
目次
はじめに
2025年、ガソリン価格を取り巻く制度が大きく動き始めています。
長年続いてきた 旧暫定税率25.1円/Lの廃止 に加え、原油価格や為替変動による負担増を抑えるための「ガソリン補助金スキーム」も段階的に見直されることになりました。
特に注目されるのが、
- すでに実施されている 10円/Lの補助
- 2025年 11月13日以降に段階的に追加される 15.1円/L の補助
の2つを組み合わせた運用です。
この結果、旧暫定税率分25.1円が廃止される一方で、その25.1円に相当する補助金が、
10円(既存)+15.1円(2025年11月13日から追加)
という形で元売の卸価格に反映される仕組みに移行しています。
本記事では、次の点を整理しながら、経営者・経理担当者が実務で判断できるように解説します。
- 旧暫定税率25.1円とは何か
- すでに行われている10円補助の位置づけ
- 2025年11月13日以降に追加された15.1円補助の仕組み
- 石油元売の卸価格にどう反映されるのか
- ガソリンスタンドの小売価格がどう変化するのか
- 会社の燃料費・原価計算にどんな影響が出るのか
制度変更は、会社の損益にも直結します。とくに配送業、建設業、製造業、サービス業など、燃料費が大きな割合を占める業種にとっては重要です。
ぜひ参考にしてください。

旧暫定税率25.1円とは──“一時的な上乗せ”が長期化していた税率
旧暫定税率の正体
ガソリンには、揮発油税および地方揮発油税が課税されており、「暫定税率」として 25.1円/L が上乗せされていました。
もともとは時限的な措置でしたが、延長が続き、結果として長年維持されてきたものです。
税率廃止=25.1円がそのまま値下がりとは限らない
ここで誤解が起きがちなのが、
「25.1円がなくなる=25.1円安くなる」わけではない
という点です。
理由は以下の通りです。
- ガソリン価格は「原油価格・為替・元売卸価格・補助金」で決定される
- 補助金スキームで“旧暫定税率分に相当する額”が価格調整に使われる
- 元売の卸価格が段階的に調整される仕組み
これらが複合して価格に反映されるため、単純に25.1円分が消えるわけではありません。
すでに実施されている「10円/L補助」とは
2024年以降、原油価格の上昇や円安の進行によりガソリン価格が高止まりしたことを受け、政府は 10円/Lの補助 を先行して導入していました。
この補助は次の流れで実務に反映されています。
- 国が石油元売(ENEOS、出光興産など)に対して補助金を交付
- 元売が卸価格に補助金分を反映させる
- ガソリンスタンドが仕入れ価格の低下分を反映
- 小売価格が下がる、または上昇幅が抑えられる
つまり、すでに小売価格には「10円の補助分」が組み込まれている状態です。
2025年11月13日以降に追加される「15.1円/L補助」とは
残りの15.1円が段階的に追加
旧暫定税率25.1円のうち、すでに10円分は補助として反映されていました。
そして2025年11月13日以降、残りの 15.1円/L分の補助 が段階的に追加されています。
ポイントは、これが
元売の卸価格に「一気に15.1円下落」として反映されるわけではない
という点です。
補助はあくまで「元売」への支援
よく誤解される点ですが、
補助金はガソリンスタンドに直接出るわけではありません。
国 → 元売 → 卸価格 → ガソリンスタンド → 消費者
という順で影響が波及します。
したがって、ガソリン価格の反映スピードには地域差・店舗差が出ます。
現時点で判明している 追加補助スケジュール(予定)
旧暫定税率25.1円の廃止に伴い、
既存の 10円補助 に加えて、残り 15.1円 を段階的に追加するスケジュールは次のとおりです。
▼ 第1段階:2025年11月13日以降
+5円/L の追加補助
➡ 補助金合計 15円/L
▼ 第2段階:2025年11月27日以降
さらに+5円/L の追加補助
➡ 補助金合計 20円/L
▼ 第3段階:2025年12月11日以降
さらに+5.1円/L の追加補助
➡ 補助金合計 25.1円/L(最終)
この3段階で 既存の10円+追加15.1円=合計25.1円補助 が完成し、旧暫定税率分に対応する補助がフル反映される仕組みです。
ガソリンスタンドの価格はどう変わるのか
1. 2025年11月13日以降、段階的に下落圧力がかかる
卸価格が下がることで、ガソリンスタンドの仕入れ値も下がるため、
結果として小売価格にも下落・上昇抑制効果があります。
ただし、反映にはタイムラグがあります。
2. タンク残量と仕入れ時期で差が出る
- たまたま前週に大量仕入れしている店舗
- 在庫量が少なく、毎週仕入れる店舗
これらの違いにより、反映のスピードに差が出ます。
3. 地域・元売系列による差
- 卸価格の反映タイミング
- 地域物流のコスト
- 系列ごとの価格政策
これらも価格差を生みます。

会社の経費・原価にどう影響するのか
燃料費は、多くの会社で「年間固定費又は変動費の一部」として扱われます。
特に燃料使用量の多い業種では、今回の補助拡充は直接的なコスト低減要因となります。
1. 燃料費の年間コストが軽減される可能性
例として、月300L消費する会社の場合:
- 追加補助がフルで反映した場合
- 15.1円 × 300L = 月4,530円
- 年間で約54,000円の負担軽減
となります。
2. 配送委託費・外注費の見直し余地
配送会社・外注先も燃料費を考慮して単価設定を行います。
単価交渉の根拠として活用できるケースもあります。
3. 来期予算の燃料単価の見直し
2025年〜2026年にかけては、
- 税率廃止
- 10円補助
- 15.1円追加補助
- 原油価格の変動
- 為替レート
が複合するため、例年より慎重な燃料費予算が必要です。
4. 経理上の燃料費計算の見直し
- 製造業の工場用燃料
- 営業車のガソリン
- 現場用車両
- 旅費交通費
各費目で燃料単価が変わるため、過去データとの比較には注意が必要です。
現時点で確実に言える“事実だけのポイント整理”
- 旧暫定税率25.1円/Lは廃止される
- すでに10円/Lの補助は実施済み
- 残り15.1円/Lの補助は 2025年11月13日以降 に段階的に追加
- 補助は “元売への補助” として卸価格に反映される
- 小売価格は原油・為替・元売卸価格の複合要因で決まる
- 25.1円が丸々値下がりするわけではない
- 地域差・店舗差は必ず生じる
- 会社の経費には一定の軽減効果が期待できる

まとめ
2025年11月13日から、ガソリン価格の仕組みが大きく変わりました。
旧暫定税率25.1円の廃止に伴い、すでに行われている10円補助に加え、残りの 15.1円分の補助が段階的に追加される 仕組みがスタートしています。
これにより、元売の卸価格が時間をかけて調整され、その結果として小売価格にも反映されていきます。
経営者・経理担当者としては:
- 燃料費の予算設定
- 配送委託費の適正化
- 原価計算への影響
- 地域別の価格差把握
- 補助反映のタイムラグの理解
が非常に重要になります。
ガソリン価格は会社の利益に影響する要素のひとつです。
制度変更の内容を正しく理解し、経営判断に活用していただければ幸いです。
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