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佐藤充宏 江東区で税理士事務所・ファイナンスコンサルティング会社を経営しています。

「車検でかかる費用」の勘定科目・消費税区分は?経理担当者が押さえるべき実務知識

「車検でかかる費用」の勘定科目・消費税区分は?経理担当者が押さえるべき実務知識

はじめに

車両は通常、定期的に「車検(自動車検査登録制度)」を受けなければ公道を走行できません。
このときに発生する費用には、税金・保険・手数料・整備代など、性質の異なる支出が含まれています。

経理担当者にとって重要なのは、それぞれの費用を正しい勘定科目と消費税区分で処理することです。
間違えると、消費税申告や財務諸表の精度に影響を及ぼす可能性があります。

そこで、この記事では、車検時に実際に発生する費用の取り扱いを整理します。


1. 車検時に支払う「法定費用」とは

まず、車検時に必ず必要となる「法定費用」ふくまれるものには次のようなものがあります。
いずれも法律や省令に基づき定められた公的性格の費用であり、業者が単独で金額を決めるものではありません。

区分項目消費税区分
税金自動車重量税不課税
保険自賠責保険料非課税
手数料検査登録手数料非課税
税金印紙代(検査用)不課税
手数料情報技術管理手数料非課税

(1)自動車重量税 ― 不課税

概して、車検の有効期間に応じて国に納める税金です。
消費税法上の「課税対象取引(資産の譲渡等)」には該当せず、**不課税(課税対象外)**として処理します。


(2)自賠責保険料 ― 非課税

自動車損害賠償保障法に基づく強制保険です。
保険料は消費税法により非課税取引とされています。


(3)検査登録手数料 ― 非課税

車検時に支払う「検査登録手数料」は、道路運送車両法第94条に基づき国が徴収する行政手数料です。
法令に基づき国や地方公共団体が行う「登録・証明・免許」などに係る役務の提供に該当するため、消費税法上の非課税取引です。


(4)印紙代 ― 不課税

「印紙代」は、検査や登録に必要な申請書類に貼付する収入印紙の購入費用であり、これは印紙税法に基づく国税です。
消費税法上は「資産の譲渡等」に該当せず、**不課税**となります。


(5)情報技術管理手数料 ― 非課税(法定手数料に準ずる)

令和3年10月から導入された「OBD車検(電子的故障診断)」に関連する手数料で、
自動車技術総合機構が国の制度に基づき徴収します。
性質上、検査登録制度の一部として位置づけられており、法定手数料に準ずる非課税取扱いになります。


2. 整備・修理・点検・部品代(課税取引)

整備工場やディーラーが行う整備・修理・部品交換などは、
一般の役務提供・物品販売に該当します。
したがって、消費税の課税対象取引です。


3. 代行手数料・検査代行費(課税取引)

車検業者が運輸支局での手続きを代行する場合、その手数料は業務サービスの提供(役務提供)にあたります。
このため、課税取引として扱います。

  • 勘定科目:支払手数料・業務委託費など
  • 消費税区分:課税(課税仕入)
  • 注意点
    業者によっては「代行手数料(法定費用込み)」と一括請求している場合があります。
    → この場合、法定費用(非課税・不課税部分)と代行手数料(課税部分)等の内訳を確認して処理するようにしましょう。

4. 洗車・清掃・代車などの付帯サービス(課税取引)

車検と同時に行う洗車・清掃・代車提供・車内消臭などの付帯サービスは、
整備業者の通常の役務提供に該当するため、課税取引です。

  • 勘定科目:車両費、雑費、整備費など
  • 消費税区分:課税(課税仕入)

5. 仕訳例(税込経理方式)

例:車検時に支払った費用内訳(普通預金口座からの支払いの場合)

項目(勘定科目例)金額消費税区分
自動車重量税(租税公課)20,000円不課税
自賠責保険料(保険料)15,000円非課税
検査手数料(支払手数料)1,000円非課税
情報技術管理手数料(支払手数料)400円非課税
印紙代(租税公課)500円不課税
整備工賃(修繕費)25,000円課税
部品代(修繕費)10,000円課税
代行手数料(支払手数料)5,000円課税
洗車代(支払手数料)1,000円課税

仕訳

(借)租税公課 20,500円(不課税)
(借)保険料 15,000円(非課税) (借)支払手数料 1,400円(非課税)                                 (借)修繕費 35,000円(課税) (借)支払手数料 6,000円(課税)
 (貸)普通預金 77,900円


6. 実務上の注意点

  1. 法定費用と課税費用を混同しないこと。
    → 請求書で内訳が一括表示されている場合は、業者に明細を求める。
  2. 「不課税」と「非課税」の区別を明確に。
    • 不課税(課税対象外)=消費税法の対象外
    • 非課税=制度的に非課税とされている(保険料・行政手数料等)
  3. 個人事業主の場合、家事按分を忘れずに。
    → 所定の方法により、事業使用割合に応じて経費計上。
  4. 内容によっては、資本的支出等の該当有無を確認する必要がある。
  5. その他、上述に該当しない費用・支出等が請求書等の証憑に記載がある場合には、内容に応じて適切に処理する。

まとめ

  • 車検の法定費用に対する消費税の取り扱いは、次のとおりです。
  • *自動車重量税:非課税
  • *自賠責保険料・検査登録手数料・情報技術管理手数料:非課税
  • 整備代・部品代・車検業者の代行手数料・洗車代は課税取引
  • 経理処理では、請求書明細を基に課税・非課税・不課税を正確に区分することが必須です。

これらの区分を正確に理解しておくことで、経理処理、消費税申告や決算の精度が向上しますので、是非ご確認ください。

≪免責≫

本記事は、経営者・経理担当者の皆さま等に向け、一般的な情報提供を目的として作成したものです。
執筆時点での法令・制度等に基づいていますが、分かりやすいように、平易な記載としているため、実際の内容とは異なる取扱いとなる場合がありますが、記事内容に基づく行動結果について、当事務所では責任を負いかねますので、最終的な経理・税務判断は、必ず顧問税理士等の専門家にご確認ください。

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