3月決算の会社は、既に2019年度決算作業に入っているところが多いと思います。
そして、商品や製品を販売している会社であれば、2020年3月31日時点での在庫を把握するために、棚卸を行ないます。
これは、決算期末の段階でどれだけの在庫が残っているのかを把握する事によって、既に販売された分の商品や製品と、今後販売される商品や製品を明確にできます。
この棚卸をしないと、その年度の正確な利益を算出する事が出来ません。
在庫を把握する事により、粗利益(売上総利益)が正確に算出されます
イメージし易いように、次のような数値を用いてご説明します。
(2018年度期末時点では棚卸はなく、消費税の計算は考えないと仮定します)
1、2019年度中の取引の内訳
仕入 商品1,000個を全て同じ単価である10,000円で購入
→仕入高は、10,000,000円
売上 商品800個を全て同じ単価である12,000円で販売
→売上高は、9,600,000円
2、棚卸をしなかった場合の損益計算書
売上高 9,600,000円
売上原価
仕入高 10,000,000円
粗利益(売上総利益) マイナス400,0000円
となりますが、仕入高のうちには、いまだに販売されていない商品200個(1,000個―800個)が含まれています。
そのため、200個分の売上が計上されていないのに、その分の原価が計上されてしまっている事になります。
3、棚卸をした場合の損益計算書
売上高 9,600,000円
売上原価
仕入高 10,000,000円
期末商品棚卸高 2,000,000円(※)
売上原価 8,000,000円
粗利益(売上総利益) 1,600,000円
(※)販売されていない商品の在庫
単価10,000円×期末時点で販売されていない数量200個=2,000,000円
4、棚卸の実施の有無による経営数値への影響
上記2と3を比較すると分かるように、棚卸をしていないと、次のような状況になってしまいます。
・今年度の売上に対するコスト(売上原価)が正確に把握できない
・翌年度以降のコストとなる分が全て今年度のコストとなってしまうので、翌年度以降に200個が売上となっても、その分に対応するコストが損益計算書に計上されなくなってしまう
もちろん、決算書に誤りがあるので、税務調査が入った時にも問題となってしまいますが、そもそも、その在庫の管理が出来ていないとう事になってしまいます。
在庫を知る事により、将来どれだけの売上が計上されて事業資金が入っているのかを予測しやすくなります
ところで、在庫を把握する事によるメリットはどのような事があるのでしょうか。
・在庫ロスを減らす事に繋がり、次回以降の余分な仕入れをしなくてすむ
在庫があるのに、在庫がない状態で考えてしまうと、鮮度が落ちたり、陳腐化が進んでしまったら、その在庫を販売する機会を失ってしまいます。
すると、せっかく仕入れるために支払った代金が売上として回収されずに、仕入代金がそのまま損失となってしまいます。
しかも、新たな商品を仕入れるために追加の事業資金が必要となり、そして、その発注の手間もかかってしまいます。
・経営戦略が立てやすくなる
在庫を管理出来ているという事は、在庫の現時点での価値と将来的な価値が分かるという事にも繋がります。
それは、どのような事かというと、商品や製品は、市場の動向や顧客のニーズによって日々移り変わるものです。
そのため、現時点で売れていないものは、今後は今までと同じ販売価格では売れない可能性があります。
すると、在庫として把握していた時点で見込んでいた将来的な価値は今後は下がる事になるかもしれません。
そうであれば、マイナス分を出来るだけ抑えるために早めに売り切るような販促をしたり、その在庫の価値が回復するまでもう少し市場動向の様子を見るといった
対策が立てられます。
その他にも、経営戦略上のメリットはありますが、上述のように、在庫を管理するのは、経営戦略上は必須なのです。
決算期末だけでなく、タイムリーに在庫管理をしましょう
業態によっては、日々の在庫管理をするのが当たり前の場合もあります。
例えば、コンビニエンスストアやスーパーでは、商品数量が膨大であり、在庫管理を迅速かつ正確にしていなければ、日々の仕入れ数量を算出できず、また、来店客のニーズに応じた商品をラインナップする事などできません。
それに対して、自社は、在庫品目や数量が少ないからといって、在庫管理を疎かにしていると、無駄な在庫ロスが発生したり、売上獲得の機会を逃してしまう事にも繋がりかねません。
在庫を管理し、将来の販売戦略に繋げる事が手元の事業資金を増やし、事業の成長スピードを加速させる事に繋がります。