令和3年度の税制改正により、電子帳簿保存法が改正され、その施行日が令和4年1月1日からとなっています。
ところで、表題の電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存につき、令和4年1月1日から保存方法が見直されるといっても、実は、
税法によって取扱いが異なる部分がありますので、今回はこの点についてご案内します。
目次
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に関する法令
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 ※最終改正日:令和03年03月31日
第7条 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存
所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、
当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。
このように、令和4年1月1日に以後行う電子取引の取引情報については、その電磁的記録を一定の要件において、保存しなければなりません。
消費税の電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存
これに対して、消費税に係る保存義務者が行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存については、令和4年1月1日以後も引き続き、一定要件の下で
その電磁的記録を書面に出力して保存することも認められています。
現行の消費税法の帳簿及び請求書等保存に関する法令の一部
消費税法 ※最終改正日:令和03年03月31日
第30条 仕入れに係る消費税額の控除
~
7 第1項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等
(同項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が少額である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における
当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)
を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。
ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。
~
消費税法施行令 ※最終改正日:令和03年03月31日
第49条 課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の記載事項等
法第30条第7項に規定する政令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円未満である場合
二 法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円以上である場合において、同条第7項に規定する請求書等の交付を受けなかつたことにつき
やむを得ない理由があるとき(同項に規定する帳簿に当該やむを得ない理由及び当該課税仕入れの相手方の住所又は所在地(国税庁長官が指定する者に係るものを除く。)
を記載している場合に限る。)。
三 特定課税仕入れに係るものである場合
消費税法基本通達 ※最終改正日:令和03年04月01日
11-2-22 災害その他やむを得ない事情の意義
法第30条第7項ただし書《災害その他やむを得ない事情により帳簿等を保存しなかった場合》及び同条第11項ただし書
《災害その他やむを得ない事情により本人確認書類を保存しなかった場合》に規定する「災害その他やむを得ない事情」の意義については8-1-4による。
消費税法基本通達 ※最終改正日:令和03年04月01日
11-2-23 費途不明の交際費等
事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合
(法第30条第7項ただし書《災害等により保存できなかった場合》に該当する場合を除く。)には、その保存がない課税仕入れ等の税額について法第30条第1項
《仕入れに係る消費税額の控除》の規定を適用することができないのであるから、例えば、課税仕入れに関する記録がない場合のほか、
事業者が交際費、機密費等の名義をもって支出した金額でその費途が明らかでないものについても同項の規定の適用を受けることができないのであるから留意する。
消費税法基本通達 ※最終改正日:令和03年04月01日
8-1-4 災害その他やむを得ない事情の範囲
法第8条第2項ただし書《輸出物品販売場免税の不適用の規定を適用しない場合等》に規定する「災害その他やむを得ない事情」の意義は、
次の各号に掲げるところによる。
(1) 「災害」とは、震災、風水害、雪害、凍害、落雷、雪崩、がけ崩れ、地滑り、火山の噴火等の天災又は火災その他の人為的災害で
自己の責任によらないものに基因する災害をいう。
(2) 「やむを得ない事情」とは、前号に規定する災害に準ずるような状況又は当該事業者の責めに帰することができない状況にある事態をいう。
上述のように、現行法令では、消費税の仕入税額控除の際には、一定の帳簿及び請求書等(書面)の保存が必要ですが、取引金額が3万円未満の場合や、
3万円以上でも「電子取引」のようにデータのみが提供されるなど、書面での請求書等の交付を受けなかったことにやむを得ない理由がある場合には、
帳簿のみを保存することにより仕入税額控除の適用を受けることができます。
令和5年10月1日以降の消費税法の帳簿及び請求書等の保存について
インボイス制度の導入にともない、令和5年10月1日以降は、帳簿のみの保存で仕入税額控除の適用を受けることができるのは、一定の取引に限られ、
電子取引を行った場合に仕入税額控除の適用を受けるためには、軽減税率の対象品目である旨や税率ごとに合計した対価の額など適格請求書等として必要な事項を満たす
データ(電子インボイス)の保存が必要となります。
そして、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力した書面等については、保存書類(国税関係書類以外の書類)として取り扱わないこととされていますが、
消費税法上、電子インボイスを整然とした形式及び明瞭な状態で出力した書面を保存した場合には、仕入税額控除の適用を受けることができます。
まとめ
電子帳簿保存法の改正が令和4年1月1日から施行されますが、
所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、その電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければなりませんが、
消費税においては、現行法令において取扱いが異なる部分があり、また、インボイス制度が実施される令和5年10月1日以降はその他に変更となる部分がありますので、
自社にとって適切な運用方法を確認しましょう。
出典参考資料:
国税庁
問21 電子取引で授受したデータについて、所得税法・法人税法と消費税法で取扱いにどのような違いがあるのですか。