
目次
はじめに
海外旅行や海外出張の航空券を購入した際、明細の中に「国際観光旅客税」や「旅客施設使用料」という項目を見かけたことはありませんか。
どちらもチケット代金に上乗せされており、「これは税金なのか?」「どこに使われているのか?」と疑問を持つ方も多いでしょう。
実は、この2つの金額には明確な根拠と目的があります。
**国際観光旅客税は“国の税金”**であり、**旅客施設使用料は“空港管理会社が定める使用料”**です。
同じように航空券に含まれていても、法的性格も使い道もまったく異なります。
本記事では、令和7年(2025年)10月現在の最新制度に基づき、
国際観光旅客税と旅客施設使用料の仕組み、違い、そして経理処理上の注意点を正確に解説します。

国際観光旅客税とは?
1. 制度の概要
国際観光旅客税は、2019年(平成31年)1月7日から施行された日本の国税です。
日本から航空機または船舶で出国するすべての人に対し、1回の出国につき1,000円が課されます。
日本人・外国人を問わず、観光・出張など目的も関係ありません。
非課税となるのは以下の場合です。
- 航空機により本邦に入国後2 4時間以内に本邦から出国する一定の乗継旅客
- 天候その他やむを得ない理由により本邦に寄港した国際船舶等に乗船等していた一定の者
- 2歳未満の者
2. 使い道
この税金は、観光先進国実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図るための財源を確保するために設けられました
観光庁の説明によると、主な使途は次のとおりです。
- ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備
- 我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化
- 地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上
なお、この税金は、航空券購入とあわせて支払い、航空会社等が国に納付します。
そして、この国際観光旅客税は消費税の課税対象外です。
旅客施設使用料とは?
1. 制度の位置づけ
旅客施設使用料(Passenger Service Facility Charge/PSFC)は、**税金ではなく、空港施設を利用する際の使用料**です。
空港管理会社(例:成田国際空港株式会社、東京国際空港ターミナル株式会社など)が、旅客の利便性・安全性を維持するために徴収します。
航空券代金とあわせて支払い、航空会社が空港管理会社に代わって徴収します。
なお、各空港・ターミナルで金額が異なり、国土交通省の認可を得て設定されています。
2. 使用料の使い道
徴収された使用料は、例えば、次のような費用に充てられます。
- ターミナルビル、搭乗橋、手荷物検査設備などの維持管理費
- 清掃・空調・照明など運営に関する経費
- バリアフリー化、感染症対策、省エネ改修
- 出入国管理設備・保安体制の強化

国際観光旅客税と旅客施設使用料の違い
区分 | 国際観光旅客税 | 旅客施設使用料 |
---|---|---|
性質 | 国税 | 空港使用料 |
根拠 | 国際観光旅客税法 | 各空港の旅客取扱約款等(国交省認可) |
徴収主体 | 国(航空会社経由) | 各空港運営会社 |
金額 | 一律1,000円 | 数百円~(空港ごとに異なる) |
使い道 | 観光・出入国円滑化施策等 | 空港施設の運営・改修費等 |
消費税の扱い | 対象外 | 課税・対象外の場合あり |
経理実務での取扱い
1. 勘定科目の整理
航空券代金に含まれる出国税や使用料は、一般的に「旅費交通費」で処理する事が多いです。
ただし、領収書・明細に内訳が表示されるので、経費精算書に添付し、内容が分かるようにしておく必要があります。
2. 消費税処理の注意点
- 国際観光旅客税:消費税対象外
- 日本の空港で徴収される旅客施設使用料(国内・国際とも):消費税課税(10%)
- 海外の空港で徴収される旅客施設使用料・現地諸税:日本の消費税対象外
そのため、空港会社が「適格請求書」や「適格簡易請求書」を発行している場合には、保存をしておきましょう。
参考までに、こちらが、⽇本空港ビルデング株式会社、東京国際空港ターミナル株式会社が公開している、旅客取扱施設利⽤料(PSFC)の適格簡易請求書です。
3. 明細例
航空券代金 ~円
国際観光旅客税 ~円
旅客施設使用料(羽田) ~円
保安サービス料(成田) ~円
燃油サーチャージ ~円
合計 ~円
このように複数の支払いが加算されているため、経理上は内容に応じて処理を分けるのが一般的です。

まとめ
「国際観光旅客税」と「旅客施設使用料」は、同じ“出国時に支払う金額”でも性質はまったく異なります。
前者は国の税金、後者は空港管理会社の設定する施設使用料です。
どちらも航空券購入時にあわせてしはらい、日本の空港・観光インフラの維持等に役立っています。
経理担当者の方は、空港管理会社が「適格請求書」や「適格簡易請求書」を発行している場合には保存をし、消費税区分の違いを理解したうえで、内容に応じて正しい経理処理をしましょう。
※本記事は、国際観光旅客税法、消費税法、国税庁および各空港会社の公表資料等を基に執筆しています。
掲載内容は一般的な制度解説であり、特定の事案に対する税務判断・助言を行うものではありません。
本記事を利用した行為により生じた損害等について、当事務所は一切の責任を負いかねますので、実際の経理・税務処理等にあたっては、最新の法令・通達等をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。