消費税の適格請求書等保存方式が令和5年10月1日から開始となりますが、適格請求書等の保存にあたって気になる事の一つが、
毎月の店舗や事務所の家賃を支払っているけれど、不動産賃貸借契約書はあっても、領収書や請求書の交付は受けていない。
という事があります。
家賃の支払いは金額が大きく、その取扱いを間違えてしまって、消費税の仕入税額控除が受けられなくなってしまっては困ります。
そこで、このような場合にはどのように取り扱ったらよいのでしょうか。
目次
適格請求書等と消費税の仕入税額控除
売り手側である適格請求書発行事業者は、
原則として、
課税事業者である取引の相手方の求めに応じて、
適格請求書を交付する義務及び交付した適格請求書の写しを保存する義務があります。
そして、買い手側は、
原則として、
一定の事項を記載した帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件とされ、
適格請求書も保存をしなければなりません。
通常の不動産の賃貸借
貸主から店舗や事務所を賃借する際には、最初に、不動産賃貸借契約書等を作成しますが、その後、毎月同額の支払いしか発生しない場合には、
貸主から請求書や領収書が交付されない事も多いです。
しかし、消費税の仕入税額控除にあたっては、適格請求書等の保存が原則として必要です。
※令和5年9月30日以前からの契約について、契約書に登録番号等の適格請求書として必要な事項の記載が不足している場合には、
別途、登録番号等の記載が不足していた事項の通知を受け、契約書とともに保存していれば差し支えない事とされています。
不動産の貸主と借主の対応
適格請求書は、一定期間の取引をまとめて交付することもできます。
そのため、一定要件のもとで、
貸主側:一定期間の賃借料についての適格請求書の交付をする。
借主側:貸主側が交付した適格請求書を保存する。
という方法も可能です。
ところで、
適格請求書として必要な記載事項は、
一の書類だけで全てが記載されている必要はなく、
複数の書類で記載事項を満たせば、それらの書類全体で適格請求書の記載事項を満たすことになります。
つまり、
不動産賃貸借契約書に適格請求書として必要な記載事項の一部が記載されており、
実際に取引を行った事実を客観的に示す書類とともに保存しておけば、
仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
そのため、次のように運用すれば、仕入税額控除の要件を満たす事になります。
1、口座引落の場合:不動産賃貸借契約書と通帳を両方保存する
・適格請求書の記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された不動産賃貸借契約書を保存する。
・通帳(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を保存する。
2、振込の場合:不動産賃貸借契約書と口座振込時の振込金受取書等を両方保存する
・適格請求書の記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された不動産賃貸借契約書を保存する。
・振込時に発行された振込金受取書等(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を保存する
注意点
消費税の適格請求書等保存方式においては、適格請求書発行事業者以外の者に支払う取引対価の額については、
原則として、仕入税額控除する事ができないことになっています。
そして、不動産賃貸借のように、取引の都度、請求書や領収書等が交付されない取引については、
取引の中途で貸主側が適格請求書発行事業者でなくなる場合も想定されます。
しかし、その旨の連絡がない場合には、借主側はその事実を把握することは困難となり、仕入税額控除ができない状態になっているかもしれません。
そのため、必要に応じて、国税庁のホームページ「適格請求書発行事業者公表サイト」で相手方が適格請求書発行事業者か否かの確認をするようにしましょう。
まとめ
消費税の適格請求書等保存方式において、不動産賃貸借のケースでは、一定要件のもとで、不動産賃貸借契約書に適格請求書として必要な記載事項の一部が記載されており、
実際に取引を行った事実を客観的に示す書類とともに両方保存しておけば、仕入税額控除の要件を満たしますが、
不動産賃貸借の契約時期や契約締結後にどのような対応が必要となるのか等について、法律上の要件を満たしているのか、
実際の個々の契約毎に事前に確認をしましょう。
出典元:
国税庁
13 当社は、事務所を賃借しており、口座振替により家賃を支払っています。不動産賃貸契約書は作成していますが、請求書や領収書の交付は受けていません。
このような場合、請求書等の保存要件を満たすためにはどうすればよいですか。
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