江東区の税理士     経営アドバイザー

佐藤充宏 江東区で税理士事務所・ファイナンスコンサルティング会社を経営しています。

経理担当者の方むけ:米ドルとの関係から読み解く為替の動き──今、経理担当者が知っておくべき基本知識

経理担当者の方むけ:米ドルとの関係から読み解く為替の動き──今、経理担当者が知っておくべき基本知識

【はじめに】

「為替は経理には関係ないと思っていた」

そうおっしゃる経理担当者の方も少なくありません。

しかし、近年のように1ドル=150円台という円安局面が続く中で、

「仕入価格が上がった」

「燃料費が想定以上に膨らんだ」

といったコスト上昇に直面している会社も多いのではないでしょうか。

このような影響の背景には、米ドルと日本円の為替関係が深く関係している事があります。

そこで、今回は、

為替の基本と米ドルの役割、

円安・円高のメカニズム、

そして実際の経理業務にどう影響するのか

経理担当者が最低限押さえておくべき為替の視点を、実務的な観点からわかりやすく解説します。

【1. 為替と米ドルの基本──なぜ米ドルが注目されるのか】

為替とは、「異なる国の通貨を交換する際の比率」のことを指します。

たとえば、「1ドル=150円」といえば、1ドルを得るために150円が必要という意味です。

なかでも、経理実務で注目すべきは「円と米ドル」の関係です。

その理由は主に以下のとおりです:

  • 国際取引の多くが米ドル建てで行われています

  • エネルギー(原油・天然ガス)や金属・穀物などの価格は米ドルで決まる面があります

  • 日本の貿易額の大部分はドルと円によって動いています

つまり、たとえ自社が輸出入をしていなくても、“間接的に”米ドル建ての影響を受けているというのが実情です。

たとえば、国内で仕入れている商品や原材料も、

その上流では米ドルで仕入れている企業がいる可能性が高いため、円安が続けばコストが上がり、

結果として自社の仕入価格や経費にも跳ね返ってくるのです。

【2. 円安・円高とは何か?経理に関わる影響を具体的に】

■ 円安とは?

「円安」とは、日本円の価値が下がることを意味します。

たとえば、1ドル=100円だったのが、1ドル=150円になると、

同じ1ドルの商品を買うために、150円必要になる=円の価値が落ちたという状態です。

円安が与える主な影響:

  • 輸入コストの上昇(原材料・燃料費など)

  • 電気料金・ガソリン代の高騰

  • 販売価格の値上げ要請が増加

  • インフレ傾向の強まり

  • 外貨建て資産・債務の評価差益/差損の増減

実際の業務では、円安によって

仕入価格の上昇→粗利の悪化→資金繰り圧迫

といった連鎖が起きやすくなります。

また、外貨建てで仕入れや借入を行っている場合、為替差損が発生する可能性がある点も注意が必要です。

■ 円高とは?

「円高」とは、日本円の価値が上がることを意味します。

たとえば、1ドル=150円だったのが、1ドル=100円になると、
100円で1ドルの商品を買える=円の価値が上がったという状態です。

円高が与える主な影響:

  • 輸入コストの低下(仕入価格が下がる)

  • 物価の安定化(インフレが抑えられる)

  • 外貨建て債務の評価益増加(為替差益)

  • 輸出企業の利益が減少する可能性

経理担当者としては、為替差損益の影響を踏まえて、

外貨建取引の洗い替えや月次の評価換算の精度を高めていく必要があります。

【3. 金利と為替の関係──なぜ米国の金利が影響するのか】

為替と密接に関係しているのが

「金利」

です。

特に、2025年現在のように**米国は比較的高い水準での金利を維持し、

一方で日本は低金利**という構図が続いているとされています。

このような状況では、次のような動きが起こります:

  • 米ドルの金利が高い → 世界中の投資家がドルを買う

  • 日本円の金利が低い → 魅力が少ないため、売られる

  • 結果として、円安が進行する

つまり、「金利差が為替レートを動かしている」という側面もあるとされており、

経理担当者も「金利→為替→コストへの影響」というつながりを理解しておくことが重要なのです。

≪補足≫「米ドルの金利が高い → 世界中の投資家がドルを買う」という流れがなぜ起こるのか

金利が高い通貨には「利回りを目的とした資金」が集まりやすいから

というのが、理由の一つです。

金利の高い通貨(たとえば米ドル)には、世界中の投資家が「利回り」を求めて資金を移します。

その結果、ドルが買われてドル高が進み、相対的に円安になるとされています。

金利差が為替に与える影響は、経理や財務でも押さえておくべき重要な視点です。

【4. 経理担当者が押さえるべき実務的ポイント】

■ 為替差損益の確認例

  • 輸出入企業:為替差損益が発生していないかを都度確認

  • 外貨建債務を抱える場合は、状況によっては、為替予約の利用検討

  • 決算時の評価換算に注意

■ 見積・予算作成におけるレート想定例

  • 年度計画に想定為替レートを明記する

  • 円安に備えて、粗利率・販売価格の見直し検討

【5. まとめ】

為替は「経理とは関係のない指標」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、

実際には、仕入価格・粗利率・為替差損益・金利負担など、日々の経理業務に深く関係しています。

特に「米ドル」は、日本の企業活動と強く結びついている通貨であり、

米国の金利政策ひとつで、会社の原価や利益構造が変わることも珍しくありません。

経理担当者としては、ニュースや為替レート・利率等に関心を持ち、

日々の数値の背後にある「経済の動き」を意識することで、

経営判断のサポートや、将来的な資金繰りの精度を高めることができます。

為替の知識は、経理スキルの“応用力”を高める重要な土台です。

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