
ニュースなどで「来年度予算の概算要求」「各省庁の概算要求が出そろった」といった言葉を目にすることがあります。
2026年9月4日には、財務省から2027年度(令和9年度)の各省各庁の一般会計概算要求・要望額等が公表されました。
公表資料によると、2027年度の一般会計について、各省庁から提出された概算要求額は128兆967億円、要望額は2兆7,959億円、「『強く豊かな日本』投資枠」は12兆1,730億円で、これらを合わせた金額は143兆656億円となっています。
非常に大きな金額ですが、ここで注意したいのが、「概算要求額=実際の予算額」ではないという点です。
概算要求は、各省庁が翌年度に必要と考える政策や事業について、予算編成に向けて要求・要望する段階です。その後、財務省による査定などを経て政府の予算案が作成され、さらに国会で審議されます。
では、そもそも「概算要求」とはどのような仕組みなのでしょうか。
今回は、2027年度予算の概算要求を題材として、概算要求の意味や概算要求基準、政府予算案ができるまでの流れ、概算要求を見る際のポイントなどについてわかりやすく解説します。

目次
概算要求とは?
概算要求とは、各省庁が翌年度に実施する政策や事業に必要となる経費について、財務省へ要求・要望する予算編成上の手続きです。
国の予算は、ある日突然決まるものではありません。
翌年度にどのような政策を実施するのか、そのためにいくら必要なのかを各省庁が検討し、その内容を財務省へ提出します。
例えば、厚生労働省であれば社会保障などに関係する予算、国土交通省であれば社会資本整備などに関係する予算、文部科学省であれば教育・科学技術などに関係する予算を要求することになります。
財務省の資料によると、2027年度予算については、2026年7月30日に「令和9年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」が閣議了解され、要求・要望の期限は8月末日とされました。
その後、2026年9月4日に各省各庁の概算要求・要望額等が財務省から公表されています。
つまり、概算要求は、
「各省庁が翌年度にこれだけの予算が必要です、と政府内の予算編成過程で示す段階」
と考えるとわかりやすいでしょう。
概算要求と予算は違う
概算要求を理解するうえで特に重要なのが、
概算要求額と最終的な予算額は同じではない
という点です。
各省庁が提出した概算要求が、そのまま翌年度の予算になるわけではありません。
概算要求の提出後には、財務省が各省庁から説明を受け、要求内容を精査する査定などの予算編成作業が行われます。
財務省の資料でも、翌年度予算について、8月末に各省庁から概算要求が提出され、その後、年末まで査定が行われ、12月に政府の予算案が取りまとめられる流れが説明されています。
したがって、
概算要求 → 査定等 → 政府予算案 → 国会審議 → 予算成立
という流れで考える必要があります。
ニュースで「概算要求が○兆円」と報道されても、「国が○兆円の支出を決定した」という意味ではありません。
ここは概算要求に関するニュースを見る際に注意したいポイントです。
「概算要求基準」とは?
各省庁が自由に好きなだけ予算を要求すると、予算編成が難しくなります。
そこで、政府は予算編成に先立ち、概算要求に関する基本的な方針を示します。
一般に「概算要求基準」や「シーリング」と呼ばれるものです。
2027年度予算については、2026年7月30日に概算要求に当たっての基本的な方針が閣議了解されています。
ただし、すべての経費について一律に同じ上限が設定されているわけではありません。
例えば2027年度の方針では、年金・医療等について、前年度当初予算額にいわゆる自然増3,900億円を加算した範囲内で要求するとされています。
また、「その他の経費」については、前年度当初予算に相当する額の範囲内で要求したうえで、その額の20%の範囲内で要望できる仕組みとなっています。
このように、概算要求には一定のルールが設けられています。
2027年度に設けられた「『強く豊かな日本』投資枠」とは?
2027年度の概算要求を見るうえで特徴的なのが、**「『強く豊かな日本』投資枠」**です。
政府は2027年度予算について、危機管理投資・成長投資をはじめ、国内投資を通じた潜在成長率の引上げにつながる施策を予見可能性を持って実施できるよう、通常歳出とは別に「『強く豊かな日本』投資枠」を設けました。
この投資枠については要求上限を設けず、事項要求を含めて所要額を適切に要求することとされています。
対象としては、日本成長戦略や地域未来戦略などを踏まえた政策が想定されており、財務省資料ではGX、AI・半導体などについても触れられています。
2026年9月4日に公表された各省各庁の集計では、この「『強く豊かな日本』投資枠」は12兆1,730億円となっています。
ただし、これも最終的な予算額ではありません。
今後の予算編成過程において内容が精査されます。
2027年度の概算要求はどのくらい?
2026年9月4日に財務省が公表した2027年度一般会計の概算要求・要望額等は、次のようになっています。
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 概算要求額 | 128兆967億円 |
| 要望額 | 2兆7,959億円 |
| 「『強く豊かな日本』投資枠」 | 12兆1,730億円 |
| 合計 | 143兆656億円 |
これに対して、比較対象として財務省資料に掲載されている前年度予算額(当初)は122兆3,092億円です。
したがって、今回の要求・要望等の合計は、前年度当初予算額と比べて20兆7,564億円大きい金額となっています。
ただし、単純に「来年度の予算が約20.8兆円増える」と考えるのは適切ではありません。
今回の数字はあくまでも概算要求・要望等を集計した段階のもので、今後の査定などを経て予算案が作られるためです。
また、財務省資料には、各省庁からの要求・要望・「『強く豊かな日本』投資枠」の金額をそのまま集計したものであり、精査の結果、金額が変動することがある旨も明記されています。
どの省庁の要求額が大きい?
2027年度の概算要求等を見ると、省庁によって金額には大きな違いがあります。
例えば、国債費を除いた各省各庁等の要求・要望等の「計」を見ると、厚生労働省は36兆5,803億円、総務省は21兆9,171億円、国土交通省は8兆9,591億円、文部科学省は8兆7,750億円となっています。
また、防衛省は8兆8,432億円です。
ただし、各省庁が担当する政策分野や経費の性質は異なりますので、金額の大小だけで単純に重要性を比較することはできません。
社会保障関係の支出を多く所管する省庁と、特定の行政分野を担当する省庁とでは、そもそもの予算構造が異なるためです。

国債費の概算要求にも注目
2027年度の概算要求では、国債費にも注目しておきたいところです。
財務省所管の2027年度一般会計概算要求では、国債費は36兆6,386億円となっています。
2026年度当初予算の31兆2,758億円と比べると、5兆3,628億円の増加です。
その内訳を見ると、
- 債務償還費 20兆25億円
- 利子及割引料 16兆5,888億円
- 国債事務取扱費 473億円
となっています。
特に「利子及割引料」は、前年度当初予算の13兆371億円から16兆5,888億円となり、3兆5,516億円増加しています。
国債費は、過去に発行した国債の償還や利払いなどに必要となる経費です。
そのため、国債残高だけでなく、金利の動向も国の財政を考えるうえで重要になります。
金利が上昇すると、既発債の利払いが一斉に同じ割合で増えるわけではありませんが、新たに発行・借り換えされる国債などを通じて、時間をかけて国債費に影響していく可能性があります。
この点は、会社経営における借入金と金利の関係にも通じる部分があります。
概算要求から予算成立までの流れ
国の予算は、おおむね次のような過程を経て編成・審議されます。財務省資料では、概算要求提出後、各省庁からの説明聴取や査定を経て、政府予算案が取りまとめられ、その後国会で審議される流れが示されています。
① 概算要求に関する方針の決定
↓
② 各省庁が概算要求を作成・提出
↓
③ 財務省による説明聴取・査定等
↓
④ 政府予算案の取りまとめ・閣議決定
↓
⑤ 国会へ予算案を提出
↓
⑥ 国会で審議
↓
⑦ 予算成立
2027年度については、2026年7月30日に概算要求に関する基本的な方針が閣議了解され、8月末が要求・要望期限とされました。
そして9月4日に、各省各庁の概算要求・要望額等が公表されています。
つまり、2026年9月4日時点では、2027年度予算の編成作業はまだ途中ということになります。
なぜ財務省による査定が必要なのか?
各省庁には、それぞれ実現したい政策があります。
一方、国が使える財源には限りがあります。
すべての要求をそのまま認めれば、必要となる財源が膨らむ可能性があります。
そこで、概算要求後の予算編成過程では、各政策の必要性、優先順位、金額などが検討されます。
2027年度の概算要求に当たっての基本方針でも、歳出全般について施策の優先順位を洗い直し、予算の中身を重点化するとされています。また、補助金・基金についても自己点検結果を要求・要望に反映し、予算編成過程で精査する方針が示されています。
概算要求は「各省庁が必要だと考える金額を示す段階」、その後の予算編成は「政府全体として優先順位や財源とのバランスを考え、具体的な予算案へまとめていく段階」と捉えるとわかりやすいでしょう。
「事項要求」とは?
概算要求に関連して、「事項要求」という言葉が出てくることがあります。
事項要求とは、予算編成段階で具体的な金額を示さず、必要な政策・事項を要求し、その金額については予算編成過程で検討する方法です。
2027年度の基本方針では、「『強く豊かな日本』投資枠」について、要求上限を設けず、事項要求も含めて所要額を適切に要求するとされています。
また、当初予算で措置する必要のある恒常的な施策などの重要政策についても、必要に応じて事項のみの要求を含めて適切に要求・要望し、予算編成過程で検討するとされています。
したがって、概算要求の集計額だけを見ても、翌年度に必要となる予算のすべてを完全に把握できるとは限りません。
これも概算要求の数字を見る際に知っておきたいポイントです。

会社の予算と比較すると理解しやすい
国の予算編成は、会社の予算編成と完全に同じものではありませんが、イメージとして比較すると理解しやすくなります。
例えば、複数の部署を持つ会社で、経営企画部門が各部署に翌年度の予算案を提出してもらうケースを考えてみましょう。
営業部門が「広告費として5,000万円必要」、システム部門が「システム更新に1億円必要」、管理部門が「人件費として3億円必要」と申請したとします。
しかし、会社全体の資金には限りがあります。
そこで経営者や財務担当者が、
「本当に今年実施する必要があるのか」
「金額を抑えることはできないか」
「他の事業を優先した方がよいのではないか」
といった観点から検討し、最終的な会社予算を決定します。
国の場合も制度や手続きは異なりますが、各省庁から出された要求がそのまま予算になるのではなく、予算編成過程で精査されるという点を押さえておくと、概算要求を理解しやすくなります。
会社経営者が概算要求に注目する意味
概算要求は国の話なので、中小会社の経営とは関係がないように感じるかもしれません。
しかし、概算要求を見ると、政府が翌年度にどの分野へ政策資源を配分しようとしているのかを知る手掛かりになります。
例えば、
DX・AI、半導体、GX、中小会社支援、地域経済、研究開発、人材育成など、自社の事業に関係する政策が概算要求に盛り込まれている場合、その後の予算編成や具体的な制度設計を追うことで、翌年度の政策の方向性を把握しやすくなります。
ただし、概算要求に盛り込まれたからといって、その政策が必ず予算化されたり、補助金などの制度として実施されたりするとは限りません。
「概算要求に入った=制度の実施が決定した」ではない
という点には注意が必要です。
概算要求のニュースを見るときの3つのポイント
概算要求に関するニュースを見る際には、特に次の3点を確認すると理解しやすくなります。
1つ目は、「要求額なのか、決定額なのか」です。
概算要求の段階では、まだ最終的な予算ではありません。
2つ目は、「前年度からなぜ増減したのか」です。
単に金額を見るだけではなく、社会保障、国債費、物価・賃金、政策変更など、増減の背景を見ることが重要です。
3つ目は、「今後の予算編成でどう変わるのか」です。
概算要求が出た後、査定などを経て政府予算案が作成されます。
したがって、概算要求のニュースは一度見て終わりではなく、その後の政府予算案、さらに国会で成立した予算まで追うことで、実際にどの政策へどれだけの予算が配分されたのかが見えてきます。

まとめ
概算要求とは、各省庁が翌年度に必要と考える政策や事業の経費について、財務省へ要求・要望する予算編成上の手続きです。
2027年度の一般会計について、2026年9月4日に公表された概算要求額は128兆967億円、要望額は2兆7,959億円、「『強く豊かな日本』投資枠」は12兆1,730億円で、合計143兆656億円となっています。
しかし、この143兆656億円が、そのまま2027年度予算になるわけではありません。
今後、財務省による査定などの予算編成作業を経て政府予算案がまとめられ、国会での審議へと進んでいきます。
概算要求を見る際には、金額の大きさだけを見るのではなく、
「政府が翌年度にどのような政策を重視しようとしているのか」
という視点で見ることも大切です。
特に会社経営者にとっては、中小会社支援、設備投資、DX、GX、人材育成など、自社に関連する政策の方向性を早い段階から把握する材料にもなります。
2027年度予算についても、今回の概算要求が今後の予算編成を経てどのように変化していくのか、引き続き注目しておきたいところです。
各省庁が翌年度に実施する政策や事業について、必要と考える経費を財務省へ要求・要望する予算編成上の手続きです。
いいえ。概算要求後に財務省による査定などの予算編成作業が行われ、政府予算案が作成されます。その後、予算案が国会へ提出され、審議を経て予算が成立します。
2026年9月4日に財務省が公表した一般会計の集計では、概算要求額128兆967億円、要望額2兆7,959億円、「『強く豊かな日本』投資枠」12兆1,730億円で、合計143兆656億円です
各省庁が翌年度予算を要求する際の基本的なルールです。2027年度については、2026年7月30日に「令和9年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」が閣議了解されています。
翌年度に政府が重視しようとしている政策分野を把握する材料になります。ただし、概算要求に盛り込まれた政策がそのまま予算化・制度化されるとは限らないため、その後の政府予算案や成立予算、具体的な制度内容まで確認する必要があります。
免責事項
本記事は、2026年9月4日時点で公表されている財務省等の資料に基づき、国の予算及び概算要求について一般的な情報提供を目的として作成したものです。今後の予算編成、国会審議その他の事情により内容が変更される場合があります。本記事の情報を利用したことにより生じた損害については、責任を負いかねます。個別の判断にあたっては、最新の政府公表資料等をご確認ください。





