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佐藤充宏 江東区で税理士事務所・ファイナンスコンサルティング会社を経営しています。

国債と金利の関係──金利が上がると国債価格が下がる理由

国債と金利の関係──金利が上がると国債価格が下がる理由

はじめに

ニュースで「金利上昇」「国債価格下落」といった言葉を耳にすることがあります。
この2つの動きは、金融市場ではよく話題になりますが、
実際には「なぜ金利が上がると国債の価格が下がるのか?」という仕組みを
理解している人は多くありません。

国債は、国が発行する“借用証書”であり、
投資家にとっては利息を得られる金融商品です。
そして、国債の価格と金利(利回り)は表裏一体の関係にあります。
つまり、一方が上がればもう一方は下がるという、反対の動きをするのです。

この記事では、
国債の価格と金利の関係をわかりやすく整理し、
なぜそのような動きになるのか、そしてそれが経営や資金調達にどんな影響を与えるのかを
実務的な視点から解説します。


1. 国債の価格と金利(利回り)の関係とは?

まず基本から整理してみましょう。

国債は、発行時に「額面金額」と「利息(クーポン)」が決められています。
たとえば、額面10万円の国債で年1,000円の利息がつく場合、
その国債の**利回りは1%(1,000円 ÷ 10万円)**になります。

ところが、この国債は市場で売買されるため、
価格は常に変動しています。
投資家が多く買いたいと思えば価格は上がり、
売りたい人が増えれば価格は下がります。

そして重要なのが、価格の変動と利回りの関係です。
国債の価格が上がると、固定された利息の金額(1,000円)に対して
投資額が増えるため、実際の利回りは下がります。

逆に、価格が下がると利回りは上がります。


💡わかりやすいイメージで言うと…

たとえば、ご自分が「毎年1万円の利息がもらえる国債」を持っているとします。
発行時は10万円で買いました。
つまり利回りは10%です。

ところが、人気が出て12万円で買いたいという人が現れた場合──
同じ1万円の利息でも、「12万円で1万円」なので、
利回りは約8.3%に下がります。
つまり、価格が上がると利回りが下がるのです。

逆に、価格が8万円まで下がったとき、
同じ1万円の利息なら利回りは12.5%に上昇します。
価格が下がると利回りが上がるというわけです。

このように、国債の「価格」と「利回り(=金利)」は
シーソーのように逆に動く関係にあります。


2. なぜ金利が上がると国債価格は下がるのか

では、なぜ市場金利が上がると、国債の価格が下がるのでしょうか。
理由はシンプルで、**「新しい国債の利息のほうが魅力的になる」**からです。


(1)新発国債の利息が上がる

たとえば、いま市場で「年1%の利息」の国債が取引されています。
その後、市場金利が上昇し、
新しく発行される国債が「年2%」の利息になったとしましょう。

このとき、古い1%の国債を持っている人の立場を考えてみます。
1%の国債よりも2%の国債のほうが当然人気です。
投資家は、低い利息しかもらえない国債を高値では買いません。
そのため、既発行の国債の価格が下がって調整されるのです。


(2)価格が下がることで利回りが釣り合う

古い国債の価格が下がると、
購入者は安く買える分、結果的に利回りが上がります。
こうして、市場全体で利回りが新しい水準にそろっていくのです。

つまり、
金利が上がる(=新しい国債の利息が上がる)
→ 古い国債は魅力が下がる
→ 古い国債の価格が下がって利回りが上がる
という流れで均衡が取れます。


3. 実際の市場で何が起きているか

2025年時点、日本の長期金利(10年国債利回り)は
おおむね1%台で推移しています。
これは、日銀が2024年に長期の「イールドカーブ・コントロール(YCC)」を緩和し、
市場実勢に合わせて金利が少しずつ動くようになった結果といわれています。

その影響で、国債の価格も一定の調整局面にあります。
特に2023~2024年にかけて、
金利上昇により国債の評価損を抱えた金融機関も見られました。
つまり、「金利が上がると国債価格が下がる」という理論は、
実際の金融現場でも日々起きている現象なのです。


4. 経営にとっての“金利上昇”の意味

国債と金利の関係は、企業経営にも無関係ではありません。
金利の上昇は、会社の資金調達コストの増加につながります。

たとえば、設備投資や運転資金のために金融機関から借入をしている場合、
金利が上昇すると支払う利息も増えます。
また、国債の利回りが上がると、金融機関は国債投資でも十分な利回りを確保できるため、
企業への融資に対する“リスクプレミアム”をより厳しく見るようになります。

つまり、国債金利が上がると、
会社の借入金利も上がりやすくなる
という構図です。


5. 金利と国債のバランスを理解する

国債の価格と金利は反対に動く──
この関係は単純に見えて、経済の基礎を支える重要な仕組みです。

  • 金利が上がると、国債価格は下がる
  • 国債価格が下がると、利回りは上がる
  • →この利回りが金融市場全体の“金利の基準”になる

このように、国債市場は経済の体温計のような役割を果たしています。
そして、金融機関が国債をどう扱うかが、企業の資金調達にも影響を及ぼします。


6. 経営者・経理担当者が押さえるべき視点

経営や財務の現場では、次のような点を意識しておくと良いでしょう。

  1. 長期金利=借入金利の目安
     → 10年国債利回りの動向は、固定金利型融資や社債発行のコストに影響します。
  2. 金利上昇=評価損リスクの拡大
     → 金融資産や投資信託の中に国債を含む場合、含み損が出る可能性もあります。
  3. 金融政策との連動性
     → 日銀が金利をどの水準で安定させるかにより、企業の資金繰り環境が変化します。

経営判断を行う際は、単に「金利が上がった・下がった」で終わらせず、
“なぜその金利が動いたのか”を理解する姿勢が重要です。


まとめ

国債と金利の関係は、経済の根幹にある仕組みです。
金利が上がると国債価格が下がる──この反対の動きには、
「市場が常に利回りを均衡させようとする力」が働いています。

このバランスがあるからこそ、
金融市場は合理的に動き、企業の資金調達にも一定の秩序が保たれています。

国債は国家の信用を映す鏡であり、
その金利の動きは、企業経営の“コストの変化”を映し出す指標でもあります。

したがって、経営者や経理担当者は、
国債市場と金利の関係を理解することで、
未来の資金繰り・投資判断・経営戦略に活かすことができるのです。


免責事項

本記事は、2025年時点の公表情報および日本銀行・財務省・金融庁などの資料を参考に執筆しています。
内容は一般的な情報提供を目的としており、投資・融資・経営判断の結果を保証するものではありません。
また、一部の経済指標や政策動向については専門家の間でも見解が分かれる場合があります。
最終的な判断は、最新の公式資料および専門家の助言に基づいて行ってください。

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記事執筆者

税理士 佐藤充宏
東京都江東区で税理士事務所及びファイナンスコンサルティング会社を経営している佐藤充宏と申します。

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