江東区の税理士     経営アドバイザー

佐藤充宏 江東区で税理士事務所・ファイナンスコンサルティング会社を経営しています。

「金融」と「経済」は何が違う?知っているようで説明できない2つの言葉

「金融」と「経済」は何が違う?知っているようで説明できない2つの言葉

「金融」と「経済」。

どちらも、ニュースや新聞、インターネットの記事などで日常的に目にする言葉です。

「日本経済が回復している」

「金融市場が動いている」

「金融政策が変更された」

「経済成長が必要だ」

このような表現を聞いて、まったく意味がわからないという方は少ないでしょう。

ところが、

「では、金融とは何ですか?」

「経済とは何ですか?」

「金融と経済は何が違うのですか?」

と聞かれると、意外に説明するのが難しいのではないでしょうか。

大人になると、普段よく使われている言葉ほど「今さら人には聞きにくい」と感じることがあります。

そこで今回は、「金融」と「経済」という2つの言葉について、それぞれの意味と違い、さらに両者がどのようにつながっているのかを、できるだけ身近な例を使ってわかりやすく解説します。

まず「経済」とは何か

最初に「経済」から考えてみましょう。

経済という言葉は非常に広い意味を持っていますが、わかりやすく考えるのであれば、

人々が生活するために、モノやサービスを生産し、それを売買・消費するなどの活動や、その仕組み全体

と捉えることができます。

例えば、パン屋さんがパンを作ります。

お客さんがそのパンを買います。

パン屋さんは、売上の中から小麦粉などの材料を仕入れたり、従業員に給料を支払ったりします。

従業員は受け取った給料で食事をしたり、洋服を買ったり、家賃を支払ったりします。

洋服を販売した会社は、その売上を使って商品を仕入れたり、従業員に給料を支払ったりします。

このように、私たちの社会では、モノ、サービス、労働、お金などがさまざまな人や会社の間を動いています。

これらはすべて経済活動の一部です。

つまり、「経済」という言葉を理解するときには、単に「お金のこと」と考えるのではなく、

人や会社などが行う生産・消費・取引などを含む幅広い活動

として考えるとわかりやすくなります。

「経済=お金」ではない

ここは、「金融」と「経済」の違いを理解するうえで重要なポイントです。

経済という言葉を聞くと、お金をイメージする方も多いかもしれません。

もちろん、お金は現代の経済活動において非常に重要な役割を持っています。

しかし、経済そのものがお金だけを意味するわけではありません。

例えば、会社が工場で製品を生産することも経済活動です。

飲食店がお客さんに料理を提供することも経済活動です。

会社で従業員が働くことも、消費者がお店で商品を購入することも経済活動です。

つまり経済には、

「つくる」

「働く」

「売る」

「買う」

「サービスを提供する」

「消費する」

などといった非常に幅広い活動が含まれています。

経済は、私たちの生活や会社の活動そのものと深く結びついているのです。

では「金融」とは何か

次に「金融」について考えてみましょう。

金融という言葉は、文字どおり考えると「金を融通する」と書きます。

簡単にいえば、

お金に余裕があるところから、お金を必要としているところへ資金を融通する仕組みや活動

が金融の基本的な役割の一つです。

例えば、ある人が100万円を持っているとします。

すぐに使う予定がなければ、金融機関に預金するかもしれません。

一方、ある会社では、新しい機械を購入するために資金が必要だとします。

しかし、現在の手元資金だけでは足りません。

そこで金融機関から融資を受けます。

金融機関は、預金などを通じて集めた資金を、資金を必要としている会社などに貸し出します。

もちろん実際の金融機関の資金調達・運用の仕組みはこれほど単純ではありませんが、金融の基本的な機能を理解する例としてはわかりやすいでしょう。

金融庁も、金融機関が家計や法人から預金という形で資金を調達し、その資金を会社への貸出しや債券などで運用する仕組みを説明しています。また、事業部門に生じる資金不足と家計部門などの資金余剰を結び付けることは、経済活動を支える重要な機能となります。

金融は金融機関からの融資だけではない

「金融」と聞くと、金融機関からお金を借りることを思い浮かべるかもしれません。

しかし、金融は融資だけではありません。

例えば、会社が株式を発行して投資家から資金を集めることもあります。

社債を発行して資金を調達することもあります。

一方、個人や会社は預金だけでなく、株式や債券などを保有して資金を運用することがあります。

つまり金融には、

  • 預金
  • 融資
  • 株式
  • 債券
  • 資金調達
  • 資産運用
  • 決済

など、さまざまな仕組みが関係しています。

日本銀行が作成する「資金循環統計」でも、家計、会社、金融機関、政府などの経済主体について、金融資産・負債や資金の運用・調達が把握されています。日本銀行は、こうした情報から一国の金融仲介構造を分析できると説明しています。

金融と経済の違いを簡単に整理すると

ここまでを整理してみましょう。

項目経済金融
大まかな意味生産・消費・取引などを含む社会
活動全体
資金を融通・調達・運用する仕組みや活動
身近な例働く、商品を作る、買い物をする、サービスを利用する預金する、融資を受ける、株式・債券などを通じて資金を運用・調達する
主な対象モノ、サービス、労働、お金など主に資金や金融資産
両者の関係より広い概念経済活動を資金面から支える重要な仕組み

非常に簡単に表現するなら、

「経済」は社会におけるモノ・サービス・お金などの活動全体、

「金融」はその経済活動を資金面から支える仕組み

と考えると、両者の違いを理解しやすくなります。

具体例で考えると金融と経済の違いがわかりやすい

会社を例に考えてみましょう。

ある会社が、新しい商品を販売することになりました。

商品を作るために材料を購入します。

従業員が商品を製造します。

完成した商品をお客さんに販売します。

お客さんが商品を購入します。

これは基本的に「経済活動」です。

ところが、新しい商品を大量に製造するためには、材料の仕入代金や設備資金などが必要になります。

会社の手元資金だけでは足りないため、金融機関から1,000万円の融資を受けることにしました。

この資金の調達には「金融」が関係します。

そして、調達した1,000万円を使って設備を購入したり、材料を仕入れたりすることで、会社の経済活動が行われます。

このように考えると、

金融と経済は別々に存在するのではなく、密接につながっている

ことがわかります。

金融が動くと経済にも影響する

金融と経済が密接につながっていることは、金利を考えるとさらにわかりやすくなります。

例えば、金利が低下したとします。

会社にとっては、以前より低い金利で資金を借りられる場合があります。

その結果、

「新しい設備を購入しよう」

「新店舗を出そう」

「新しい事業を始めよう」

といった投資判断につながる可能性があります。

設備投資が増えれば、機械や建物などへの需要が生まれます。

事業が拡大すれば、新たな雇用につながることもあります。

反対に、金利が上昇すれば借入れに伴う利息負担が増え、会社が設備投資などを慎重に判断する要因となることがあります。

このように、金融面で起きた変化が、設備投資、消費、雇用などの経済活動へ影響していくことがあります。

なぜニュースでは「金融」と「経済」が一緒に出てくるのか

ニュースでは、「金融・経済」というように、金融と経済が並べて使われることがあります。

これは両者が密接に関係しているためです。

例えば、日本銀行が行う金融政策があります。

日本銀行は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資するため、通貨および金融の調節を行うこととされています。

日本銀行は、公開市場操作などの手段を用いて金融市場に働きかけ、金融政策を運営しています。

金利など金融環境が変化すれば、会社の借入れや設備投資、個人の住宅購入や消費などにも影響が及ぶ可能性があります。

つまり、

金融の動きが経済に影響し、経済の状況も金融に影響する

という関係があります。

だからこそ、金融と経済はニュースでも頻繁に一緒に取り上げられるのです。

「金融経済」という言葉もある

さらに「金融経済」という言葉を目にすることもあります。

金融と経済は完全に切り離して考えられるものではありません。

日本銀行も「金融経済情勢」という表現を用いています。金融政策決定会合では金融経済情勢について検討したうえで、金融政策の運営方針などを決定しています。

一方で、「金融」と「経済」がまったく同じ意味というわけでもありません。

例えば、

「飲食店で昼食を食べる」

という行動は経済活動ですが、通常これを「金融」とは呼びません。

一方、

「会社が設備資金を金融機関から借りる」

という行為は経済活動の一部であると同時に、金融に直接関係する行為です。

この違いを理解すると、ニュースで使われる金融・経済用語も整理しやすくなります。

金融を「経済の血液」と考えるとわかりやすい

金融と経済の関係をイメージする場合、金融を「血液」にたとえる説明があります。

金融庁も金融について、「身体をめぐる血液」のようなものと説明し、資金が適切に供給されることが経済や国民生活の向上につながるという考え方を示しています。

人間の身体では、血液が身体のさまざまな部分を循環しています。

経済でも同じように、資金が必要なところへ円滑に供給されることが重要です。

例えば、将来性のある事業を考えている会社があったとしても、必要な資金をまったく調達できなければ、設備を購入したり、人を採用したりすることが難しくなるかもしれません。

反対に、家計などに余裕資金があっても、それが経済活動にまったく結び付かなければ、資金を有効に活用する機会が限られてしまいます。

その両者を結び付ける役割の一つを金融が担っています。

私たちの日常生活も金融と経済の両方につながっている

金融や経済というと、金融機関や大会社、政府などの話のように感じるかもしれません。

しかし、実際には私たちの日常生活にも深く関係しています。

例えば、会社で働いて給料を受け取ります。

その給料を使ってスーパーで食品を購入します。

これは経済活動です。

給料の一部を金融機関に預金します。

住宅を購入するときに住宅ローンを利用します。

余裕資金で株式や投資信託などの金融商品を購入する場合もあります。

こちらは金融と深く関係しています。

つまり私たちは、意識していなくても、毎日の生活の中で経済活動を行い、同時に金融の仕組みを利用しています。

会社経営では金融と経済の両方を見る必要がある

会社経営を考える場合にも、金融と経済の違いを理解しておくことは大切です。

例えば、

「売上が伸びている」

「受注が増えている」

「原材料価格が上昇している」

「人手不足で人件費が上がっている」

といったことは、会社を取り巻く経済活動と深く関係します。

一方、

「借入金利が上昇した」

「金融機関から融資を受けた」

「設備投資資金をどのように調達するか」

「手元資金をどの程度確保しておくか」

といったことは、金融や資金繰りに深く関係します。

会社の業績が良くても、必要なときに資金を確保できなければ経営に支障が生じることがあります。

逆に、十分な資金があっても、商品やサービスが売れず利益を確保できなければ、長期的に事業を続けることは難しくなります。

したがって会社経営では、売上や利益などの事業面だけではなく、資金調達や資金繰りといった金融面もあわせて考える必要があります。

金融と経済の違いがわかるとニュースも理解しやすくなる

金融と経済の違いは、専門家だけが知っていればよい知識ではありません。

例えばニュースで、

「金利が上昇した」

「物価が上昇した」

「個人消費が増加した」

「設備投資が増加した」

といった話題を見たとします。

「金利」は金融と強く関係します。

「個人消費」や「設備投資」は経済活動そのものです。

そして金利の変化が個人消費や設備投資に影響することもあります。

金融と経済の関係を理解していると、それぞれのニュースを独立した出来事として見るのではなく、

「金融情勢の変化が経済にどのような影響を与えるのだろうか」

あるいは、

「現在の経済状況を受けて、金融政策はどのように変化するのだろうか」

という視点で考えられるようになります。

金融と経済という基本的な言葉を理解することは、日々のニュースを理解するための土台にもなるのです。

まとめ

「金融」と「経済」は、普段からよく耳にする言葉です。

しかし、あらためて違いを説明しようとすると、意外に難しい言葉でもあります。

簡単に整理すると、

経済とは、モノやサービスの生産・消費・取引などを含む社会の幅広い活動。

金融とは、資金を必要とする人や会社などと、資金を運用したい人などを結び付け、資金の調達・運用・決済などを行う仕組みや活動。

と考えるとわかりやすいでしょう。

金融は経済とは別の世界に存在するものではありません。

会社が商品を作るにも、設備投資をするにも、私たちが住宅を購入するにも、さまざまな場面でお金が必要になります。

その資金を必要なところへ円滑に動かしていく仕組みが、経済活動を支えています。

そのため、

「経済という大きな活動の中で、金融が資金面を支えている」

というイメージを持っておくと、2つの言葉の関係を理解しやすくなります。

「知っているつもりだったけれど、説明しようとすると難しい」。

金融や経済には、そのような言葉が数多くあります。

基本的な言葉の意味を一つずつ整理していくことで、金融・経済ニュースも、会社経営に関係する情報も、これまで以上に理解しやすくなるのではないでしょうか。

金融と経済は同じ意味ですか?

同じ意味ではありません。経済は、モノやサービスの生産・消費・取引などを含む幅広い活動を指します。一方、金融は、資金の調達・運用・決済など、お金の流れに関係する仕組みや活動を指します。

金融は経済の一部と考えてよいですか?

大きく捉えれば、金融は経済を構成する重要な仕組みの一つと考えるとわかりやすいでしょう。経済活動にはモノやサービス、労働などさまざまな要素があり、金融はその中で資金の流れを支える役割を担っています。

金融機関から融資を受けることだけが金融ですか?

いいえ。金融には融資だけでなく、預金、株式や債券による資金調達・運用、決済など、さまざまな仕組みが含まれます。

なぜ金利が変わると経済にも影響するのですか?

金利は会社や個人の借入れ、設備投資、住宅購入などに関係します。そのため、金利が変化すると、会社や個人の行動を通じて消費や投資などの経済活動に影響が及ぶことがあります。

金融と経済の違いを一言で表すとどうなりますか?

簡潔に表現するなら、「経済は生産・消費・取引などを含む幅広い活動、金融はその経済活動を資金面から支える仕組み」と整理するとわかりやすいでしょう。

参考・出典

・日本銀行「金融政策とは何ですか?」

・日本銀行「金融政策の概要」

・日本銀行「資金循環統計の概要」

・日本銀行「資金循環統計のFAQ」

・金融庁「金融庁の概要」

・金融庁「アクセスFSA 第268号」

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品への投資、資金調達その他の取引を推奨するものではありません。実際の判断にあたっては、個別の状況に応じて専門家等へご確認ください。本記事の情報を利用したことによって生じた損害については、責任を負いかねます。

記事執筆者

税理士 佐藤充宏
東京都江東区で税理士事務所及びファイナンスコンサルティング会社を経営している佐藤充宏と申します。

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