新型コロナウイルスの影響等により、宿泊施設を利用する機会が少なくなっていますが、それでも、業務上やむを得ず出張をして、ホテル等の宿泊施設を利用しなければならない方もいらっしゃいます。
そして、宿泊施設では、従業員の方にチップを渡す事もありますが、このチップの支払については、消費税の取扱いはどのようになっているのでしょうか。
目次
国内取引における消費税の課税の対象について
消費税の課税の対象については、国内取引では、
国内において事業者が行つた資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第3項において同じ。)及び
特定仕入れ(事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等をいう。以下この章において同じ。)には、この法律により、消費税を課する。
(消費税法第4条第1項)
とあります。
資産の譲渡等について
更に、資産の譲渡等については、
事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け
又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。
(消費税法第2条第1項第8号)
とあります。
つまり、消費税法における国内取引での課税の対象の要件である、
・事業者が
・事業として
・対価を得て行われる
・資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供
を全て満たす必要があります。
※特定仕入れについても、消費税の課税の対象となりますが、今回の説明では、資産の譲渡等を中心にご説明します。
消費税の課税仕入れについて
消費税法における課税仕入れは、
事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(所得税法第28条第1項(給与所得)に規定する
給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、
又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもので、
第7条第1項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するもの及び第8条第1項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるもの以外のものに限る。)をいう。
(消費税法第2条第1項第12号)
とあります。
そして、今回のテーマについて、消費税の課税仕入れに該当するのかという事については、どのような取扱いになるのでしょうか。
宿泊施設の従業員の方へのチップの支払の取扱い
宿泊施設の従業員の方へのチップの支払はどのように取り扱うのかというと、
提供を受けるサービスとの間に明白な対価関係は認められない。
と考えられています。
そのため、
役務の提供の対価としての支払ではない
となります。
そのため、上述の消費税の課税の対象の要件のうちの、
対価を得て行われる
には該当しない事となります。
つまり、
宿泊施設の従業員の方へのチップの支払は、課税仕入れに該当しません。
参考出典元:国税庁タックスアンサー「チップの支払」より
まとめ
宿泊施設の従業員の方へのチップの支払については、宿泊施設でのサービスという役務の提供の対価に対する支払とは別であり、
提供を受けるサービスとの間に明白な対価関係は認められないため、消費税の課税仕入れには該当しませんが、
実際には、その時の支払内容やその取引の実質等に応じて個別に判断するようにしましょう。