不動産を賃貸している事業者であれば、自社が所有している物件の賃料につき、毎月等の一定期間に賃貸料が借主から支払われます。
不動産賃貸業は、安定的な収入を確保する事業の一つとして注目されていますが、新型コロナウイルスの影響で、物件を賃借している借主の資金繰りが厳しくなり、賃料の支払が滞る場合があります。
飲食店であれば、新型コロナウイルスの影響により、営業自粛をしなければならないのであれば、毎月の売上は激減し、日々の事業資金も枯渇する可能性があります。
そして、そのような中で、引き続き固定費として発生する賃料を支払い続けるのは本当に大変です。
家主側にしてみても、賃貸借契約上の賃貸料を全額回収しないと、賃貸物件の維持や物件購入に要したコストを回収できない事になります。
新型コロナウイルスの影響が収束するまでの一定期間は借主に乗り越えてもらいたいと思って賃料を減額しようと思っても、いくつもの課題が不動産オーナー側にはあります。
賃料減額をすると、税制上は「寄附金」として取り扱われる場合があります
例えば、賃貸料として、毎月33万円を入金してもらっていたところ、22万円に減額した場合には、11万円分は「受け取らない」という事になります。
しかし、契約上は33万円をもらう事になっているので、本来だったらもらうべき残りの11万円はもらわないため、この差額の11万円について合理的な理由がなければ、借主側へ「寄附」したものと税法上はされてしまう場合があるのです。
そして、寄附金として取り扱われると、税制上は、計算によっては、一部経費(損金)として認められない等の可能性が出てきてしまい、その分の納税が出てしまう場合があります。
せっかく、借主の経済的負担を考えて賃料の減額をしようと思っても、税制上では寄附金とされてしまうのであれば、貸主側も賃貸不動産の賃料を減額するのを躊躇してしまいます。
新型コロナウイルスの影響により、一定条件のもとで賃貸物件のオーナーが賃料減額をした場合には、寄附金として取り扱われる事はないという措置が採られる事になりました
この賃料減額に対する難局をサポートするために、この度、次の条件のもとで、賃貸物件のオーナーが賃料減額をした場合には、「実質的には取引先等との取引条件の変更」と考えて、寄附金として取り扱われる事はないという案内が公表されました。
① 取引先等において、新型コロナウイルス感染症に関連して収入が減少し、事業継続が困難となったこと、又は困難となるおそれが明らかであること
② 貴社が行う賃料の減額が、取引先等の復旧支援(営業継続や雇用確保など)を目的としたものであり、そのことが書面などにより確認できること
③ 賃料の減額が、取引先等において被害が生じた後、相当の期間(通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間をいいます。)内に行われたものであること
そして、
取引先等に対して既に生じた賃料の減免(債権の免除等)を行う場合についても、同様に取り扱われます。
という事になりました。
また、この賃貸物件については、テナントに限らず、居住用物件や駐車場などの賃貸借契約についても同様の取扱いとなります。
なお、貸主側については、上記の取扱いとなりますが、賃料の減免を受けた借主側においては、減免額相当の受贈益が発生するため、借主側においては、別途確認が必要となります。
まとめ
新型コロナウイルスの影響により、不動産のオーナーである貸主が借主の事等を考えて賃料減額をしようと思っても、その減額について合理的な理由がなければ寄附金になってしまう場合がある等の従来の税制上のハードルがありましたが、この度、上記の措置により、オーナー側も賃料減額の対応をしやすくなっています。
もちろん、賃料減額をした場合に寄附金として取り扱われないように一定の要件を満たさなければなりませんので、実際に賃貸物件を所有している不動産オーナーの方は、その賃貸物件に関する賃貸借契約書や現状の賃貸状況を踏まえて、賃料減額を実施する事が出来るのか等については、個別に判断しなければならないため、税理士等の専門家や所轄の税務署に確認するようにしましょう。