
ニュースを見ていると、「原油のCIF価格」「輸入品のCIF価格」といった言葉を目にすることがあります。
CIF価格は、海外から商品を輸入するときの価格を理解するうえで重要な考え方です。
単純な商品そのものの価格ではなく、基本的には商品代金に加えて、輸送にかかる運賃や保険料を含めた価格を意味します。
そのため、海外の商品そのものの価格が変わっていなくても、海上運賃が上昇したり、為替が円安になったりすれば、日本円で見た輸入価格が上昇することがあります。
また、日本の貿易統計では、原則として輸出はFOB価格、輸入はCIF価格で集計されています。
輸入額や資源価格などのニュースを正しく理解するためにも、CIF価格が何を含んでいる価格なのかを知っておくことは大切です。
今回は、CIF価格の基本からFOB価格との違い、為替や運賃との関係、関税・輸入消費税を見る際の注意点まで、できるだけわかりやすく解説します。

目次
CIF価格とは
CIFは、
- Cost
- Insurance
- Freight
の頭文字を取った言葉です。
日本語では一般に「運賃・保険料込み価格」などと説明されます。
基本的なイメージは、
CIF価格=貨物代金+保険料+運賃
です。
税関でも、CIF価格について貨物代金、貨物運賃、貨物保険料を合計した価格として説明しています。
たとえば海外から商品を輸入するとき、
商品代金 100万円
保険料 2万円
運賃 10万円
だったとします。
単純化すると、
100万円+10万円+2万円=112万円
となり、この112万円がCIF価格を考えるときの基本的なイメージになります。
つまり、「海外で商品をいくらで買ったのか」だけを見るのではなく、日本などの目的地まで運ぶための運賃や保険料も含めて考える価格です。
CIF価格を知っておくと輸入価格のニュースがわかりやすくなる
CIF価格を理解しておくと、「輸入価格が上昇した」というニュースの見方が変わってきます。
輸入価格が上昇する理由は、商品そのものの価格上昇だけとは限りません。
たとえば、
- 原油や天然ガスなどの商品価格が上昇した
- 海上運賃が上昇した
- 保険料が上昇した
- 円安が進んだ
といった複数の要因によって、日本円で見た輸入額が増えることがあります。
特に日本は、原油や天然ガスをはじめ、さまざまな資源や商品を海外から輸入しています。
そのため、輸入価格を見る場合には「海外の商品価格」だけではなく、「輸送コスト」や「為替」も重要になります。
日本の輸入統計は原則としてCIF価格
CIF価格を知るうえで特に重要なのが、日本の貿易統計との関係です。
財務省・税関が公表する貿易統計では、通常、
輸出:FOB価格
輸入:CIF価格
で集計されています。
したがって、ニュースで日本の「輸入額」が報道されている場合、基本的には商品そのものの価格だけを合計しているわけではありません。
輸入の場合には、運賃や保険料を含んだCIF価格が基礎となっています。
ここは輸出額と輸入額を比較するときにも知っておきたいポイントです。
CIF価格とFOB価格の違い
CIFとあわせてよく出てくる言葉が「FOB」です。
FOBは「Free On Board」の略です。
税関の説明では、FOB価格について貨物代金のみの価格として示される例があります。一方、CIF価格には貨物代金だけでなく、運賃と保険料が含まれます。
非常に単純化すると、
FOB価格=貨物代金を中心とした価格
CIF価格=貨物代金+運賃+保険料
という違いがあります。
たとえば、
FOB価格 100万円
保険料 2万円
運賃 10万円
であれば、
CIF価格=112万円
というイメージです。
この違いを知っておくと、なぜ日本の輸出統計と輸入統計で価格の基準が異なるのかも理解しやすくなります。
ただし、実際の貿易取引では、Incoterms(インコタームズ)という国際的な貿易条件が関係します。
CIFは単なる「価格の計算方法」だけではない
CIFは「商品代金+保険料+運賃」と覚えるとわかりやすいのですが、実際の国際取引では、それだけでは十分ではありません。
CIFは国際商業会議所(ICC)が定めるIncotermsの一つでもあります。
Incoterms 2020におけるCIFでは、売主は指定された仕向港までの運送契約を手配して運賃を負担し、さらに一定の貨物保険を手配します。
一方で、貨物の滅失・損傷に関する危険が売主から買主へ移転する時点は、「目的地に到着したとき」ではありません。
CIF条件では、原則として積出港で貨物が本船上に置かれた時点で、貨物の滅失・損傷に関する危険が売主から買主へ移転します。
つまり、
費用を誰が負担するか
と
貨物の危険を誰が負担するか
は、必ずしも同じ地点で切り替わるわけではありません。
ここはCIFを理解する際に注意したいポイントです。
なお、ICCのIncoterms 2020では、CIFは海上・内陸水路輸送に用いる規則とされています。コンテナ輸送などで貨物を本船積込み前に運送人へ引き渡す取引では、取引条件に応じてCIPなど別の規則を検討することがあります。
円安になるとCIF価格はどう見えるのか
輸入価格のニュースを見る場合、為替相場も重要です。
たとえばCIF価格が1万ドルの貨物を輸入するとします。
1ドル=100円であれば、
1万ドル×100円=100万円
です。
一方、
1ドル=150円になれば、
1万ドル×150円=150万円
となります。
ドル建てのCIF価格がまったく変わらなかったとしても、日本円に換算した価格は50万円増えます。
つまり円安になると、外国通貨建ての価格が変わらなくても、日本円で見た輸入価格が上昇することがあります。
反対に、円高になれば、日本円換算した輸入価格には低下方向の影響が生じます。
もちろん、実際の輸入価格は商品市況や契約条件などさまざまな要因によって決まるため、「円安になれば必ず同じ割合だけCIF価格が上昇する」という意味ではありません。
あくまで為替は、円換算額を動かす重要な要因の一つです。

税関で使用する為替レートにもルールがある
輸入申告における課税価格を外国通貨から日本円へ換算する場合、会社が任意の為替レートを使うわけではありません。
税関では、課税価格の換算に使用する外国為替相場を公示しています。
税関によれば、原則として輸入申告の日が属する週の前々週における実勢外国為替相場の当該週間平均値を基にした相場が使用されます。
そのため、
「ニュースで見た現在のドル円相場」
と
「輸入申告で使用される換算相場」
が必ず一致するわけではありません。
輸入実務では、この点も区別して考える必要があります。
海上運賃が上昇するとCIF価格にも影響する
CIF価格にはFreight、つまり運賃が含まれています。
したがって、貨物自体の価格が変わらなくても、国際的な物流費が上昇すればCIF価格が上昇する可能性があります。
たとえば、
商品代金 100万円
保険料 2万円
運賃 10万円
なら、
CIF価格=112万円
です。
ところが海上運賃が10万円から30万円へ上昇すれば、
100万円+2万円+30万円=132万円
となります。
商品の仕入価格そのものは100万円で変わっていなくても、CIF価格は20万円増加しています。
世界的な物流の混乱、船舶需給、燃料費の上昇などによって輸送費が大きく動く局面では、この点が輸入価格を見るうえで重要になります。
CIF価格と関税の関係
輸入する会社にとっては、CIF価格と関税の関係も重要です。
税関の説明では、輸入貨物の課税価格は、基本的には輸入取引において実際に支払った、または支払われる価格に、一定の運賃その他の加算要素を加えて計算します。
そして、輸入貨物の価格を基準にして計算する従価税の場合には、課税価格に関税率を乗じることが関税額計算の基本となります。
たとえば、単純化して、
課税価格 100万円
関税率 5%
とすれば、
100万円×5%=5万円
となります。
ただし、すべての商品について「CIF価格×関税率」で計算されるわけではありません。
品目によっては従量税が適用される場合や、異なる計算方法が用いられる場合があります。
また、適用される税率は商品の種類、原産地、EPAなどの適用関係によっても異なります。
「CIF価格=必ず課税価格」ではない
ここは特に誤解しやすい部分です。
一般的な説明では、
「関税はCIF価格を基準に計算する」
と表現されることがあります。
大まかな理解としてはわかりやすいのですが、もう少し慎重に考える必要があります。
東京税関は、輸入申告で申告する価格は関税定率法の所定の規定により計算される課税価格であり、仕入書にCIFと表示された価格が必ずそのまま正しい課税価格になるわけではないと説明しています。
たとえば、
- インボイスとは別に支払う金額がある
- 買手が負担する一定の手数料がある
- 無償で提供した材料などがある
- 特許権や商標権などに関する一定の使用料がある
- 売手に帰属する収益がある
といった場合には、関税評価上の加算要素に該当する可能性があります。
したがって、
CIFという取引条件
インボイスに記載されているCIF価格
関税計算に使用される課税価格
は、必ずしも常に同じ金額になるとは限りません。
輸入実務では非常に重要な違いです。

CIF価格と輸入消費税の関係
輸入時には関税だけでなく、消費税・地方消費税が課税される場合があります。
ここでも「CIF価格だけに消費税率を掛ければよい」と考えるのは正確ではありません。
輸入貨物に対する消費税は、原則として関税の課税価格に関税額や消費税以外の個別消費税の額などを加えた金額を基礎として計算します。
したがって、単純化したイメージでは、
課税価格
+関税
+消費税以外の個別消費税の額 等
を基礎として輸入消費税を計算することになります。
また、保税地域から引き取られる飲食料品のうち一定のものについては軽減税率が適用される場合があり、商品によって扱いが異なります。
実際の輸入税額を計算する場合には、商品の品目分類や税率、原産地、各種制度の適用関係を個別に確認する必要があります。
CIF価格が上昇する主な要因
ここまでを整理すると、CIF価格に影響する代表的な要因として次のようなものがあります。
商品価格
原油、天然ガス、穀物、金属など国際商品市況が上昇すれば、貨物代金そのものが上昇し、CIF価格を押し上げる要因になります。
運賃
海上運賃などが上昇すれば、Freight部分が増えるため、CIF価格にも上昇方向の影響があります。
保険料
輸送に伴う貨物保険料が上昇した場合には、Insurance部分が増えることになります。
為替相場
外貨建てのCIF価格が変わらなくても、円安になれば日本円換算額が増加する場合があります。
このように「輸入価格が上がった」という一つの結果にも、複数の原因が考えられます。
CIF価格を見るときは「何が上がったのか」を考える
経済ニュースで輸入価格の上昇が報じられた場合には、単に「海外の商品が値上がりした」と考えるのではなく、
「商品価格が上がったのか」
「運賃が上がったのか」
「円安の影響なのか」
「複数の要因が重なったのか」
という視点で見ると、ニュースをより深く理解できます。
特に原油や天然ガスなどは、国際的な商品価格と為替の両方から影響を受けます。
ドル建て価格が上昇し、さらに円安が進めば、日本円で見た輸入負担がより大きくなる可能性があります。
反対に、ドル建ての商品価格が上昇していても、円高が進めば円換算額への影響が一部緩和されることも考えられます。
会社経営にも関係するCIF価格
CIF価格は貿易実務だけの専門用語ではありません。
海外から原材料や商品を仕入れている会社にとっては、仕入コストや利益率、販売価格、資金繰りにも関係してきます。
たとえば円安や海上運賃の上昇によって輸入コストが上がった場合、会社としては、
- 販売価格を見直す
- 仕入先を見直す
- 発注数量を調整する
- 在庫水準を見直す
- 為替変動への対応を検討する
- 粗利益率や資金繰りへの影響を確認する
といった対応を検討することになります。
CIF価格は経済ニュースを読むための用語であると同時に、輸入を行う会社にとっては実際の経営判断にも関係する価格といえます。
まとめ
CIF価格とは、基本的に、
貨物代金(Cost)+保険料(Insurance)+運賃(Freight)
を含む価格です。
日本の貿易統計では、原則として輸出はFOB価格、輸入はCIF価格で集計されています。
そのため輸入額や輸入価格を見る場合には、商品そのものの価格だけでなく、運賃や保険料が含まれていることを理解しておく必要があります。
さらに、日本円で輸入額を見る場合には為替相場も大きく影響します。
CIF価格を理解しておけば、
「商品価格が上がったのか」
「輸送費が上がったのか」
「円安によって円換算額が増えたのか」
というように、輸入価格上昇の背景を分けて考えやすくなります。
一方で、関税実務では、インボイスに記載されたCIF価格がそのまま必ず課税価格になるわけではありません。
別払金や一定の加算要素などがある場合には、関税定率法に基づいて課税価格を計算する必要があります。
経済ニュースを読む場合にはまず「商品代金・保険料・運賃を含む価格」という基本を押さえ、実際の輸入取引や税額計算については、さらに関税評価や品目分類などを確認することが大切です。
CIF価格は、基本的に貨物代金(Cost)、保険料(Insurance)、運賃(Freight)を含む価格です。海外から貨物を輸入する場合の価格を表す際などに使用されます。
基本的な違いは、CIF価格には貨物代金に加えて運賃と保険料が含まれるのに対し、FOB価格ではそれらを含めない点です。日本の貿易統計では、原則として輸出はFOB価格、輸入はCIF価格で集計されています。
外貨建てのCIF価格が同じであっても、円安になれば日本円へ換算した金額は増加する可能性があります。ただし、実際の価格は商品市況、運賃、契約条件など複数の要因によって決まります。
従価税では課税価格に関税率を掛けることが基本ですが、インボイスに記載されたCIF価格が必ずそのまま課税価格になるとは限りません。別払金など一定の加算要素がある場合には、関税評価上の調整が必要になることがあります。また、品目によっては従量税など異なる課税方式もあります。
CIF価格そのものに日本の輸入消費税が含まれているという意味ではありません。輸入消費税は、原則として関税の課税価格に関税額や一定の内国消費税額などを加えた金額を基礎として計算します。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的として作成しています。関税、輸入消費税、関税評価、貿易条件その他の取扱いは、貨物の種類、取引条件、契約内容等によって異なる場合があります。また、制度や取扱いは変更される可能性があります。実際の輸入取引や税額計算等を行う場合には、最新の税関その他の公的機関の情報をご確認ください。本記事の情報を利用したことにより生じた損害については、責任を負いかねます。
主な出典
税関「関税評価について」
関税評価について(税関)
東京税関「申告するべき価格」
関税評価・申告価格に関する資料(東京税関)
税関「申告価格の計算方法」
申告価格の計算方法(税関)
税関「外国為替相場(課税価格の換算)」
外国為替相場(課税価格の換算)(税関)
大阪税関「貿易統計」
大阪税関管内の貿易統計
International Chamber of Commerce「Incoterms® 2020」
ICC Incoterms 2020 CIF rules




