
目次
はじめに
普通預金を利用していると、残高に対して利息がつくことがあります。近年は低金利が続いているため、実際に受け取れる利息の額はごくわずかでしたが、今年は「金利のある世界」になり、昨年以前より利息が多く入金されていると思う方も多くいらっしゃいます。
そして、実際に多くの金融機関では、この普通預金の利息が 年2回──2月と8月 にまとめて計上されます。
では、なぜ毎月ではなく、2月と8月という特定の時期に集中して利息が支払われるのでしょうか。この記事では、その理由と背景を、経営者・経理担当者の実務に役立つ視点も交えて整理します。

普通預金の利息とは?
普通預金の基本的な仕組み
普通預金は、個人や会社が金融機関に預け入れる、最も一般的な預金口座です。給与振込や公共料金の引き落とし、日々の資金出納に使われることが多く、利便性が高い一方、金利は低く抑えられているのが特徴です。
普通預金の利息は、預け入れ残高と金利に基づいて計算され、一定期間ごとに金融機関がまとめて支払う仕組みになっています。
利息の計算方法
利息は原則として 日割り計算 されます。
つまり、ある日に口座にいくら残高があったかを金融機関が把握し、それを元に毎日分の利息を積み上げていき、半年に一度まとめて入金するという形です。
利息計算の基本式は概して、以下のとおりです。
利息 = 預金残高 × 金利(年利) × 預入日数 ÷ 365日
なお、実際には税金が差し引かれるため、手取り額はさらに少なくなります。
なぜ「2月と8月」なのか?
半年ごとの計算が金融機関の慣行
多くの金融機関では、普通預金の利息を 2月と8月の年2回 に計算・支払いする方式を採用しています。
これは、金融業界で長年にわたって定着してきた「半期ごとにまとめて精算する」という慣行に基づくものです。
経理や会計の分野でも「半期決算」という考え方があるように、半年単位で区切ると計算や処理が効率的であり、金融機関にとっても顧客にとっても分かりやすい面があるといわれています。
顧客利便性と取引慣行
現在は、利息を毎月支払う金融機関もありますが、通常の場合、事務負担が増大し、基本的にコストが増えます。
そこで「半年に一度、まとめて計算する」方式を採用することで、金融機関の事務効率化を実現しつつ、顧客にとっても定期的に利息が確認できる仕組みとなっています。
これは金融機関で広く実施されている慣行であり、結果として「2月・8月」という統一的な時期に利息計上が集中しているのです。(2月・8月以外の月で半年ごとに利息計上している金融機関もあります)
経営者・経理担当者が押さえるべき実務ポイント
1.法人の場合、通常、受取利息又は雑収入として計上する
法人の場合、普通預金の利息は「営業外収益」にあたります。
仕訳上の勘定科目は「受取利息」あるいは「雑収入」として処理するのが一般的です。
【仕訳例】税引後の普通預金利息1,000円が入金になった場合
普通預金 1,000円 / 受取利息 1,000円
なお、この仕訳例は分かりやすく簡便化したものです。差し引かれた源泉所得税等についても把握しておき、会社によっては、その分についても仕訳に反映させる場合があるので、自社がどのような経理処理、そして、税務処理をしているのかを確認する必要があります。
2. 利息は少額でも見落とさない
普通預金の利息は、会社によっては、数円から数百円程度にとどまるケースもあります。
しかし、金額が少ないからといって記帳を怠ると、帳簿残高と通帳残高が一致しなくなります。
特に、金融機関との融資取引を行っている会社にとっては、普通預金通帳残高の整合性は金融機関も決算書からチェックしている場合が多いです。必ず仕訳を記録しておきましょう。
金利動向と今後の展望
超低金利時代と普通預金利息
長らく続いた超低金利政策により、普通預金の利息は「ほとんどゼロ」に近い状況が続いてきました。
しかし、最近は日銀の金融政策転換や世界的な金利動向の変化により、普通預金の金利を引き上げる金融機関も出てきています。
仮に金利が上昇すれば、半年ごとに受け取れる普通預金利息の額もわずかながら増えることになります。
経営への示唆
経営者や経理担当者にとっては、普通預金利息そのものの金額は小さいですが、金融機関の金利動向を知るひとつの指標になります。
「普通預金の金利が上がった=金融市場全体での金利上昇トレンドがある」と読み取ることもでき、借入金利の動向を見極める材料にもなります。
したがって、2月と8月の利息計上を単なる入金処理で終わらせず、金融市場の動きを感じ取る機会として、経営者と経理担当者で情報共有するのが望ましいでしょう。

まとめ
多くの金融機関で普通預金の利息が2月と8月に計上されるのは、金融機関における 「半年ごとの精算」という慣行 によるものです。
これは、金融機関自身の会計処理や事務効率化、顧客への分かりやすさといった要素が組み合わさって成立してきた仕組みです。
経営者・経理担当者にとっては、わずかな利息であってもきちんと仕訳処理を行い、正確な帳簿管理を行うことが求められます。
また、利息計上のタイミングをきっかけに、金融機関の金利動向や市場環境の変化を把握することも必要です。
「なぜ2月と8月なのか」という素朴な疑問から、金融実務や経営の視点にまでつながる──
普通預金利息の仕組みを理解し、日々の経理処理を正しく進め、今後の経営判断に役立てましょう。