会社が高額な設備や備品を購入すると、その資産を所有しているということに対して税金が課税される場合があります。
その税金が「償却資産税」と呼ばれるものです。
そして、その償却資産税というものの申告を毎年1月31日までにしなければならない事となっています。
そこで、これから償却資産税の申告をするという方もいらっしゃると思いますので、今回は、償却資産税の申告についてご案内します。
(今回は、東京都特別区を例に取り上げます)
目次
土地や建物に対して固定資産税が課税されるのと同様に、その他の資産の所有に対しても税金がかかる場合があります
土地や建物といった不動産を所有していると、それに対して固定資産税が課税されるのはよく知られていることです。
しかし、土地や建物以外の一定の資産についても、税金が課税されます。
それが、償却資産税と呼ばれるものです。
償却資産とは
そこで、そもそも償却資産とは、どのようなものをいうのでしょうか。
償却資産とは、
土地及び家屋以外の事業の用に供することができる一定の資産
です。
償却資産に該当するものには、会社や個人で事業を行っている方が事業のために用いることができる構築物、機械、器具、備品等が対象となります。
例えば、次のようなものがあります。
パソコン
看板
機械装置
エアコン
応接セット
受変電設備
飲食店の厨房設備
レジ
また、次のような場合にも、償却資産の申告が必要となります。
賃借人であるテナント等が内装や造作等を取り付けた場合
償却資産を賃貸している場合
耐用年数が経過して償却済みの資産
遊休・未稼働資産
その他にも、該当するものは多くありますので、所有しているものの資産に償却資産に該当するものがあるのかチェックしましょう。
また、東京都主税局では、償却資産の具体例も掲載しているので、そちらもご覧ください。
その年の1月1日現在に事業の用に供することが出来る償却資産を所有している場合にはその年の1月31日までに申告が必要です
東京都の場合には、所管区域の都税事務所宛の申告になります。
なお、償却資産に該当するものを所有していた場合には、具体的にどのように償却資産税が課税されるのでしょうか。
それは、
その年の1月1日に所有している償却資産をリストアップして、所定の方法により、申告書に記載したものを、申告期限のその年の1月31日までに都税事務所に提出するのです。
今回でいうと、令和2年1月1日時点で所有している償却資産を令和2年1月31日までに申告するという事です。
自動車税や軽自動車税が課税されている自動車には、償却資産税は課税されません
ここで、一つ疑問が出てきます。
資産を所有していると、償却資産税以外に課税される税金があります。
その代表的なものが、自動車税や軽自動車税です。
もし、この自動車や軽自動車に対しても償却資産税が課税されると、2つの税金が課税されてしまう事になってしまいます。
そこで、自動車税や軽自動車税が課税されている自動車には、償却資産税は課税されません。
償却資産税は賦課課税方式という方法で、税金の額を納税者へ通知します
ところで、土地や建物の固定資産税は、申告をしなくても、いつも評価額や税金の額が通知書に記載されて送付されてきますが、この償却資産税については、申告をするために、自社で税金を計算しなければならないのかという疑問が生じます。
そこで、償却資産税については、固定資産税と同様に、税金の額は、納税者が計算する事はありません。
(評価額は申告方式によって納税者側が計算する場合はあります)
土地や家屋は、都税事務所の職員が直接実地確認をして情報を入手しますが、償却資産税については、課税の対象となる資産がどのようなものがあるのかは、納税者から申告してもらわないと分からないために、申告する事になっているのです。
償却資産申告書は、その資産が所在する場所にある都税事務所に提出します
会社によっては、複数の事務所や店舗を持っている事もあります。
そして、この場合には、どの都税事務所に提出すればよいのでしょうか
それは、償却資産が所在する区を所轄する都税事務所に提出します。
そのため、複数の区で各々償却資産を所有している場合には、その償却資産が所在する区ごとに申告書を提出する事になります。
償却資産の申告には、2種類の方式があります
1、一般方式
前年中に増加又は減少した資産を申告する方式で、評価額等の計算は、自社では行わず、都税事務所等で行います。
例えば、令和2年1月1日現在の資産を申告する場合には、平成31年1月1日から令和1年12月31日までの間に増加又は減少した資産をリストアップして申告します。
なお、前年中に資産の増加及び減少がない場合でも、申告書の提出は必要になります。
2、電算処理方式
1月1日現在で所有している全ての資産について、申告する際に、納税者側で評価額等を計算して申告を行う方式です。
このように、電算処理方式の場合には、評価額を自社で計算しなければならないため、資産の増減が少ない場合には、一般方式で申告するケースが比較的多いです。
なお、この一般方式と電算処理方式のいずれにおいても、税金の額の計算は、都税事務所等で行います。
次に、償却資産税の評価から税金の計算の流れを説明します。
償却資産税は、償却資産を所定の方法により評価して課税します
償却資産税の計算の手順をご説明します。
1、個々の償却資産の評価をします
償却資産の評価はその取得年月や取得価額・耐用年数に基づいて、個々の資産毎に1月1日現在の評価額を算出します。
※この1月1日を「賦課期日」と呼びます。
2、課税標準額を算出します
上記1により評価額を計算した後は、各々の資産の区分毎に合算をします。
※法律により、特例等の適用のために計算が異なる場合があります。
その区分例としては、次のようになります。
構築物
機械及び装置
車両及び運搬具
工具、器具及び備品
などです。
そして、その合算した金額毎に1,000円未満の切り捨てをします。
3、償却資産税を計算します
算式は次の通りです。
上記2により算出した課税標準額×100分の1.4
そして、この計算された金額は、100円未満の切り捨てになります。
これが、償却資産税の大まかな計算の流れですが、注意点もあります。
課税標準額が150万円未満の場合には、償却資産税は課税されません
ところで、償却資産を申告したとしても、償却資産税が課税されない場合があります。
それが、
「課税標準額が150万円未満の場合」
です。
上記の計算過程で課税標準額を算出しても、その課税標準額が150万円未満であれば、償却資産税は課税されません、
もちろん、申告しなければならない要件に該当している場合には、申告し、その後の計算結果で課税標準額が150万円未満になった場合には、償却資産税が課税されないという事です。
上記のように、税金等が決まると、納税者へ納税通知書が送付されてきて、納税者は、納税通知書から詳細を確認する事となりますが、その際に、税金や評価額について気になる事があった場合には、どのように都税事務所等へ問い合わせをしたら良いのでしょうか。
評価額や税額等については、納税通知書の受領前に納税者が確認できます
評価額や税金が計算されると、その金額に対して納税者が確認できる仕組みになっているので、その流れをご説明します。
1、償却資産の評価額や税金が決定すると、その情報が償却資産課税台帳へ登録されます。
2、償却資産課税台帳に登録された情報が公示されます
3、償却資産課税台帳に登録された情報を閲覧できます
東京都の場合には、都税事務所で、一定の期間、償却資産課税台帳が閲覧できる事になっています。
そして、この情報は、その償却資産の所有者や納税管理人・代理人・固定資産税の課税に直接関係を有する方等であれば閲覧できます。
4、価格に不服がある場合には、審査の申し出が出来ます
この閲覧の際に、償却資産課税台帳に登録された価格に不服があった場合には、一定の期間内であれば、文書によって審査の申し出をする事が出来る事になっています。
そして、この審査の申し出をした事に対する決定があり、その決定内容に不服があれば、さらに、その決定に対してのみ取消の訴えを提起できます。
納税通知書の記載内容について不服がある場合には、審査請求が出来ます
先程は、都税事務所で償却資産課税台帳に登録された情報を閲覧した際の審査申し出の話でしたが、納税通知書を受領した際にも、審査請求が出来る事になっています。
納税通知書に記載された課税の内容について不服がある場合には、一定の期間内であれば、審査請求をする事が出来る事になっています。
なお、上記の不服がある場合については、審査先や手続き等の条件の詳細は、事前に各都税事務所等に確認をして速やかに進めるようにしましょう。
償却資産の申告の準備は早めにし、期限内の申告をしましょう
償却資産の申告は、日々の経理処理をタイムリーに行い、前年12月までの資産の増減状況等を把握し、資産によっては、特例の適用が受けられるのかを確認する必要があったりします。
そのため、1月下旬にまとめて作業をするのではなく、早めに準備をして申告書類を作成して、期限内の申告をするようにしましょう。