦略に合わせて使い分けることができれば、

財務戦略や資産管理の幅が格段に広がるのです。

本記事では、信託銀行と普通の銀行の違い、その特徴、そして経営への具体的な活用ポイントについて、

実務目線で解説します。


1. 信託銀行とは何か

信託銀行は、銀行業務(預金・融資・為替)に加えて、信託業務を行う金融機関です。

信託業務とは、

顧客から預かった財産を一定の目的に従って管理・運用し、その成果を受益者に還元する仕組みのことです。

例えば、不動産の管理運営、年金資産の運用、遺言や相続に基づく資産管理などが代表例です。

こうした業務は通常の銀行ではできません。

法律上も、信託銀行は「銀行法」と「信託業法」の両方に基づいて業務を行っています。


2. 普通の銀行との違い

普通の銀行と信託銀行の大きな違いは、取り扱える業務の範囲です。

普通の銀行
主な業務は、預金・貸出・為替などの銀行業務です。

顧客の資産を「預かる」ことはできますが、「運用・管理」までは行いません。

信託銀行
銀行業務に加えて、信託業務を行えるため、資産の管理・運用・承継まで実施可能です。

そして、金融だけでなく、不動産や年金といった幅広い分野を横断的に取り扱えます。

この違いにより、信託銀行は「資産管理・承継・長期運用」といったサービスを提供できるのです。

銀行と信託銀行の主な違い(各銀行・信託銀行によって異なる場合があります)

項目普通の銀行信託銀行
主な業務範囲預金、融資、為替銀行業務+信託業務(資産管理・運用・承継)
法律上の根拠銀行法銀行法+信託業法
資産の運用・管理原則不可信託契約に基づき可能
不動産関連サービス限定的(担保評価など)不動産信託、管理、売却、開発など幅広く対応
年金業務原則不可年金信託、運用、管理が可能
事業承継・相続支援原則不可遺言信託、事業承継信託など専門的サービスあり
顧客層個人・法人全般個人富裕層・法人(資産規模の大きい企業や団体が多い)


3. 信託銀行の主な業務

(1) 銀行業務

普通の銀行と同じく、預金や融資、為替業務を行います。

そのため、企業の運転資金や設備資金の融資も可能です。

(2) 信託業務

信託契約に基づき、顧客の財産を管理・運用します。 

具体例としては以下があります。

  • 金銭信託(年金信託、投資信託など)
  • 不動産信託(管理・運営・売却)
  • 遺言信託(遺産の分配、相続手続き支援)

(3) 併営業務

不動産仲介や証券代行(株主名簿管理、配当金支払)、M&Aアドバイザリーなど、多様な周辺業務も行います。


4. 経営者にとってのメリット

メリット1:資産管理の一元化

現金、不動産、有価証券といった多様な資産を、1つの信託契約で一元管理できます。

これにより、資産状況を全体像として把握しやすくなります。

メリット2:事業承継の円滑化

遺言信託や事業承継信託を活用することで、後継者への経営権移転や資産承継がスムーズに行えます。

そして、争族リスクの軽減にもつながります。

メリット3:専門的な運用サービス

年金や長期資産の運用において、専門チームによる高度な運用戦略を利用できます。

中長期的な安定運用を目指す企業には大きな価値があります。

メリット4:不動産の有効活用

自社が保有する不動産を信託化することで、管理・売却・運用を専門家に任せられます。

そのため、賃料収入や売却益を効率的に経営に組み込むことが可能です。


5. 経理担当者にとってのメリット

経理担当者にとっても、信託銀行の活用は業務効率化や精度向上に役立ちます。

  • 複数の金融機関や資産管理先を一本化でき、資金管理の負担が減る
  • 年金や不動産収入の入金管理が明確化し、会計処理がスムーズになる
  • 株式や有価証券の管理、配当処理を効率化できる

6. 活用時の注意点

信託銀行のサービスは専門性が高く、手数料や契約条件が複雑な場合があります。

契約前には、以下の点等を確認しておくことが重要です。

  • 手数料体系(管理料、運用報酬など)
  • 契約期間や解約条件
  • 信託財産の範囲と管理方法
  • 運用方針とリスク許容度

これらを理解したうえで、自社の経営戦略や財務状況に合うサービスを選ぶ必要があります。


まとめ

信託銀行は、普通の銀行にはない「信託業務」という強みを持ち、

企業の資産管理・運用・承継まで幅広くサポートできる金融機関です。


経営者にとっては、財務戦略の幅を広げ、事業承継や資産運用の質を高めるパートナーになり得ます。

また、経理担当者にとっても、資産管理の効率化や会計処理の精度向上に直結します。

銀行との違いを理解し、自社に合った信託銀行サービスを取り入れることで、

経営基盤の強化と将来への備えに繋げましょう。

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