江東区の税理士     経営アドバイザー

佐藤充宏 江東区で税理士事務所・ファイナンスコンサルティング会社を経営しています。

ファンドによる企業買収とは?ニュースで聞くTOB・MBO・PEファンドの関係を解説

ファンドによる企業買収とは?ニュースで聞くTOB・MBO・PEファンドの関係を解説

はじめに

経済ニュースを見ていると、

  • 投資ファンドが企業を買収
  • PEファンドがTOBを実施
  • 経営陣がファンドと組んでMBO
  • 上場会社が非公開化へ
  • TOB価格に株主が注目

といった言葉を目にすることがあります。

これらのニュースを読むと、

「ファンドが会社を買収するとはどういうことか」

「TOBとは何か」

「MBOとPEファンドはどう関係するのか」

「買収される会社にとって良いことなのか」

と疑問を持つ方もいるでしょう。

ファンドによる企業買収は、単に「会社を乗っ取る」という単純な話ではありません。

もちろん、買収には支配権の移動が伴う場合があります。

しかし、実務上は、企業価値を高めるための資本参加、経営改善、事業再編、上場廃止を伴う非公開化、後継者問題への対応など、さまざまな目的で行われます。

また、ニュースでよく聞くTOBは、企業買収そのものではなく、株式を市場外で広く買い付けるための手続きの一つです。

MBOは、経営陣が主体となって会社を買収する取引を指し、その際にPEファンドが資金面や実務面で関与することがあります。

つまり、ファンドによる企業買収を理解するには、

  • ファンドとは何か
  • PEファンドは何を目的に投資するのか
  • TOBはどのような手続きか
  • MBOとは何か
  • なぜ上場廃止や非公開化が行われるのか
  • 既存株主や会社にどのような影響があるのか

を整理することが重要です。

本記事では、ファンドによる企業買収について、ニュースでよく聞くTOB、MBO、PEファンドとの関係をわかりやすく解説します。


ファンドによる企業買収とは何か

ファンドによる企業買収とは、投資ファンドが会社の株式や事業を取得し、その会社に対して経営上の影響力を持つことをいいます。

買収の方法はさまざまです。

例えば、

  • 上場会社の株式をTOBで取得する
  • 未上場会社の株式を既存株主から取得する
  • 経営陣と協力してMBOを行う
  • 事業会社から子会社や事業部門を買収する
  • 事業承継の一環として株式を取得する

といった形があります。

ファンドが買収に関与する場合、単に株式を取得して終わりではありません。

特にPEファンドでは、買収後に経営改善や事業成長を支援し、数年後に株式を売却することで投資回収を目指すことがあります。

そのため、ファンドによる企業買収は、

会社の株式を取得し、企業価値を高めたうえで将来的な売却や再上場などを目指す投資活動

と整理すると分かりやすいでしょう。


PEファンドとは何か

ファンドによる企業買収でよく登場するのが、PEファンドです。

PEファンドのPEとは、

Private Equity

の略です。

一般的には、未上場会社や上場会社の非公開化案件などへ投資し、企業価値向上を目指すファンドを指します。

PEファンドは、投資家から資金を集め、その資金を使って会社へ投資します。

投資後は、経営陣と協力しながら会社の成長や収益力改善を目指し、将来的に株式を売却することで投資回収を行います。

PEファンドの投資先には、次のような会社があります。

  • 成長余地がある会社
  • 経営改善の余地がある会社
  • 事業承継に課題を抱える会社
  • 上場を続けるより非公開化した方が改革を進めやすい会社
  • 大企業グループから切り離される子会社や事業部門

このように、PEファンドは、企業買収を通じて会社の支配権や重要な株式を取得し、企業価値向上を目指す投資家といえます。


TOBとは何か

TOBとは、

Take-Over Bid

の略で、日本語では公開買付けと呼ばれます。

TOBは、上場会社などの株式について、買付価格、買付期間、買付予定株数などを公告し、不特定多数の株主から市場外で株式を買い付ける手続きです。

ニュースでは、

「A社がB社にTOBを実施」

「PEファンドが上場会社にTOB」

といった表現が使われます。

TOBが行われる主な場面としては、

  • 上場会社を子会社化する
  • 上場会社を完全子会社化する
  • 上場廃止を前提に非公開化する
  • 経営陣によるMBOを実施する
  • 他社の株式を一定割合以上取得する

などがあります。

ここで重要なのは、

TOBは買収のための手続きの一つであり、買収そのものと完全に同じ意味ではない

という点です。

買収には、相対取引、合併、会社分割、株式交換、事業譲渡など、さまざまな方法があります。

TOBは、その中でも上場会社の株式を広く買い集める際に使われる代表的な手続きです。


なぜTOBが必要になるのか

上場会社の株式は、通常、証券取引所で売買されています。

しかし、会社の支配権に影響するような大量の株式取得を、通常の市場取引だけで進めると、情報の公平性や株主間の平等性に問題が生じる可能性があります。

そこで、一定の株式取得については、公開買付制度により、買付条件をあらかじめ明らかにし、株主が判断できるようにする仕組みが設けられています。

TOBでは、買付者は、

  • 買付価格
  • 買付期間
  • 買付予定株数
  • 買付目的
  • 買付後の方針

などを示します。

株主は、その条件を見たうえで、TOBに応募するかどうかを判断します。

これにより、特定の株主だけが有利な条件で売却するのではなく、株主全体に判断機会が提供されることになります。


ファンドがTOBを使う理由

PEファンドが上場会社を買収する場合、TOBが使われることがあります。

その理由は、上場会社の株式が多くの株主に分散しているためです。

上場会社では、株式が個人投資家、機関投資家、事業会社、金融機関など、多くの株主に保有されています。

ファンドがその会社を買収し、経営権を取得したい場合には、一定割合以上の株式を集める必要があります。

そのため、TOBによって、株主に対して一定の価格で株式の売却を呼びかけます。

TOB価格は、通常、発表前の市場株価に一定の上乗せをした価格になることがあります。

この上乗せ部分は、一般的にプレミアムと呼ばれます。

ただし、TOB価格が妥当かどうかは、会社の価値、将来性、市場環境、取引の背景などによって評価が分かれることがあります。


友好的TOBと敵対的TOB

TOBには、友好的TOBと敵対的TOBがあります。

友好的TOB

友好的TOBとは、対象会社の経営陣が賛同しているTOBです。

例えば、対象会社の取締役会がTOBに賛同意見を表明し、株主に応募を推奨するようなケースです。

PEファンドによる非公開化やMBOでは、対象会社の経営陣と事前に協議を行い、友好的TOBとして進められることがあります。

敵対的TOB

敵対的TOBとは、対象会社の経営陣が反対している、または賛同していないTOBです。

買付者が対象会社の同意を得ずにTOBを開始する場合などが該当します。

ただし、「敵対的」という言葉は印象が強いため、内容を冷静に見る必要があります。

対象会社の経営陣が反対しているからといって、必ず株主にとって不利益とは限りません。

反対に、買付者が高い価格を提示していても、会社の長期的な価値や従業員・取引先への影響などを考えると、慎重な判断が必要な場合もあります。

TOBでは、買付者の提案内容、対象会社の意見、株主の判断が重要になります。


MBOとは何か

MBOとは、

Management Buyout

の略です。

日本語では、経営陣による買収と説明されます。

MBOは、現在の経営陣が、会社の株式を取得して経営権を取得する取引です。

上場会社のMBOでは、経営陣がPEファンドなどと協力し、TOBを通じて株式を買い集め、最終的に上場廃止を目指すことがあります。

MBOが行われる理由としては、

  • 短期的な株価を気にせず中長期改革を進めたい
  • 上場維持コストを削減したい
  • 事業構造改革を進めたい
  • 経営判断の自由度を高めたい
  • 後継者問題や資本政策を整理したい

などが考えられます。


MBOでPEファンドが関与する理由

MBOでは、経営陣が会社の株式を取得する必要があります。

しかし、上場会社を買収するには多額の資金が必要です。

経営陣だけで必要資金を用意することは難しい場合があります。

そこで、PEファンドが資金面で協力することがあります。

PEファンドは、買収資金を提供し、MBO後の経営改善や成長支援にも関与します。

経営陣にとっては、PEファンドと組むことで、資金調達や実務面の支援を受けながら非公開化を進められる可能性があります。

一方、PEファンドにとっては、経営陣が引き続き会社運営に関与することで、事業理解や経営の継続性を確保しやすくなります。

このように、MBOでは、経営陣とPEファンドの利害が一致する場合があります。


MBOで注意すべき利益相反

MBOには注意すべき点もあります。

それは、利益相反です。

MBOでは、経営陣が買い手側に立つ一方で、対象会社の経営陣として株主に対する説明責任も負っています。

経営陣は、会社の内部情報をよく知る立場にあります。

そのため、既存株主から見ると、

「本当に適正な価格で買い取られるのか」

「経営陣が安く会社を買おうとしていないか」

という懸念が生じることがあります。

このため、MBOでは、公正な手続きが重要になります。

例えば、

  • 独立した特別委員会の設置
  • 外部専門家による株式価値算定
  • 少数株主への十分な情報提供
  • 取締役会の慎重な判断
  • 利益相反を避けるための手続き

などが重要とされます。

MBOは、会社の中長期的な成長のために有効な場合があります。

一方で、既存株主の利益を守るためには、手続きの公正性が欠かせません。


TOBとMBOの関係

TOBとMBOは、同じ意味ではありません。

TOBは、株式を買い付ける手続きです。

MBOは、経営陣が会社を買収する取引です。

上場会社のMBOでは、株式を広く買い集めるためにTOBが使われることがあります。

つまり、

MBOを実行するための手段としてTOBが使われる場合がある

という関係です。

例えば、

  1. 経営陣とPEファンドが協議する
  2. 買収目的会社を設立する
  3. 対象会社の株式に対してTOBを実施する
  4. 一定数の株式を取得する
  5. 残りの株式を取得する手続きを行う
  6. 上場廃止・非公開化する
  7. 経営改革を進める

という流れが考えられます。

実際の手続きは案件ごとに異なりますが、MBOとTOBはこのようにつながります。


ファンドによる買収後に何が行われるのか

PEファンドが会社を買収した後は、企業価値向上を目指してさまざまな施策が行われることがあります。

例えば、

  • 事業戦略の見直し
  • 不採算事業の整理
  • 成長事業への投資
  • 経営管理体制の強化
  • 人材採用
  • 財務体質の改善
  • M&Aによる事業拡大
  • ガバナンス体制の整備

などです。

PEファンドは、一定期間投資先を保有した後、企業価値が高まった段階で売却し、投資回収を目指します。

売却方法としては、

  • 他の会社への売却
  • 他のファンドへの売却
  • 再上場
  • 経営陣や既存株主への売却

などがあります。

ただし、買収後の改革が必ず成功するわけではありません。

市場環境の変化、競争激化、人材不足、想定外の業績悪化などにより、計画どおりに進まないこともあります。


上場廃止・非公開化の意味

ファンドによる買収やMBOでは、上場廃止・非公開化が行われることがあります。

上場会社は、株式市場で株式を売買できる一方で、上場維持のためのコストや情報開示、株主対応などが必要になります。

また、短期的な株価変動や市場の評価を意識しながら経営を行う必要があります。

非公開化することで、

  • 中長期的な経営改革を進めやすくなる
  • 上場維持コストを削減できる
  • 意思決定を迅速化できる
  • 外部株主対応の負担を軽減できる

といったメリットが期待される場合があります。

一方で、非公開化により一般投資家はその会社の株式を市場で売買できなくなります。

既存株主にとっては、TOB価格や買収条件が重要になります。


既存株主にとってのポイント

TOBが行われる場合、既存株主は応募するかどうかを判断する必要があります。

その際に確認したいポイントとしては、

  • TOB価格
  • 市場株価との比較
  • 買付期間
  • 買付予定株数
  • 対象会社の意見
  • 買付者の目的
  • 買付後の経営方針
  • 応募しなかった場合の扱い

などがあります。

特に、上場廃止を前提とするTOBでは、応募しなかった株主についても、その後の手続きで株式を取得される場合があります。

そのため、単に価格だけでなく、取引全体の流れを確認することが重要です。

ただし、個別のTOBに応募すべきかどうかは、投資判断の問題です。

会社の状況、提示価格、将来見通し、個人の投資方針によって判断は異なります。


会社にとってのメリットと注意点

ファンドによる企業買収は、会社にとってメリットとなる場合があります。

例えば、

  • 成長資金を得られる
  • 経営支援を受けられる
  • 事業再編を進めやすくなる
  • 後継者問題を解決できる
  • 非公開化により中長期改革を行いやすくなる

といった点です。

一方で、注意点もあります。

  • ファンドには投資回収の期限がある
  • 経営改革のスピードが求められる
  • 従業員や取引先への影響が生じる可能性がある
  • 財務戦略が大きく変わる場合がある
  • 経営陣と株主の利害調整が必要になる

ファンドは会社の成長を支援する存在になることがあります。

しかし、ファンドは投資家であり、最終的には投資回収を目指します。

そのため、会社側は、買収の目的、買収後の方針、従業員や取引先への影響、将来のEXIT方針などを慎重に確認する必要があります。


ファンドによる買収をどう見るべきか

ファンドによる企業買収は、良い・悪いで一律に判断できるものではありません。

買収によって企業価値が高まり、会社の成長につながる場合もあります。

一方で、買収価格や手続きの公正性、買収後の経営方針に問題があれば、株主や従業員、取引先にとって不安が生じることもあります。

大切なのは、

誰が、何を目的に、どのような条件で買収し、買収後に何をしようとしているのか

を見ることです。

TOBという言葉だけでは、取引の良し悪しは判断できません。

MBOという言葉だけでも、既存株主にとって有利か不利かは分かりません。

PEファンドによる買収も、企業価値向上につながる場合もあれば、慎重に見るべき場合もあります。

ニュースを読む際には、表面的な言葉だけでなく、取引の目的、手続き、価格、買収後の方針に注目することが重要です。


経営者が知っておきたいポイント

経営者にとって、ファンドによる企業買収は大企業だけの話ではありません。

未上場会社でも、事業承継、成長資金の調達、事業再編、親族外承継、M&Aなどの場面でファンドが関与することがあります。

経営者が知っておきたいポイントは、次のとおりです。

  • ファンドは単なる資金提供者ではなく、投資回収を目指す投資家である
  • PEファンドは経営支援を行う場合がある
  • MBOでは経営陣と既存株主の利益相反に注意が必要
  • TOBは上場会社の株式を広く買い集める手続きである
  • 非公開化にはメリットもあるが、既存株主や関係者への影響もある
  • 買収後の方針やEXITの考え方を確認する必要がある

ファンドとの関係では、資金額や買収価格だけでなく、将来の経営方針や会社の方向性を確認することが重要です。


まとめ

ファンドによる企業買収とは、投資ファンドが会社の株式や事業を取得し、企業価値向上や投資回収を目指す取引です。

特にPEファンドは、会社へ投資し、経営改善や成長支援を行い、将来的な売却や再上場などによって投資回収を目指すことがあります。

TOBは、上場会社の株式を市場外で広く買い付けるための手続きです。

MBOは、経営陣が主体となって会社を買収する取引であり、上場会社のMBOではTOBが使われることがあります。

また、MBOでは経営陣が買い手側に立つため、利益相反に注意が必要です。

そのため、公正な手続きや少数株主への十分な配慮が重要になります。

ファンドによる企業買収を理解するには、

  • PEファンドは何を目的に投資するのか
  • TOBはどのような手続きか
  • MBOでは誰が買い手になるのか
  • 買収後にどのような経営方針を取るのか
  • 既存株主や会社関係者にどのような影響があるのか

を整理することが大切です。

経済ニュースでTOBやMBOという言葉を見たときには、単に「買収」という言葉だけで判断するのではなく、取引全体の目的と仕組みを確認すると、理解が深まります。


ファンドによる企業買収とは何ですか?

投資ファンドが会社の株式や事業を取得し、企業価値向上や将来的な投資回収を目指す取引です。PEファンドが関与するケースが多くあります。

TOBとは何ですか?

TOBとは公開買付けのことで、買付価格や買付期間などを明らかにしたうえで、不特定多数の株主から市場外で株式を買い付ける手続きです。

MBOとは何ですか?

MBOとは、経営陣による買収を意味します。現在の経営陣が、PEファンドなどと協力して会社の株式を取得し、経営権を取得する取引です。

TOBとMBOは同じですか?

同じではありません。TOBは株式を買い付ける手続きであり、MBOは経営陣が会社を買収する取引です。MBOを実行するためにTOBが使われる場合があります。

ファンドによる買収は会社にとって悪いことですか?

一律に悪いとはいえません。企業価値向上や事業承継、経営改革につながる場合もあります。一方で、買収価格、手続きの公正性、買収後の方針を慎重に確認する必要があります。


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的として作成しています。TOB、MBO、PEファンドによる企業買収の具体的な手続き、法的効果、開示内容、株主対応、税務・会計処理等は、個別の事案、契約内容、関係法令、金融商品取引所規則等により異なります。また、個別銘柄への投資判断、TOBへの応募判断、会社売却、MBO、資金調達、会社経営上の判断については、具体的な事実関係により結論が異なる場合があります。本記事を参考に行われた判断や行動、その結果として生じた損害等については責任を負いかねますので、実際の判断にあたっては専門家へご相談ください。

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