江東区の税理士     経営アドバイザー

佐藤充宏 江東区で税理士事務所・ファイナンスコンサルティング会社を経営しています。

経営者及び経理担当者の方むけ:メディアも注目。当座預金の利用が減少する背景と今後の展望

経営者及び経理担当者の方むけ:メディアも注目。当座預金の利用が減少する背景と今後の展望

はじめに

会社経営において「預金口座」は欠かせません。
日々の入出金や給与支払いには普通預金が広く利用されていますが、かつては「当座預金」も重要な役割を果たしてきました。小切手や手形による決済が一般的だった時代には、会社にとって当座預金口座を持つことが取引信用の証でもありました。

しかし近年、金融実務に大きな変化が生じています。電子決済の普及や手形交換所の廃止に伴い、小切手や手形の利用が大幅に減少し、それに連動する形で当座預金の必要性も薄れてきました。メディアでも「当座預金の利用減少」が取り上げられるようになり、経営者や経理担当者の間でも「今後、当座預金はどのように位置づけられていくのか」という関心が高まっています。

本記事では、当座預金の基本的な仕組みから、その利用が減少している背景、そして今後の展望について整理し、経営実務への影響をわかりやすく解説します。


当座預金とは?

当座預金の仕組み

当座預金とは、主に法人や事業者が利用する決済用の預金口座です。
最大の特徴は 利息がつかない 代わりに、小切手や手形による支払いに利用できる点です。普通預金と異なり、キャッシュカードでの出金や利息の付与はなく、あくまで「決済専用口座」として機能します。

小切手・手形との関係

当座預金の利用は、小切手や手形の決済と密接に関係しています。小切手を発行する際には当座預金口座が必須であり、また手形決済も当座口座を通じて行われてきました。そのため、かつては大企業から中小企業まで、多くの会社が当座預金口座を保有していました。


当座預金の利用が減少している背景

1. 手形交換所の廃止と電子決済の拡大

2020年代以降、金融実務における大きな転換点となったのが 手形交換所の段階的廃止 です。
かつては銀行間で手形や小切手を物理的に持ち寄り、決済を行う仕組みが存在していましたが、電子化の進展により紙のやり取りが不要となり、交換所そのものが役割を終えつつあります。

これに伴い、取引先との決済も銀行振込や電子記録債権(でんさい)などに移行し、小切手や手形を発行する機会は急速に減少しました。必然的に、当座預金の利用頻度も減っています。

2. 中小企業における利用コストの負担

当座預金は口座開設手数料がかかる場合があり、また小切手帳・手形帳の発行にもコストが伴います。利用頻度が低下した現在では、これらのコストに見合わないと判断し、口座を解約する会社もあります。

3. 与信や信用の証明としての役割の低下

かつては「当座預金口座を持っていること」が一定の信用力を示すとされました。小切手や手形を不渡りにしないよう管理することは、取引先への信用維持につながったからです。しかし、現代では金融機関の取引履歴や決算書データ、さらにはクラウド会計ソフトの情報など、信用を測る指標が多様化しています。当座預金を持つこと自体の信用価値は相対的に低下しました。

4. 金融機関側の方針転換

金融機関もコスト削減や効率化を進めています。当座預金口座は管理に手間がかかるため、新規開設の審査を厳格化するケースも見られます。結果として、新たに当座預金を開設する会社は減少傾向にあります。


今後の当座預金の展望

電子化に置き換わる決済手段

現在の主流は、銀行振込やインターネットバンキングを利用した電子決済です。さらに「電子記録債権(でんさい)」の普及により、従来の手形取引がデジタル化されています。これにより、当座預金の役割はますます限定的になっていくと考えられます。

経営者・経理担当者が意識すべきこと

経営者や経理担当者としては、「自社に本当に当座預金が必要か」を見直すことが求められます。

  • 取引先から小切手・手形の利用を求められているのか
  • 代替手段(銀行振込・でんさい)で十分か
  • 口座維持コストとのバランスはどうか

こうした観点等から、当座預金の必要性を改めて検討することが重要です。


経営実務への影響

資金繰り表への反映

当座預金を利用している場合、資金繰り表における残高管理が欠かせません。残高不足は信用失墜につながるため、普通預金以上にシビアな管理が求められます。今後、利用を縮小・解約する際にも、資金繰り表を調整して正確に反映する必要があります。

会計処理の変化

経理処理上は「当座預金」という勘定科目を使用します。利用が減った場合は、普通預金へ移行するか、解約後に科目を整理するなど、会計処理の見直しが必要です。

会社の信用戦略

一部の取引先等では、依然として当座預金を信用の一指標とするケースもあります。解約を検討する際には、取引先や金融機関との関係性を考慮することが欠かせません。


まとめ

当座預金はかつて、会社の信用や決済インフラを支える重要な存在でした。しかし、手形交換所の廃止や電子決済の普及により、その役割は縮小しています。

経営者や経理担当者としては、

  • 自社の取引実態に照らして当座預金の必要性を検討する
  • 電子化された決済手段を積極的に導入する
  • 資金繰り管理や会計処理を適切に見直す

といった対応が求められます。

「当座預金が必要かどうか」を定期的に点検することは、会社の資金管理や時代に即応した業務の効率化にも繋がります。
自社に適した、預金口座管理及び決済業務を進めるようにしましょう。

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