
目次
1. はじめに
「関税って、どのくらいのコストになっているんだろうか」
輸出入ビジネスにおいて、仕入価格や為替レートは注目されがちですが、
“関税コスト”の見える化が後回しになっている場合があります。
しかも、関税は「仕入原価に含まれるもの」として処理されているだけで、
その内訳や金額の変動要因を把握できていないと、
財務戦略や利益管理、原価分析にズレが生じるリスクがあります。
そこで今回は、経理・財務の視点から「関税コストをどう見える化し、管理するべきか」について解説します。
輸出入取引のある企業にとって、実務で役立つ視点を整理しました。
2. 内容
■ なぜ“関税コスト”の見える化が必要なのか?
関税は、「取引コスト」であり、税率や対象品目、原産地などによって大きく異なります。
しかし、経理部門が仕入計上時に一括で「輸入代金+関税+輸送費」などを合算して処理している場合、
関税部分の内訳が埋もれてしまいがちです。
こうした点が、財務分析や戦略的意思決定を妨げる要因の一つになります。
■ 見える化ステップ①:関税情報の記録・分類
最初にすべき事は、関税情報の明細化です。
例えば、下記のような項目を作成・管理しておくことで、品目別・原産地別・税率別の影響等が分析できます。
分類 | 内容 |
---|---|
輸入品目 | HSコード、品名、原産国 |
関税額 | 実際に支払った関税金額 |
税率 | 通常税率・特恵税率・EPA等適用有無 |
輸入金額 | CIF価格(商品価格+運賃+保険料) |
通関日 | 関税の課税基準日として重要 |
そのため、これらをExcelやシステムに入力・集計する体制を整える事を検討しましょう。
■ 見える化ステップ②:会計処理上の“科目分離”
関税を「仕入原価」に一体化せず、別科目として管理することで、部門別や品目別の原価分析が容易になります。
(科目設定や経理処理方針の決定にあたっては、社内経理規程及び公認会計士・税理士等に事前に確認をお願いします。)
たとえば、以下のような仕訳です。
借方:仕入 1,000,000円
借方:支払関税 120,000円
借方:立替金(輸送費) 80,000円
貸方:買掛金 1,200,000円
【関税仕訳処理フローチャート例】
↑
※仕訳を正確に分解することで、後から集計・分析しやすくなります。
■ 見える化ステップ③:部門別・商品別原価に連動させる
関税の科目分離ができたら、次はそれを部門・商品単位の原価へ按分し、利益率・採算性分析に反映させましょう。
例)
商品カテゴリ | 輸入価格 | 関税額 | 関税負担率 |
---|---|---|---|
商品A | 1,000,000円 | 100,000円 | 10% |
商品B | 2,000,000円 | 80,000円 | 4% |
商品C(FTA適用) | 1,500,000円 | 0円 | 0% |
上記のように関税負担率を可視化することで、仕入戦略や販売価格設定の根拠が明確になります。
■ 実務で活用するための仕組みづくり
関税を定量的に管理するには、次のような社内整備が必要です。
-
関税情報のExcel台帳 or 管理ソフト
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会計処理ルールのマニュアル化
-
通関業者(乙仲)との情報連携フロー
-
関税データの定期モニタリング
このように、関税を「見える化」し、「管理できる情報資産」に変えることが重要です。
3. まとめ
関税は日々の取引に埋もれがちなコストですが、見過ごせば利益率等に影響を与えます。
そのため、きちんと区分・可視化し、データに基づく判断材料として活用することが重要です。