
目次
1. はじめに
金融機関から借入を行う際、「金利が高い」「もっと金利を下げられないか」といった悩みをお持ちの経営者や経理担当者の方は少なくありません。
しかし、提示された金利の“内訳”や“決定の背景”をきちんと理解している方は、実は多くないのが実情です。
なぜ、同じような規模・業種の会社でも金利に差が出るのか──
その鍵を握っているのが
「リスクプレミアム」
という考え方と、
金融機関による
「融資審査」
のプロセスです。
今回は、金融機関がどのようにして金利を設定しているのか、そして、リスクプレミアムがどのように関係しているのかを
わかりやすく解説し、実際の業務に活かせる内容でお届けします。
2. 内容
■ 金利はどう構成されているか
金融機関が会社に提示する貸出金利は、概して、以下のような要素で構成されています。
-
基準金利(ベース金利)
→ 金融機関が資金を調達するコストに基づく。例:短期プライムレート等。 -
リスクプレミアム
→ 借り手である会社の信用リスクに応じて上乗せされる部分。 -
その他(管理費用・利益マージン等)
→ 担当者の人件費や管理コストなど。
下図は、仮に「金利2.0%」が提示された場合の構成イメージです。
構成要素 | 金利(%) |
---|---|
基準金利 | 0.5% |
リスクプレミアム | 1.2% |
管理費用 | 0.3% |
合計 | 2.0% |
この中で、会社ごとに差が出るのが、
「リスクプレミアム」
です。
■ リスクプレミアムとは
リスクプレミアムとは、金融機関が「貸し倒れの可能性がある」と見込んだ場合、
そのリスクに見合う対価として金利に上乗せする部分です。
つまり、返済能力が高いと判断された会社ほど金利が低くなり、返済不能のリスクが高い会社は金利が高くなります。
■ リスクプレミアムに影響を与える要素
リスクプレミアムを構成するのは、主に以下の5つとされています。
-
財務内容の健全性
- 自己資本比率
- 債務超過の有無
- 直近3期の損益状況 -
キャッシュフローと資金繰り
- 実際に返済に充てられる現金が確保されているか -
経営者の資質と信頼性
- 経営経験、対話姿勢、情報開示の丁寧さはどのようになっているのか -
担保や保証の有無
- 保証協会付きか、第三者保証か、無担保か -
業種や経済環境
- 景気の影響を受けやすい業種なのか、競合状況はどうなのか
これらを総合的に判断し、金融機関は
「信用格付け(スコアリング)」
を行います。
■ 金融機関のスコアリングとは
金融機関では、会社ごとの与信リスクを
「スコア」
で数値化しています。
このスコアが高い会社には低い金利が、逆にスコアが低い会社には高い金利が提示されます。
スコアリングモデルは非公開ですが、一般に以下のような指標が使われます。
営業利益率
売上高の増減率
ROA・ROE
自己資本比率
借入金依存度 等
■ 金利交渉のタイミングと進め方
「黒字になった」「資金繰りが安定した」等、客観的な改善があれば、
金融機関と金利見直しの相談ができる場合があります。
なお、交渉の際は、次の資料を提示して、改善事項を説明する事が求められる場合があります。
・最新の試算表(月次)
・資金繰り表(6か月~1年分)
・事業計画書や業績改善報告書 他
「何を、どう改善したか」を数字等で説明できれば、リスクプレミアムを下げてもらえる可能性がありますが、
金融機関によって対応が異なるので、個別に確認が必要です。
3. まとめ
金融機関が設定する金利は、「単なる数字」ではありません。
それは、会社に対する“信用の評価”であり、リスクへの対価でもあります。
金利の構造とリスクプレミアムの考え方を理解することで、金融機関との関係をより戦略的に構築できるようになります。
ぜひ、定期的に財務の見直しや情報開示の工夫を行い、自社の信用力を高めていきましょう。