
「債券」と聞くと、まず「国債」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
あるいは、会社が資金を調達するために発行する「社債」を思い浮かべる方もいるでしょう。
しかし、債券を発行して資金を調達するのは国や会社だけではありません。
地方公共団体も、道路や学校、公共施設などの整備をはじめとした財政上必要な資金を調達するために「地方債」を利用します。
つまり、発行する主体によって、
国が発行する国債
地方公共団体が発行する地方債
会社が発行する社債
などに分けることができます。
どれも資金を調達するための仕組みという点では共通していますが、誰が発行するのか、何のために発行するのか、信用力をどのように考えるのかなどには違いがあります。
また、「国債なら安全」「社債ならリスクが高い」と単純に二つに分けられるものでもありません。
債券には、金利変動による価格変動や、発行者が元本・利息を支払えなくなる信用リスクなどもあります。
今回は、そもそも債券とは何なのかという基本から、国債・地方債・社債の違い、それぞれを誰が発行するのか、投資する場合にどのような点を見る必要があるのかまで、わかりやすく解説します。

目次
債券とは何か
債券とは、国、地方公共団体、会社などが資金を調達するために発行するものです。
一般的な利付債の場合、発行者はあらかじめ定められた条件に基づいて利息を支払い、満期を迎えると元本を償還します。
たとえば、100万円の債券を購入したとします。
その債券について、
- 満期まで5年
- 一定の利率で利息を支払う
- 満期時に100万円を償還する
という条件が決められていれば、投資家は保有期間中に利息を受け取り、満期時には原則として額面金額の償還を受けることになります。
ただし、すべての債券が同じ仕組みではありません。
途中で利息を支払わず、発行価格と償還価格との差によって収益を得る割引債などもあります。
また、満期前に市場で売却する場合には、その時点の市場金利などによって債券価格が変動するため、購入価格より安い価格で売却することになる場合もあります。
債券を買うということは発行者にお金を貸すというイメージ
債券を理解するときは、
「債券を購入する=発行者に資金を提供する」
と考えるとわかりやすいでしょう。
国債を買えば国に資金を提供することになります。
地方公共団体が市場で発行する地方債を買えば、その地方公共団体に資金を提供することになります。
社債を買えば、その会社に資金を提供することになります。
発行者から見ると、債券は資金を調達する手段です。
投資家から見ると、一定の条件のもとで利息を受け取り、満期時に元本の償還を受けることを目的とした金融商品です。
ただし、発行者によって信用力は異なります。
そのため、「債券だからすべて同じ安全性」と考えることはできません。
債券は国だけが発行するものではない
債券という言葉から国債を連想することが多いため、
「債券は国が発行するもの」
と思っている方もいるかもしれません。
しかし、これは正確ではありません。
日本証券業協会では、公社債について、国、地方公共団体、会社などが発行する国債・地方債・社債などを合わせた債券の総称と説明しています。
発行主体という視点から整理すると、代表的なものとして、
- 国 → 国債
- 地方公共団体 → 地方債
- 会社 → 社債
があります。
まず、この違いを押さえると債券全体の仕組みが理解しやすくなります。
国が発行する「国債」
国債とは、その名前のとおり国が発行する債券です。
財務省も、国債について「国の発行する債券」と説明しています。
国が必要な資金を調達する方法の一つとして国債があります。
国債にはさまざまな種類があります。
たとえば、財務省が市中に発行する主な国債には、一定の利子が支払われる固定利付国債や、途中で利子を支払わず満期時に額面金額で償還される割引国債などがあります。
さらに、個人が購入できる「個人向け国債」もあります。
個人向け国債には、
- 変動10年
- 固定5年
- 固定3年
があります。
国債の場合、利子および元本の支払いを行うのは国です。
この「誰が利息と元本を支払うのか」という点が、債券を理解するうえで非常に重要です。
地方公共団体が利用する「地方債」
国だけでなく、都道府県や市区町村などの地方公共団体も資金を調達します。
その際に利用されるのが「地方債」です。
地方債協会では、地方債について、
地方公共団体が一会計年度を超えて行う借入れ
と説明しています。
地方公共団体は、道路、学校、公共施設など、長期間にわたって利用される社会資本の整備などに多額の資金を必要とすることがあります。
こうした資金を地方債によって調達することがあります。
なぜ、その年度の税収だけですべて支払わないのでしょうか。
たとえば、何十年にもわたって住民が利用する公共施設を整備した場合、その建設費を現在の住民だけが負担するのではなく、将来その施設を利用する世代にも一定の負担を求めるという考え方があります。
地方債には、このような世代間の負担を調整する役割もあります。
地方債について注意したいポイント
ここは少し注意が必要です。
「地方債」という言葉を見ると、
「地方公共団体が発行する債券がすべて市場で売買されている」
と思うかもしれません。
しかし、必ずしもそうではありません。
地方債は借入先などによっていくつかに分類されます。
地方債協会によれば、民間等資金による地方債には、市場公募によって発行されるものだけでなく、金融機関等が引き受ける地方債などもあります。
市場公募地方債は、広く投資家に購入を募る方法によって発行される地方債です。
一方、金融機関等から借入れまたは引受けの方法で資金を調達する「銀行等引受地方債」もあります。
したがって、
「地方公共団体も債券を発行できる」
という理解は正しいですが、
「地方債はすべて一般の投資家が市場で購入できる債券である」
という理解は正確ではありません。
地方債という制度の中には、さまざまな資金調達方法があります。
地方債にはどのようなものがあるのか
投資家が購入できる地方債として代表的なのが、市場公募地方債です。
これは、地方公共団体が市場を通じて投資家から資金を調達するものです。
都道府県や政令指定都市などが発行する地方債があり、地方公共団体が単独で発行するものだけでなく、複数の地方公共団体が共同して発行する地方債もあります。
地方債を見ると、
「国ではなく、自治体も債券市場から資金を調達している」
ということがわかります。
国債と社債の間に地方債という大きなカテゴリーがあることを知っておくと、債券市場全体を理解しやすくなります。

会社が発行する「社債」
会社が資金を調達するために発行する債券が「社債」です。
日本証券業協会では、社債について、会社が設備投資などの事業資金を調達するために発行する債券と説明しています。
会社が資金を調達する方法にはさまざまなものがあります。
たとえば、
- 金融機関から借り入れる
- 株式を発行する
- 社債を発行する
といった方法があります。
社債を発行すれば、会社は投資家から直接資金を調達できます。
投資家はその社債を購入することで会社に資金を提供し、会社は契約条件に従って利息や元本を支払います。
社債と株式は何が違うのか
会社が発行するものとして、社債と株式を混同しないことも大切です。
どちらも会社が資金を調達するために利用できますが、性格は異なります。
社債を購入した人は、基本的には会社に資金を貸す側です。
一方、株式を購入した人は、その会社の株主になります。
債券には原則として満期があり、発行条件に基づいて元本が償還されます。
一方、一般的な株式には債券のような満期はありません。
また、株式の配当は会社の業績や方針によって変化する可能性がありますが、一般的な利付社債では発行時に利率などの条件が決められます。
この違いを理解すると、
「社債=会社への融資に近い性格」
「株式=会社への出資」
という違いが見えてきます。
国債・地方債・社債の共通点
国債、地方債、社債には発行主体の違いがありますが、共通している部分もあります。
代表的な共通点は、
資金を調達するために利用される
という点です。
国は財政上必要な資金を調達します。
地方公共団体も行政サービスや公共施設整備などに必要な資金を調達します。
会社は設備投資や事業運営などに必要な資金を調達します。
つまり、
債券市場は、資金を必要とする主体と、資金を運用したい投資家を結びつける仕組み
ともいえます。
国債・地方債・社債の違い
最もわかりやすい違いは発行主体です。
国債
発行主体:国
地方債
資金調達主体:地方公共団体
社債
発行主体:会社
さらに、それぞれ資金を調達する目的や信用力などが異なります。
国債では国の信用力が重要になります。
地方債では地方公共団体の財政や、地方財政制度の仕組みなどが関係します。
社債では発行会社の事業内容、財務内容、収益力、負債状況などが重要です。
「債券」という一つの言葉でまとめられていますが、実際には誰が発行しているのかによって性格が違います。
債券なら元本は必ず戻ってくるのか
ここは誤解しないようにしたいポイントです。
債券には満期があり、満期時に元本を償還する条件になっているものが一般的です。
しかし、
「債券を購入すれば元本が必ず保証される」
という意味ではありません。
特に社債の場合、発行会社が経営破綻するなどして元本や利息を支払えなくなる可能性があります。
このようなリスクを「信用リスク」といいます。
日本証券業協会も、社債を発行した会社などが倒産した場合には、元本や利息の支払いが行われない場合があると説明しています。
そのため、債券を購入するときには、
「利率が何%なのか」
だけではなく、
「誰がその債券を発行しているのか」
を見ることが非常に重要です。
利率が高い債券ほど良いとは限らない
投資する側から見ると、利率が高い債券ほど魅力的に見えるかもしれません。
しかし、一般的には信用リスクが高い発行者ほど、投資家に購入してもらうために相対的に高い利回りが求められる場合があります。
つまり、
利回りが高い=無条件に有利
ではありません。
高い利回りの背景に、
「なぜこの債券には高い利回りが必要なのか」
という理由がある可能性があります。
そのため債券投資では、
- 発行者
- 信用力
- 利率
- 満期
- 市場価格
- 格付け
- 財務内容
などを総合的に確認することが重要です。
債券価格は途中で変動する
債券には満期がありますが、満期まで保有せず途中で市場で売却できる債券もあります。
その場合、売却価格は常に購入価格と同じとは限りません。
債券価格は、市場金利などによって変動します。
一般的には、
市場金利が上昇すると、既に発行されている債券の価格には下落圧力がかかる
という関係があります。
たとえば、過去に年1%の利率で発行された債券を持っているとします。
その後、市場で新しく年3%程度の債券が購入できるようになれば、年1%の既発債券の魅力は相対的に低下します。
そのため、市場で取引される価格は下がる方向に動きやすくなります。
逆に、市場金利が低下すれば、既に発行されている比較的高い利率の債券の魅力が高まり、価格には上昇圧力がかかります。
つまり債券には、
信用リスク
だけでなく、
金利変動による価格変動リスク
もあります。
国債と社債では金利上昇の影響は同じなのか
国債でも社債でも、固定利付債であれば市場金利が上昇したときに既発債券価格へ下落圧力がかかるという基本的な関係は共通しています。
ただし、社債にはさらに発行会社固有の信用リスクがあります。
たとえば、その会社の業績が悪化した場合には、市場金利が変化していなくても、その社債に求められる利回りが上昇し、価格が下落することがあります。
そのため、
社債の場合には金利だけでなく会社の信用力も重要
になります。
地方債についても、地方財政制度などを含めた信用力の仕組みを理解する必要があります。

債券には誰が投資しているのか
債券を購入するのは個人だけではありません。
金融機関、保険会社、年金基金、投資信託など、さまざまな投資家が債券を保有しています。
金融機関にとって債券は、資金運用の重要な手段の一つです。
一方で、金利上昇局面では保有している債券価格が下落し、含み損が発生する場合があります。
そのため、金融機関の決算や金融市場のニュースでは、
「債券価格」
「長期金利」
「含み損」
といった言葉が一緒に出てくることがあります。
債券について基本を知っておくと、金融ニュースも理解しやすくなります。
発行者側から見ると債券は「借入れ」の一種
投資家側からだけでなく、発行者側から考えると債券の性格がさらにわかりやすくなります。
たとえば会社が社債を発行すると、会社は投資家から資金を調達します。
会社にとって、その資金は将来返済する必要のある負債です。
株式を発行して調達した資金は原則として株主に返済する必要はありませんが、社債は満期時に償還する必要があります。
国債も同様に国の債務です。
地方債も地方公共団体が負担する債務です。
そのため債券は、
投資家にとっては金融資産
であり、
発行者にとっては債務
という二つの側面を持っています。
債券を見るときは「誰が発行したか」から考える
債券には多くの種類があります。
そのため、最初から細かな商品性を覚えようとすると複雑に感じるかもしれません。
まずは、
誰が発行しているのか
という視点から見ると理解しやすくなります。
国なら国債。
地方公共団体なら地方債。
会社なら社債。
この基本を押さえたうえで、
「満期はいつか」
「どのくらいの利息が支払われるか」
「信用力はどうか」
「途中で売却した場合に価格変動があるか」
という順番で確認すると、債券の特徴を整理しやすくなります。
国債だけを知っていても債券全体は見えてこない
ニュースでは国債が非常によく登場します。
長期金利のニュースでも、代表的な指標として10年物国債の利回りが取り上げられることがあります。
そのため、
「債券=国債」
という印象を持ちやすいかもしれません。
しかし実際には、地方公共団体が資金調達に利用する地方債もあれば、会社が資金調達のために発行する社債もあります。
さらに、それぞれの中にもさまざまな種類があります。
債券市場を理解する第一歩は、
「債券を発行するのは国だけではない」
という点を知ることです。
この視点を持つと、金融市場、国や地方公共団体の財政、会社の資金調達が一つにつながって見えてきます。
まとめ
債券とは、国、地方公共団体、会社などが資金を調達するために利用する仕組みです。
一般的な利付債では、発行者が一定の条件で利息を支払い、満期時に元本を償還します。
発行主体によって代表的な債券を整理すると、
国が発行する国債
地方公共団体が資金調達に利用する地方債
会社が発行する社債
があります。
債券は国だけが発行するものでも、会社だけが発行するものでもありません。
また、地方債については、市場公募地方債のように投資家が購入できるものがある一方、地方公共団体が金融機関等から借り入れる形態も含まれるため、「地方債はすべて市場で売買される証券」と理解するのは正確ではありません。
さらに、債券だからといって元本が無条件に保証されるわけでもありません。
社債には発行会社の信用リスクがあり、債券を満期前に売却する場合には、市場金利などの変化によって価格が変動することがあります。
債券を見るときには、まず、
「誰が発行・資金調達しているのか」
を確認することが重要です。
そのうえで、利率、満期、信用力、価格変動などを見ると、それぞれの債券の性格を理解しやすくなります。
国債、地方債、社債の違いを知ることは、債券投資だけでなく、国や地方公共団体の財政、会社の資金調達、そして金利に関するニュースを理解するうえでも役立ちます。
いいえ。国が発行する国債のほか、地方公共団体が資金調達に利用する地方債、会社が発行する社債などがあります。発行・資金調達主体によって債券の名称や性格が異なります。
最も基本的な違いは発行・資金調達主体です。国債は国、地方債は地方公共団体、社債は会社が資金を調達するために利用します。信用力や資金の利用目的などにも違いがあります。
はい。地方公共団体は地方債によって資金を調達できます。市場を通じて投資家を募る市場公募地方債もあります。ただし、地方債には金融機関等からの借入れによるものもあり、すべてが一般の投資家向けの証券というわけではありません。
必ず戻るとは限りません。債券には発行者が利息や元本を支払えなくなる信用リスクがあります。また、満期前に売却する場合には市場価格が変動し、購入価格を下回る価格で売却することもあります。
社債は会社が借入れに近い形で資金を調達するために発行する債券で、一般的には満期と償還条件があります。一方、株式は会社への出資であり、株主は株式を通じて会社の所有者の一員となります。
一般的に、市場金利が上昇すると、既に発行されている固定利付債の価格には下落圧力がかかります。反対に市場金利が低下すると、既発債券の価格には上昇圧力がかかります。
主な出典
日本証券業協会「個人向け社債の特徴やリスク、価格情報の入手方法」
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