毎年7月と12月は、多くの会社で賞与を支給します。
その年の景気状況により賞与に影響を与えるケースもありますが、従業員一人一人の会社への貢献度等を考慮して賞与を支給します。
ところで、賞与を支給するといっても、年末に資金が事業計画より多めに残ったので支給する場合もあれば、その年の夏の時期は経営環境が厳しかったので、賞与の金額を少なく支給するという事もあったりするかもしれません。
賞与は、毎月の給与とは別枠での支給のため、経営者としても、どのように支給するのがベストなのか悩むところです。
そこで、今回は、賞与支給にあたり、査定期間や評価方法をどのように設けたら良いのか、そして、賞与に関する経理処理についてご案内します。
目次
賞与は査定期間中の評価により支給するのが一般的です
賞与を支給する際に、
先月の業績アップに貢献してくれたから賞与を増やそう
来月に大きなプロジェクトがあるので、今月の賞与は期待値を込めて増額支給しよう
と考える経営者がいるかもしれません。
しかし、事業活動が継続している会社で、その時点での評価や期待値を考慮して支給してしまうと、会社全体での評価方法が統一しない場合があります。
そのため、一般的には、
査定期間
というのを設けて、ある一定期間の従業員の成果等を評価して、賞与の支給額を決める事になります。
例えば、7月と12月に賞与を支給するのであれば、
7月賞与の査定期間は昨年10月から今年の3月
12月賞与の査定期間は今年の4月から9月
といったように、その賞与を支給する際の評価対象となる期間を決めます。
ちなみに、夏と冬以外の賞与では、決算時や臨時での賞与支給もあります。
これは、業績が向上して、当初予定以上の利益が確保出来た場合や、特需等で売上が飛躍的にアップした場合に支給されるケースがあります。
そして、会社毎に賞与の評価方法が決まっているので、その評価方法にあてはめます。
出勤状況
所属部署への貢献度
勤務態度
等を基準として設けます。
また、評価で悩まれる方で多いのが、
相対的に評価するのか
絶対的に評価するのか
という事がその一つとしてあります。
会社としての賞与の原資資金があり、その中でどのように配分するのかという部分もあります。
全社員に一律にて支給するというのは評価が反映されていない事にもなるため、会社として5段階評価をしていた場合には、同じ段階での評価者が複数出る場合があります。
しかし、単純にそのまま支給するのは俯瞰的に見ると、実際のパフォーマンスと比べてバランスが取れていないという事にもなります。
そのような場合には、査定調整をする場合もあります。
会社が従業員を評価した結果が賞与にも反映されるという事は、従業員も、受け取った賞与の額によって、会社からどのように評価されているのかが感覚的に分かるのです。
そのようなことから、従業員に対しては、会社がどのように評価しているのかを明確に伝えられるようにしておかなければなりません。
賞与を支給した際の経理処理
賞与は、毎月支給する給与とは異なる、臨時的な支給になります。
そのため、通常は、「賞与」という勘定科目を使用します。
また、役員に対する賞与と従業員に対する賞与は区分する必要があるため、「役員賞与」と「(従業員)賞与」に損益計算書上は分けるようになります。
なお、賞与を支給する際には、雇用保険料や健康保険料・厚生年金保険料・所得税といったものが控除されるので、賞与の総額が判明した段階で、総務経理担当者は賞与支給額の計算を行い、従業員に実際に支給する金額と社会保険料や税金の支払う額を計算します。
年間の賞与支給見込み額を事前に把握しておきましょう
多くの会社が予算管理をしていて、次年度の損益を見込み、事業資金が滞りなく循環するのかを計画します。
そして、その中の項目に、人件費というものも当然あるため、給与と賞与が織り込まれているので、予算として織り込んだ賞与と実際の賞与にどれだけの差が出るのかというも実際に検証する必要があります。
そのため、次回支給する賞与のうち、単月にどれだけの負担が生じるのかを月割り等で計算し、経営数値に織り込むのも、管理上必要となる場合があります。
そこで、会社によって処理方法は異なりますが、次のような処理方法もあります。
例:
7月賞与の査定期間は昨年10月から今年の3月
12月賞与の査定期間は今年の4月から9月
12月賞与としての支給見込み額が1,200万円(実際支給額も同額と仮定)
↓
4月から9月までの月次決算で賞与支給見込み額の単月分200万円(1,200万円÷6か月))を毎月の損益に計上
毎月の仕訳
【借方】賞与引当金繰入 200万円 【貸方】賞与引当金 200万円
すると、9月の月次決算の段階では、貸借対照表と損益計算書に
B/S
賞与引当金 1,200万円
P/L
賞与引当金繰入 1,200万円
と計上されます。
そして、12月賞与支給時には、
【借方】賞与引当金 1,200万円 【貸方】預金 1,200万円
とするのです。
なお、この仕訳は、一例であり、また、経理処理によって、税金の所得計算や納税額の計算に一定の調整が必要となる場合がありますが、実際の処理にあたっては、顧問税理士等に確認をしながら進めましょう。
賞与の社会保険料の納付について経理処理に織り込む必要があります
賞与を支給する際には、健康保険料・厚生年金保険料等といったものが控除されると説明しましたが、この健康保険料や厚生年金保険料については、納付時には、控除した個人負担分だけでなく、会社負担分も合わせて支払います。
そして、この会社負担分の社会保険料は会社の経費となるため、この分もあらかじめ支給前に見込んでおく事になりますが、こちらも、経理処理によっては、税金の所得計算や納税額の計算に一定の調整が必要となる場合があります。
まとめ
賞与を支給するという事は、会社の成長・発展に貢献してくれた従業員に会社として評価した証を金銭として支払う事です。
そのため、査定の対象期間中にどのような基準で賞与を算定したのかを従業員にも説明し、そして、更なる貢献をしてもらえるような仕組みを構築する必要があります。
また、賞与を支給するのであれば、どれだけの費用が発生するのかを見積り、そして、その金額を査定期間中の月次決算に織り込むのか等も検討しながら、会社の予算管理、そして、事業計画上も整合性の取れるように処理をしましょう。
そして、賞与支給に関する経理処理によっては、税金の所得計算や納税額の計算に一定の調整が必要となる場合がありますので、実際の処理にあたっては、顧問税理士等に確認をしながら進めましょう。