
目次
はじめに
ニュースなどで「日本の借金は~兆円を超えました」と耳にすると、
思わず不安に感じる方も多いかもしれません。
この「借金」とは、通常、政府が発行する国債のことを指しています。
しかし、冷静に考えてみると、国債は誰かが「買っている」からこそ成り立つ仕組みです。
つまり、政府の借金は、誰かの資産でもあるのです。
この記事では、国債がどのように発行され、誰が保有しているのか、
そして「国の借金=国民の資産」と言われる理由を、できるだけやさしく解説します。
経営者や経理担当者の方が、金利や景気のニュースをより深く理解する助けになるでしょう。

国債は「借金」と「資産」をつなぐ仕組み
国債とは、政府が「お金を借りる」ために発行する証書です。
その国債を「買う」人がいることで、資金が政府に流れ、財政が動きます。
たとえば、企業が社債を発行して資金を集めるのと同じで、
国は国債を発行して市場からお金を調達しています。
ただし、このときのお金の流れをもう少し丁寧に見てみると──
国債の買い手は金融機関・保険会社・年金基金・個人など、私たちの預金や保険料を運用している組織です。
つまり、政府が借りたお金の「貸し手」は、私たちの預金や年金を通じて存在しています。
国債を誰が買っているのか
では、具体的に国債は誰が買っているのでしょうか。
財務省の統計によると(2025年現在の概況)、日本の国債の保有者は次のように分類されます。
- 日本銀行
- 銀行・信用金庫などの金融機関
- 保険会社
- 年金基金・投資信託など
- 個人投資家・その他
日本銀行が果たす役割
ここで特に注目すべき存在が、日本銀行(=日銀)です。
日銀は金融政策の一環として国債を大量に保有しており、
市場の金利を安定させる役割を担っています。
日銀が国債を買い入れることで、市場に出回るお金(マネーサプライ)が増え、
金利の上昇を抑える効果があります。
このように、国債は単なる「借金」ではなく、
金融政策を通じて金利や景気をコントロールする“手段”でもあるのです。
「政府の借金=国民の資産」とはどういう意味か
では、よく耳にする「国の借金は国民の資産でもある」という言葉を、
もう少し具体的に見てみましょう。
政府が国債を発行して資金を調達すると、そのお金は公共事業や社会保障などに使われます。
一方で、その国債を買った金融機関や保険会社は、
私たちの預金や保険料を運用して利益を得ています。
たとえば──
- あなたの銀行預金は、銀行を通じて国債購入に使われています。
- あなたが加入している保険や年金基金も、運用先のひとつとして国債を保有しています。
つまり、国の借金(国債)は、私たちの金融資産の一部として存在しているともいえるのです。
この点を理解すると、「国債=借金だから危険」という単純な見方は誤解であることが分かります。
「国の借金が増えると危険」とは限らない理由
確かに、国債残高が増え続けると「財政破綻のリスク」を心配する声もあります。
しかし、それは主に海外から借りている国に当てはまる話です。
日本の場合、現在は国債の多くが国内で消化されており、
自国通貨(円)で発行されています。
そのため、為替リスクや返済不能の危険は極めて低いのです。
また、国債を発行して得た資金が、公共投資や経済対策を通じて
経済全体の成長につながる場合も多くあります。
つまり、**国債は「将来の成長を支えるための借金」**という側面も持っているのです。
国債発行のプロセスをやさしく説明
国債が発行される流れを、できるだけシンプルに整理してみましょう。
- 政府が予算を決める(歳出と税収を見積もる)
- 収入が足りない部分を「国債発行」で補うことを決定
- 財務省が国債を発行し、金融機関などが購入
- 国債が市場で取引され、価格や利回りが形成
- 満期が来ると、国が利息を支払い、元本を償還
ここで重要なのは、国債は「発行して終わり」ではなく、市場で日々売買されているという点です。
この取引を通じて、長期金利(=経済全体の金利水準)が決まっていきます。
つまり、国債市場は「日本経済の金利を決める舞台」でもあるのです。
国債は「金融の血流」のような存在
経済全体を人の体にたとえるなら、
お金は血液、国債はその血液を循環させるポンプのような存在です。
国債が発行されることで資金が動き、
それが金融機関を通じて企業の融資や個人の住宅ローンなどに流れ込みます。
つまり、国債は「政府の借金」であると同時に、
民間のお金を経済全体に循環させる仕組みでもあるのです。
国債の信頼性を支える3つのポイント
日本の国債が「安全資産」と言われる背景には、3つの理由があります。
- 自国通貨建てであること
円で発行されているため、為替リスクがない。 - 国内で多く保有されていること
海外依存度が低く、外国資本の引き上げリスクが小さい。 - 市場の厚みがあること
取引量が多く、流動性が高いため、売買がスムーズ。
これらの特徴により、日本の国債は安定性を保っています。
経営者が押さえておきたい「国債と金利の関係」
経営者や経理担当者にとって、国債の動きを理解することは実務にも直結します。
国債の利回りが上昇すれば、金融機関が企業に貸し出す金利も上がり、
資金調達コストが高くなります。
逆に、国債利回りが下がれば、金利も低下し、借入コストは軽くなります。
つまり、国債の動きは企業の資金繰りや投資判断に直接影響する要因なのです。
決算書の数字だけでなく、金利の背景にある「国債市場の動き」を意識することで、
より実践的な財務判断が可能になります。

まとめ
国債は、政府の借金であると同時に、私たちの預金・保険・年金を運用する資産でもあります。
つまり、「国の借金」と「国民の資産」は、同じ硬貨の表と裏のような関係でもあります。
国債は金融機関や日銀を通じて金利を調整し、景気を支える役割も担っています。
そして、その動きは、会社の資金調達や経営判断にも大きな影響を与えます。
経営者や経理担当者にとって、国債を理解することは、
単なる金融知識ではなく、経営の基礎を支える“お金の流れ”を読む力につながるのです。
免責事項
本記事は、2025年10月時点の公表情報および財務省・日本銀行・内閣府などの資料を参考に執筆しています。
内容は一般的な情報提供を目的としており、投資・融資・経営判断の結果を保証するものではありません。
また、本記事で取り上げた経済・財政に関する考え方(例:「国の借金は国民の資産でもある」など)は、
経済学上の前提や分析の枠組みによって専門家の見解や解釈が異なる場合があります。
最終的な判断は、最新の公式情報および専門家の助言に基づいて行ってください。
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