令和3年度税制改正による電子帳簿保存法の改正が令和4年1月1日から施行されます。
ところで、会社によっては、会計システムとは別に、販売管理や在庫管理のための業務システムを稼働させ、各々を連携させている場合があります。
そして、国税関係帳簿書類の電磁的記録の保存を検討する際に、会計システム内での必要な情報は保存させる事は分かりますが、
業務システムはどのように取り扱ったら良いのか等の疑問が出てくる場合がありますので、今回はこの点についてご案内します。
目次
国税関係帳簿書類の定義と電磁的記録による保存等に関する法令
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 ※最終改正日:令和03年03月31日
第2条 定義
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 国税 国税通則法(昭和37年法律第66号)第2条第1号(定義)に規定する国税をいう。
二 国税関係帳簿書類 国税関係帳簿(国税に関する法律の規定により備付け及び保存をしなければならないこととされている帳簿(輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律(昭和30年法律第37号)第16条第11項(保税工場等において保税作業をする場合等の内国消費税の特例)
に規定する帳簿を除く。)をいう。以下同じ。)又は国税関係書類(国税に関する法律の規定により保存をしなければならないこととされている書類をいう。
以下同じ。)をいう。
三 電磁的記録 電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によっては認識することができない方式(第5号において「電磁的方式」という。)で
作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。
四 保存義務者 国税に関する法律の規定により国税関係帳簿書類の保存をしなければならないこととされている者をいう。
五 電子取引 取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。
以下同じ。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。
六 電子計算機出力マイクロフィルム 電子計算機を用いて電磁的記録を出力することにより作成するマイクロフィルムをいう。
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律※ 最終改正日:令和03年03月31日
第4条 国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等
保存義務者は、国税関係帳簿(財務省令で定めるものを除く。以下この項、次条第1項及び第3項並びに第8条第1項及び第4項において同じ。)
の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、
当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。
2 保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、
当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。
3 前項に規定するもののほか、保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。以下この項において同じ。)の全部又は一部について、
当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合には、財務省令で定めるところにより、
当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。この場合において、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存が
当該財務省令で定めるところに従って行われていないとき(当該国税関係書類の保存が行われている場合を除く。)は、当該保存義務者は、
当該電磁的記録を保存すべき期間その他の財務省令で定める要件を満たして当該電磁的記録を保存しなければならない。
上述のうち、国税関係帳簿書類については、会計システムからアウトプットされる仕訳帳や総勘定元帳等が該当し、一定要件を満たす場合には、
電磁的記録による保存が認められていますが、これらの帳簿については、会社の場合には、その取扱いについてはどのように規定されているのでしょうか。
仕訳帳や総勘定元帳の備え付けと記載等に関する法令
法人税法施行規則 ※最終改正日:令和03年07月30日
第54条 取引に関する帳簿及び記載事項
青色申告法人は、全ての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿(次条において「仕訳帳」という。)、全ての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿
(次条において「総勘定元帳」という。)その他必要な帳簿を備え、別表20に定めるところにより、取引に関する事項を記載しなければならない。
業務システムと会計システムを連携させる場合の考え方とその電磁的記録による保存について
業務システムを導入しているような会社の場合には、その取引数や商品構成が多数となっているのがほとんどです。
そして、例えば、売上に関するデータを直接会計システムに登録させるのではなく、販売管理システムで登録した売上データを集計して会計帳簿に連携させるケースが一般的です。
すると、会計システムで集計された結果として、仕訳帳や総勘定元帳をみると、売上に関する情報は販売管理システムから集計された「結果」が表示されます。
そこで、この仕訳帳や総勘定元帳だけを保存するということになると、その取引の内訳(いつ、どの得意先に対して、どのような商品を、いくらで販売したのか等)が分かりません。
また、上述の法令では、仕訳帳は「全ての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿」とし、総勘定元帳は「全ての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿」
と規定していて、仕訳帳や総勘定元帳だけではその要件を満たしていないので、今回の例では、販売管理システムの情報も必要となります。
そのため、「仕訳帳」及び「総勘定元帳」を電磁的記録等により保存等する場合には、原則として、会計システムと業務システムの各々のデータを保存する必要があります。
なお、業務システムについては、会社によって運用方法や会計システムとの連携方法が異なるので、どこまでのデータを保存する必要があるのかを
個別に確認しなければなりません。
優良な電子帳簿の要件
法令上の過少申告加算税の軽減措置の規定の適用を受けようとする場合には、仕訳帳や総勘定元帳を含む特例国税関係帳簿につき、
全て優良な電子帳簿の要件を満たして保存等を行う必要がありますが、この場合には、さらに詳細の確認をしなければなりません。
まとめ
販売管理や在庫管理等の業務システムを導入している会社が、国税関係帳簿書類である仕訳帳及び総勘定元帳を電磁的記録等により保存等する場合には、
原則として、会計システムと業務システムの各々のデータを保存する必要がありますが、業務システムについては、
会社によって運用方法や会計システムとの連携方法が異なるので、どこまでのデータを保存する必要があるのかを個別に確認しなければなりません。
また、法令上の過少申告加算税の軽減措置の規定の適用を受けようとする場合には、仕訳帳や総勘定元帳を含む特例国税関係帳簿につき、
全て優良な電子帳簿の要件を満たして保存等を行う必要がありますが、この場合には、さらに詳細の確認しなければなりません。
出典参考資料:
国税庁
電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】
問19 当社は各種の業務システム(販売等の個別取引データを保存)と会計システム(業務システムの集計データを保存)を連携させています。「仕訳帳」及び「総勘定元帳」を電
磁的記録等により保存等することとした場合、会計システムのデータのみ保存しておけばよいでしょうか。