
目次
はじめに
昨年末、日本銀行は金融政策決定会合で、政策金利を0.5%から0.75%へ引き上げました。
一般に「金利が上がれば株価は下がる」と言われるため、この利上げ局面では株式市場が軟調になるイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし現実には、年明けの本日(2026年1月5日)も東京株式市場では大きく上昇し、TOPIXは最高値を更新しました。
日経平均も大幅高となり、半導体関連など主力株が相場を押し上げたと報じられています。ではなぜ、政策金利が0.75%へ引き上げられた後も、株高が続いているのでしょうか。
本記事では、ニュース解説だけで終わらせず、経営者・経理担当者が「自社の判断」に落とし込めるよう、構造的な変化を軸に整理します。

政策金利0.75%程度とは何か
今回のポイントは、「金利が上がった」こと以上に、どの水準まで上がったのかです。
日銀の決定文書では、短期金利(無担保コール翌日物)を**「0.75%程度」**とし、同時に「実質金利は大幅なマイナスが続く」との見通しも示されています。
つまり、市場はこの利上げを、景気を強く冷やす“急ブレーキ”というより、超低金利からの**調整(正常化プロセス)**として受け止めやすい土台があります。
ここを踏まえないと、「利上げなのに株が下がらない」現象を読み違えやすくなります。
なぜ「金利が上がれば、株価は下がる」と言われてきたのか
「金利が上がると株価は下がる」──これは定番の説明ですが、理由は1つではなく、主に3つが重なって語られてきました。
① 金利上昇は、企業の利益を押し下げると考えられてきた
金利が上がると、企業は借入金の利息負担が増え、新たな資金調達条件も厳しくなりがちです。
売上が同じでも利息というコストが増えれば、利益は減りやすい。株価は将来利益への期待で評価されるため、「利益が減りそう」→「株価が下がりそう」と判断されやすくなります。
② 株よりも「安全な運用先」が魅力的になる
金利が低いと、預金や債券の利回りが乏しく、株式に資金が向かいやすくなります。
一方、金利が上がると「安全な資産でも一定の利回りが得られる」ため、株式から資金が離れやすい、という説明が成り立ちます。
③ 将来利益が「今の価値」として低く評価される
株価は、将来の利益を「現在の価値」に換算して評価するという考え方があります。
金利が高いほど、将来のお金の現在価値は小さく見積もられやすい。結果として、将来の成長を織り込む株ほど、金利上昇局面で評価が下がりやすいとされます。
小まとめ:なぜ金利上昇は株安につながりやすいのか
- 企業利益が圧迫される
- 株以外の運用先が相対的に魅力的になる
- 将来利益の評価が下がる
この3つが同時に働くため、「金利が上がれば株価は下がる」と説明されてきました。

では、なぜ今回は株価が下がらないのか──構造変化という視点
ここまでの一般論が「誤り」というわけではありません。
ただし、今回の局面では、一般論が前提としていた市場環境や企業の姿が変化しており、反応が単純になりにくくなっています。
本日(2026/1/5)の上昇も、米ハイテク株高の流れを引き継いだ半導体関連の上昇など、テーマ買いが相場を押し上げたと報じられています。
つまり市場は「金利」だけで動いているのではなく、収益期待や産業テーマ等で動いているといえます。
次章では、なぜ「利上げ=株安」が当てはまりにくくなったのかを、構造的な変化として3つに分けて整理します。
株高を支える3つの構造的変化
① 企業の財務体質が「金利耐性」を高めている
以前は、借入依存が高い会社ほど金利上昇の影響を受けやすく、株式市場も「一斉に利益が削られる」イメージで反応しがちでした。
しかし現在は、手元流動性を厚くし、資金繰りを安定させている会社が増えています。借入についても、長期資金・条件固定(実質的に負担が急変しにくい)を意識した設計が広がりました。
この結果、政策金利が0.75%程度に上がったとしても、「今すぐ、すべての会社が同じように苦しくなる」という状況にはなりにくく、市場は企業ごとに見方を分けやすくなっています。
② 投資マネーは「金利」より「企業の質」を見て選別している
利上げ局面では「株から資金が抜ける」という説明がされがちですが、実際には一律ではありません。
市場では、価格転嫁力、安定キャッシュフロー、成長テーマへの関与度など、「質」で買われる銘柄と、そうでない銘柄の差が広がりやすい局面です。
本日の相場でも、指数への寄与が大きい半導体関連が上昇を牽引したと報じられていて、テーマ選好が指数全体を押し上げる構図が確認できます。
③ 「利上げの意味合い」が市場で違って解釈されている
利上げは本来、景気や物価の過熱を抑える目的で行われるため、株式には逆風になりやすいです。
一方で、日銀側は、見通しが実現していくなら「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」という姿勢を示しています。
市場がこれを「急激な引き締め」ではなく「段階的な調整」と受け止める場合、株価は必ずしも大きく崩れません。
この“受け止め方の違い”が、一般論とのズレを生む大きな要因といわれています。
経営者・経理担当者が押さえるべき実務ポイント
株高=自社の経営環境が良い、とは限らない
株価は将来期待を織り込みます。市場全体が上がっていても、自社の売上・粗利・固定費・資金繰りが改善しているとは限りません。
「相場が良いから大丈夫」と判断せず、月次で数字を確認し、手元資金の厚みと資金繰りの見通しを的確に判断する必要があります。
利上げ=即、資金繰り悪化、でもない
重要なのは政策金利の数字そのものより、
- 借入条件(変動か固定か)
- 返済スケジュール
- キャッシュフローの耐性
です。
特に変動条件の借入が多い場合、利息増は遅れて効いてきます。将来の利息負担を見える化し、「利益」だけでなく「手元資金」の視点で、先に備えるのが実務的です。

まとめ
日銀が政策金利を0.75%へ引き上げた後も株高が続いている背景には、
- 企業の財務体質の変化
- 投資マネーの選別の進行
- 利上げの意味合いの受け止め方の変化
という構造的な要素があると考えられています。
そして本日(2026/1/5)の上昇は、半導体関連の上昇などテーマ買いが指数を押し上げ、TOPIXが過去最高値を更新したことに象徴されます。
市場は「金利だけ」で動いているわけではない。これが、今回の局面を理解するうえでの出発点です。
免責事項
本記事は、公開情報をもとに一般的な金融・経営の考え方を整理したものであり、特定の投資判断や金融取引、資金調達等を推奨するものではありません。実際の判断にあたっては、貴社の状況・契約条件・外部環境を踏まえ、必要に応じて専門家へご相談のうえ最終判断を行ってください。





