決算の時期が近づくと、
今年度は業績が良かったので、納税額が多くなるのが心配だ。
毎年利益が出るので、今期も納税資金を確保しなければならない。
決算の見通しを立てて業績を推定するのと合わせて、その年の税金がどのくらい出るのかを考えます。
会社の経営にとっては、事業資金の循環が必須なので、業績が気になるのはもちろんであり、多くの事業資金が流出する場合がある税金の納税は大変気になりますが、
納税するという事は会社にとって悪い面ばかりなのでしょうか。
そこで、拙著「賢い事業資金の集め方・使い方・貯め方」でも一部触れていますが、今回は、黒字決算と納税コストについてご案内します。
目次
事業活動で発生する税金の種類
税金には色々な種類がありますが、法人の場合で毎年の決算の際にどのような税金が発生するのかというと、
法人税
地方法人税
消費税及び地方消費税
事業税
特別法人事業税
都道府県民税
市町村民税
等があります。
※法人によっては、事業所税等も発生します。
また、消費税及び地方消費税については、法人によっては免税となる場合があったり、毎年の事業活動で赤字だったとしても、均等割という名目で課税される税金等があります。
そして、過去の事業年度の実績や今年度の実績により、税法等を準拠して、税金の計算を行いますが、基本的には、利益が増えるほど、納税額も増えます。
納税による事業資金の流出
基本的に利益が増えれば、納税が増えます。
例えば、単純計算で、利益に対して課税される税率が35%だったと仮定すると、
利益が1,000万円であれば、納税額は350万円(1,000万円×35%)です。
つまり、350万円の税金が事業資金から流出してしまいます。
経営者としては、
納税する350万円があれば、新規事業への投資資金に充てる事が出来るのに
と考えるかもしれません。
経営者としては、出来る限り事業資金を残しておきたいと考えるのは当然です。
赤字決算の場合
赤字決算であれば、納税が抑えられます。
例えば、毎年、300万円くらいの赤字が出ていて、納める税金が均等割で仮定として70,000円だけだったとします。
そして、確定申告で納税する際には、この70,000円だけを納税すれば良いので、納税による事業資金の流出をこの金額で抑える事ができました。
もちろん、経営者・従業員が業績向上に向けて邁進していても、外部環境の急変等により、赤字が積み上がってしまう事は避けて通れない場合があります。
そして、赤字決算の際には、納税額が少なくなったという事はありますが、一方、黒字決算の場合にはどうでしょうか。
黒字決算の場合
上述の例であれば、利益が1,000万円で、納税額が350万円だとします。
350万円という納税はできれば抑えたいですが、納税は利益に対して100%の税率で課税されません。
つまり、
1,000万円マイナス350万円イコール650万円
の事業資金は基本的に手元に残ります。
一方、赤字決算が続いてしまうと、黒字決算と比較して納税は少ないですが、そもそもの事業資金が赤字決算により少なくなってしまっているので、
資金繰りが厳しい状況に陥る場合があります。
このように、黒字決算と赤字決算では、納税額をした後の、手元に残る事業資金に違いが出てきます。
社会経済活動を維持・発展させるための納税コスト
社会経済活動は、税金を財源の一つとして成立しています。
例えば、
防災等の公共安全
環境やまちづくり
健康や福祉
こどもの支援や教育
くらしや地域を守る
といった事や、その他にも多くの事が、税金があるからこそ成立しています。
この財源が無ければ、
学校教育が充分に行われず、こどもの成長に支障が出る。
日々のごみ収集がされずに、ごみが処分されずに、環境衛生が悪化する。
交通整備が行われず、信号機の故障が修理されなかったり、道路舗装が行われないので、車の往来に支障が出るので、事業活動が停滞する。
といった事等があります。
そして、この社会経済環境のもとで会社が事業活動をしているので、その事業活動をするための必要コストとして税金を支払っている面もあるのです。
そのため、納税をする事は、会社にとって、社会経済にとっても大きな意義があるのです。
まとめ
黒字決算で利益を出して納税をする事により、その財源を活用して社会経済活動が成立している面があります。
利益を出して事業資金を確保するというのは大変ですが、黒字決算には大きな意義があります。