年越しをしてからこの時期になると、所得税の確定申告をするための準備をしている方も多くなってきます。
ところで、マイホームを昨年令和1年(平成31年)中に購入していると、一定の要件に該当する場合には、いわゆる住宅ローン控除(住宅ローン減税)により、所得税の額を減らす事が出来ます。
マイホームの購入をすると、不動産会社や金融機関から、所得税の減税が出来るという話を聞く方がほとんどですが、そのような方々やこれからマイホームを購入しようと考えている方にとっては、具体的にどのような制度で、どのように住宅ローン控除(住宅ローン減税)の適用を受けるのかを知りたい方もいらっしゃると思いますので、今回は、マイホームを昨年令和1年(平成31年)中に購入した場合の住宅ローン控除(住宅ローン減税)についてご案内します。
目次
マイホームを購入した場合は、「住宅借入金等特別控除」の適用を受けられるのかを考えましょう
マイホームを購入する場合には、その購入資金をどのように集めるのかがポイントになります。
そして、自己資金以外に、金融機関から借り入れをして購入するというの方が多いです。
そこで、個人が金融機関の住宅ローン等を活用して、マイホームを購入し、一定要件を満たす場合には、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基礎として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除するというのが、「住宅借入金等特別控除」です。
なお、このマイホームが災害で被害を受けた場合には、特例の適用を受ける事が出来る場合があります。
その特例の参考例としてこちらの国税庁ホームページに掲載されています。
住宅借入金等特別控除の適用を受けられるのかを確認しましょう
そして、マイホームの購入といっても、全てのケースで住宅借入金等特別控除が受けられるわけではありません。
下記の「全ての」要件を満たす必要があります。
1、マイホームを新築又は取得の日から「6か月以内」に居住の用に供し、適用を受ける各年の12月31日まで「引き続いて住んでいる」こと。
という居住要件が必要です。
なお、居住の用に供する住宅を二つ以上所有する場合、控除の適用対象は「主として居住の用に供する一つの住宅に限られます。」
※その個人の方が死亡した日の属する年にあっては、同日まで引き続き住んでいる事が要件となります。
2、この住宅借入金等特別控除を受ける年分の「合計所得金額が3,000万円以下」であること。
という、適用を受けられる所得限度額の要件があります。
3、マイホームの新築又は取得をした住宅の「床面積が50平方メートル以上」であり、「床面積の2分の1以上の部分が専ら自己の居住の用」に供するものであること。
という、居住スペースの要件があります。
なお、ここでいう、床面積の判断となる基準は、次のとおりです。
(1)登記簿に表示されている床面積により判断します。
(2)マンションの場合は、階段や通路など共同で使用している部分(共有部分)については床面積に含めないで、「登記簿上の専有部分の床面積」で判断します。
(3)店舗や事務所などと併用になっている住宅の場合は、店舗や事務所などの部分も含めた「建物全体の床面積」によって判断します。
(4)夫婦や親子などで共有する住宅の場合は、床面積に共有持分を乗じて判断しません。
↓
「他の方の共有持分を含めた建物全体の床面積」によって判断します。
※マンションのように建物の一部を区分所有している住宅の場合は、「その区分所有する部分(専有部分)の床面積」によって判断します。
4、「10年以上にわたり分割して返済」する方法になっている新築又は取得のための一定の借入金又は債務(住宅とともに取得するその住宅の敷地の用に供される土地等の取得のための借入金等を含む)があること。
なお、ここでいう一定の借入金又は債務とは、例えば次のようなものがあります。
・金融機関
・独立行政法人住宅金融支援機構
・独立行政法人都市再生機構
・地方住宅供給公社、建設業者などに対する債務
・勤務先などからの借入金
※勤務先からの借入金の場合には、無利子又は0.2%(平成28年12月31日以前に居住の用に供する場合は1%)に満たない利率による借入金はこの特別控除の対象となる借入金には該当しません。
そして、注意点があります。
「親族や知人からの借入金は、全てこの特別控除の対象となる借入金には該当しません。」
また、上記のように、住宅借入金等特別控除の適用を受けられる借入金や債務は決まっており、そして、その他の要件を満たす必要がありますので、国税庁のホームページ等で事前に必ず確認しましょう。
5、居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例や一定の税制上の特例の適用を受けていないこと。
というように、一定の税制上の特例の適用を受けていた場合には、住宅借入金等特別控除の適用が受けられません。
通常は、マイホームの購入時に、不動産会社や金融機関から、住宅借入金等特別控除の適用が受けられるのかの話をされると思いますが、上記1の居住の要件であったり、上記2の所得の要件等については、購入者本人によるところも多いです。
また、実際には、法律でより詳細に要件が規定されていますので、その要件に合致するのかを確認してから、マイホームの購入も検討するようにしましょう。
住宅借入金等特別控除の適用を受ける手続は、1年目と2年目以降では異なります
1、1年目は、給与所得のみの方も確定申告をします
確定申告書に、次の区分毎に各々の書類を添付して、納税地の所轄税務署長に提出します。
(1) 敷地の取得に係る住宅借入金等がない場合
① 「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」
② 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(金融機関等から交付されるもので、2か所以上から交付を受けている場合は、その全ての証明書が必要です)
③ 家屋の登記事項証明書、請負契約書の写し、売買契約書の写し等(※)で次の内容が明らかにされている書類
(イ)家屋の新築又は取得年月日
(ロ)家屋の取得対価の額
(ハ)家屋の床面積が50平方メートル以上であること。
(ニ)家屋の取得等が特定取得又は特別特定取得に該当する場合には、その該当する事実(平成26年分以後の居住分に限ります。)
なお、住宅の取得等に関し補助金等の交付を受けているときは、一定の書類の添付が必要になります。
(2)敷地の取得に係る住宅借入金等がある場合
上記(1)の書類以外に次の書類が必要です。
① 敷地の登記事項証明書、売買契約書の写し等で敷地の取得年月日及び取得対価の額を明らかにする書類
なお、住宅の敷地の取得に関し補助金等の交付を受けているときは、一定の書類の添付が必要になります。
② 敷地の購入に係る住宅借入金等が次のいずれかに該当するときは、それぞれに掲げる書類
(イ) 家屋の新築の日前2年以内に購入したその家屋の敷地の購入に係る住宅借入金等である場合
次の区分に応じ、それぞれに掲げる書類
㋑ 金融機関、地方公共団体又は貸金業者からの借入金の場合
家屋の登記事項証明書などで、家屋に一定の抵当権が設定されていることを明らかにする書類(上記(1)③により、その内容が明らかにされている場合は不要です。)
㋥ 上記以外の借入金の場合
家屋の登記事項証明書などで、家屋に一定の抵当権が設定されていることを明らかにする書類(上記(1)③により、その内容が明らかにされている場合は不要です。)
その他一定の書類
(ロ) 家屋の新築の日前に3か月以内の建築条件付きで購入したその家屋の敷地の購入に係る住宅借入金等の場合
敷地の分譲に係る契約書の写し等で、契約において3か月以内の建築条件が定められていること等を明らかにする書類((2)①で明らかにされている場合は不要です。)
(ハ) 家屋の新築の日前に一定期間内の建築条件付きで購入したその家屋の敷地の購入に係る住宅借入金等の場合
敷地の分譲に係る契約書の写し等で、契約において一定期間内の建築条件が定められていること等を明らかにする書類((2)①で明らかにされている場合は不要です。)
2、2年目以降の場合
(1)給与所得のみの方
年末調整でこの住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます。
そして、その際には、次の書類を勤務先に提出します。
① 税務署から送付される「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」・「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」
② 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(金融機関等から交付されるもので、2か所以上から交付を受けている場合は、その全ての証明書)
(2)上記(1)以外の方
確定申告書に次の書類を添付して提出する事になっています。
・「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」(付表が必要な場合には、別途付表)
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(金融機関等から交付されるもので、2か所以上から交付を受けている場合は、その全ての証明書)
実際にどれだけ所得税を減らす事が出来るのかを計算しましょう
次に、住宅借入金等特別控除の適用を受けられるとした場合には、どれだけの期間、どれだけの金額の所得税を控除出来るのかを考えましょう。
なお、今回は、令和1年(平成31年)中に居住の用に供した場合でのご案内になります。
A 平成31年1月1日から令和1年9月30日までの間に居住の用に供した場合
1、所得税を控除できる期間
10年
2、控除できる金額
住宅借入金等の年末残高×1%
の算式で計算した金額ですが、40万円が限度です。
(マイホームの購入が特定取得以外の場合には20万円が限度です)
B 令和1年10月1日から令和1年12月31日までの間に居住の用に供した場合
次の2つのケースに分かれます。
1、マイホームの取得等が特別特定取得に該当する場合
(1) 所得税を控除できる期間
13年
(2) 控除できる金額
① 1~10年目
住宅借入金等の年末残高×1%
の算式で計算した金額ですが、40万円が限度です。
② 11~13年目
次のイとロのうちのいずれか少ない金額
イ 年末残高等(※)×1%
※ 4,000万円が上限です。
ロ (一定の住宅購入価格-消費税)(※)×2%÷3
※ 4,000万円が上限です。
2、マイホームの取得等が特別特定取得に該当しない場合
(1) 所得税を控除できる期間
10年
(2) 控除できる金額
住宅借入金等の年末残高×1%
の算式で計算した金額ですが、40万円が限度で、特定取得以外の場合は20万円が限度です。
という事になります。
そこで、ここでのポイントが特定取得に該当するのか、特別特定取得に該当するのかという点になりますので、ここからは、その2つを見てまいりましょう。
特定取得と特別特定取得について
1、特定取得とは
住宅の取得等の対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等(消費税額及び地方消費税額の合計額。以下同じ)が、8%又は10%の税率により課税されるべき消費税額等である場合におけるその住宅の取得等
2、特別特定取得とは
住宅の取得等の対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等が、10%の税率により課されるべき消費税額等である場合におけるその住宅の取得等をいいます。
特例の適用を受けられる場合があります
そして、この住宅借入金等特別控除にも、その他の特例の適用を受けられるものとして挙げられるのが、「認定住宅の新築等に係る住宅借入金等特別控除の特例」です。
これは、一定の要件を満たした場合に、控除できる限度額の上乗せ等の特例がありますので、実際に適用を受けられるのかの確認をしましょう。
そして、その他にも、マイホームの購入等で、上記以外にも法律上適用されるもの、適用できるものをチェックするようにしましょう。
給与所得者の方むけの変更点のご案内です
今までは、勤務先より発行される給与所得の源泉徴収票は、確定申告の際に添付又は提示していたと思いますが、平成31年4月1日以後は、給与所得の源泉徴収票は、確定申告書への添付又は確定申告書を提出する際の提示が不要となりました。
あくまでも、確定申告書への記載はもれなく今までどおりしなければなりませんが、手続上、添付や提示が不要になるという事です。
※確定申告書を作成する際には引き続き給与所得の源泉徴収票が必要となり、確認のために必要となる場合もありますので、必ず保管はしておきましょう。
まとめ
このように、住宅借入金等特別控除の適用を受けるには、法律上の要件を満たしているのかを確認すると同時に、住宅借入金等特別控除にも色々な種類があるので、どの適用を受ける事が出来るのか等を合わせてチェックしなければなりません。
また、住宅借入金等特別控除の適用を受ける1年目と2年目以降では必要書類や手続きが異なる部分があり、また、給与所得のみの方とその方以外の方についても必要書類が異なります。
そして、所得税からを控除する際には限度額もあるので、誤りの無いように計算する必要があり、最後に所得税の確定申告書を提出期限までに提出しなければなりませんので、今回のご案内は概要の部分のお話でもあり、実際の取扱いは個別に確認しなければならないため、やるべき事を漏れなく、誤りのないようにして、ご不明な点等がありましたら、早めに税務署又は税理士等の専門家に確認するようにしましょう。