
目次
1. はじめに
現在、米国の関税強化という通商政策に対する日本の対応が注目を集めています。
特に、米国経由での仕入や米国市場向けの輸出を行う企業では、その影響がすでに顕在化し始めています。
そこで、今回は、仕入コストの可視化・価格転嫁の実務対応・為替との複合的戦略について整理します。
2. 内容
■ 調達コストの上昇とその見える化
・調達品目に含まれる米国原産品や中間部材は、ベース関税+相互関税合計パーセント相当の関税がかかる可能性があります。
・関税対象品目の洗い出しと、HSコードベースでの関税率確認が最優先です。
・原価における関税負担比率を可視化するため、例えば、「原価構成中10%」だった品目が、今後さらに割合が
跳ね上がった場合の試算を、社内でグラフ化・表化して共有することが必要です。
そして、特に、複数サプライヤーが存在する業種では、国別調達比率を再評価し、各国との調達比率を見直す検討も効果的です。
■ 価格転嫁の現実と“転嫁できない場合”の対応
中小企業が単純に価格転嫁できるケースは限られています。
そこで、以下のような段階的説明と説得材料が鍵となります。
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「対象商品において、関税率が上昇予定であること」(外的要因の明示)
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「総原価における関税分がどれだけ増えたか」を図解入りで理解してもらう
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**値上げに見合う付加価値(例:納期の短縮、品質強化、サービス面の差別化)**を提示します。 転嫁が困難な場合は、限定販売・受注制限や利益確保を優先した数量戦略も視野に入れて判断すべきです。
■ 為替と併せて考えるリスク管理
現在、円安進行が継続しているため、輸入時の為替差損と関税負担のダブルコストのリスクが深刻化しています。
そこで、為替予約の活用により、将来の輸入時レートを固定しコスト変動リスクを制御する方法を検討するのも必要です。
また、**仕入通貨と販売通貨を一致させる(ナチュラルヘッジ)**ことで、相対的な為替リスクの軽減も可能です。
そして、為替と関税の複合シミュレーションを社内で可視化して情報共有し、総原価の変動に対する意思決定材料とすることが重要です。
3. まとめ
米国の関税強化という通商政策に対する日本の対応が注目を集めています。
なお、この政策変動は、一過性ではなく、中長期にわたって企業収益構造に影響を与える可能性が高いと考えられている部分もあります。
そのため、中小企業には、「関税コストを正確に読み解く力」と「価格転嫁を実現する力」が必要とされるため、
調達・価格戦略・為替管理・経営判断を統合して、影響を可視化して社内共有した上で事業戦略を策定できるようにしましょう。