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佐藤充宏 江東区で税理士事務所・ファイナンスコンサルティング会社を経営しています。

経営者・経理担当者の方むけ:短期プライムレートと長期プライムレートの違い──金利の基準をおさえましょう

経営者・経理担当者の方むけ:短期プライムレートと長期プライムレートの違い──金利の基準をおさえましょう

はじめに

会社経営において、金融機関からの融資は欠かせない資金調達手段の一つです。
その際に必ず関わってくるのが「金利」ですが、融資に適用される金利は一律ではなく、さまざまな基準によって決まります。

特に「短期プライムレート」「長期プライムレート」という2つの金利指標は、経営者や経理担当者にとって押さえておくべき重要な基準です。

イメージとしては、

短期プライムレートは、短期の資金需要に対応するための金利。
長期プライムレートは、長期の融資契約に対応するための金利。

一見似たような言葉ですが、その仕組みや決まり方、会社経営に与える影響は大きく異なります。
この記事では、短期プライムレートと長期プライムレートの違いを整理し、実務にどう活かすべきかをわかりやすく解説します。


プライムレートとは?

「プライムレート」とは、金融機関が信用力の高い優良企業に対して適用する貸出基準金利のことです。
実際の融資では、このプライムレートに上乗せまたは下げ幅を調整して金利が決まります。

つまり、プライムレートは融資金利の「ものさし」となる基準金利です。

このプライムレートには大きく分けて2種類あります。

  • 短期プライムレート(短プラ)
  • 長期プライムレート(長プラ)

それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。


短期プライムレートとは?

短期プライムレート(短プラ)は、金融機関が優良企業向けの1年未満の期間の短期貸出に適用する最優遇金利です。
金融機関は、日銀の政策金利などの短期市場金利を参考にして設定します。

特徴

  • 適用対象:短期運転資金など1年以内の融資
  • 影響要因:日銀の政策金利、短期市場金利の動向
  • 改定頻度:おおむね月1回程度(毎月変更があるとは限りません)
  • 変動性:比較的高い(市中金利に反応)

短プラは、会社の資金繰りに直結するため、金利変動リスクを理解することが重要です。


長期プライムレートとは?

長期プライムレート(長プラ)は、金融機関が優良企業向けの1年以上の期間の長期貸出に適用する最優遇金利です。
これは主に10年国債利回りといった長期市場金利をもとに決定されます。

特徴

  • 適用対象:設備投資資金など1年以上の融資
  • 影響要因:長期国債利回り、長期市場金利の動向
  • 改定頻度:おおむね月1回程度(毎月変更があるとは限りません)
  • 変動性:短プラよりは緩やかとされています

長期資金を調達する際には、この長プラを基準に融資金利が決まるため、長期金利の動向を把握することが欠かせません。


短期プライムレートと長期プライムレートの違い

両者の違いを整理すると、概要としては、次のようになります。

項目短期プライムレート長期プライムレート
融資期間1年以内1年以上
基準とする市場金利無担保コール翌日物など短期金利長期国債利回りなど長期金利
改定頻度月1回程度(毎月変更があるとは限らず)月1回程度(毎月変更があるとは限らず)
金利の変動性比較的高い(短期市場に敏感)比較的緩やか(長期市場の影響を受ける)
主な利用目的運転資金設備投資や長期資金調達

金融機関の視点

金融機関は、短プラと長プラを使い分けながら融資金利を決定します。
重要なのは「資金の性格」に応じて金利水準を調整しているという点です。

  • 短期の資金需要:短プラを基準に、短期市場金利の動向を反映
  • 長期の資金需要:長プラを基準に、長期金利や将来の金利リスクを考慮

つまり、金融機関は借り手の信用力だけでなく、借入期間の性質によっても金利を分けているのです。


経営に与える影響

経営者や経理担当者にとって、短プラと長プラの違いを理解することは、資金調達戦略を立てるうえで非常に重要です。

  • そのため、次の点に留意が必要です。
  • 短期借入を利用する場合:金利変動の影響を受けやすいため、資金繰り表をこまめに見直して対応することが大切です。
  • 長期借入を利用する場合:金利は安定しやすいものの、調達コストは短期に比べ高くなる可能性があります。

また、金融市場の動きによって短プラと長プラの差が拡大・縮小することがあり、それが会社の金利負担に直結します。


実務での活用ポイント

  1. 資金繰り計画に反映する
     短プラの動向は短期借入金の利息支出に直結するため、資金繰り表の精度を高めるうえで重要です。
  2. 設備投資計画の判断材料とする
     長プラは設備資金などの長期借入に関わるため、投資判断の際に長期金利の見通しを加味することが大切です。
  3. 固定金利・変動金利の選択に活かす
     短プラや長プラの動向を見極めることで、固定金利で安定を取るか、変動金利でコスト削減を狙うかの判断材料になります。

まとめ

短期プライムレートと長期プライムレートは、ともに融資金利の基準となる重要な指標です。

  • 概して、次のとおりとされています。
  • 短期プライムレート=短期資金の基準金利。市場変動に敏感
  • 長期プライムレート=長期資金の基準金利。安定しているが長期的な見通しが必要

経営者や経理担当者としては、自社の資金需要に応じてどちらの金利が適用されるのかを理解し、資金繰りや投資計画に反映させることが求められます。

金利は「コスト」であると同時に、「金融機関が会社を見る視点」でもあります。
短プラと長プラの違いを正しく理解し、資金調達力を高め、経営の安定に繋げましょう。

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