
目次
はじめに
会社経営において「資金繰り」を安定させることは、事業を継続するうえで最も重要なテーマのひとつです。売上や利益があっても、資金が不足すれば事業は立ち行かなくなります。その資金繰りに大きな影響を与えるのが金利の動向です。
新聞やニュースでは「短期金利が上昇」「長期金利が低下」といった表現が日常的に登場しますが、経営者や経理担当者にとっては「それが実務にどう関係するのか」が最も重要です。
本記事では、金融市場における短期金利と長期金利の違いを整理し、それぞれが会社の資金繰りにどのような影響を与えるのかを解説します。

金融市場と金利の基本
まず、イメージとして、金融市場とは「お金の余っている人」と「お金を必要とする人」をつなぐ場です。そのなかで金利は、お金を借りる人が払う“利用料”であり、貸す人にとっては“リターン”です。
金融市場ではさまざまな金利が存在しますが、大きく分けると短期金利と長期金利があります。
- 短期金利:1年未満の資金の貸し借りに適用される金利
- 長期金利:1年以上の資金の貸し借りに適用される金利
金融機関の貸出金利も、この短期金利・長期金利を基準に決まっていきます。
短期金利とは?
短期金利は、金融機関同士がごく短期間で資金を融通し合う際の基準になる金利です。代表的な指標には無担保コール翌日物金利があります。
特徴
- 政策金利(日銀が決める基準金利)の影響を強く受けるとされている
- 短期的な資金の動き(運転資金、仕入資金など)に関係する
- 変動が早く、資金繰りに即座に影響する場合がある
中小企業への影響
例えば、短期借入金や当座貸越の金利は短期金利に連動することが多いため、短期金利が上がればすぐに資金調達コストが増えます。仕入や人件費など日常的な支出をまかなう運転資金に影響が出るため、資金繰り表にも速やかに反映させる必要があります。
長期金利とは?
長期金利は、1年以上の資金の貸し借りに適用される金利です。代表的な指標には10年国債利回りがあります。
特徴
- 将来の物価動向や景気見通しを反映して決まる
- 設備投資や長期借入金の金利に大きく関わる場合がある
- 短期金利よりも変動が緩やかで、中長期的な資金計画に影響するとされている
中小企業への影響
長期金利が上がれば、設備投資や新規事業のための長期借入金の金利が高くなり、返済負担が増します。逆に、長期金利が低い局面では資金調達コストが下がるため、成長投資を行うチャンスにもなります。
短期金利と長期金利の違いが資金繰りに与える影響
短期金利と長期金利は、それぞれ資金繰りに異なる形で影響します。
- 短期金利の上昇=日々の資金繰りに直結
運転資金の借入コストが増え、キャッシュフローを圧迫する。 - 長期金利の上昇=将来の返済負担を増加
設備投資など長期資金の借入コストが増え、投資判断を慎重にさせる。 - 両者の組み合わせによる影響
短期金利が安定していても長期金利が上がれば投資が難しくなり、逆に短期金利が急騰すれば日常的な資金繰りが厳しくなる。
金融機関の融資スタンスと金利
金融機関は、短期・長期両方の金利動向を踏まえて融資姿勢を変化させます。
- 短期金利が上昇する局面では、運転資金の融資金利も上がりやすくなり、融資に慎重になる場合があります。
- 長期金利が上昇する局面では、企業の返済能力をより厳しく見る場合があり、大型融資や長期資金の貸出に慎重になるケースが増えます。
実務でのチェックポイント
経営者・経理担当者が金利動向を実務に活かすための具体的なチェックポイントを整理します。
- ニュースを自社に引き寄せる
例えば、 「短期金利が0.2%上昇」と報じられたら、自社の短期借入金利がどの程度増えるかを試算する。 - 資金繰り表に反映する
短期金利・長期金利の両方について、複数のパターンでの金利が変動した場合のシナリオを作成しておく。 - 金融機関との会話に活かす
金利動向を理解していることを示すと、金融機関からの信頼も高まりやすい。 - 短期と長期を切り分けて管理する
運転資金(短期)と設備投資(長期)を区別し、それぞれに影響する金利を注視する。

まとめ
短期金利と長期金利は、どちらも中小企業の資金繰りに大きな影響を与えます。
概して、次のような影響を与えるとされています。
- 短期金利=運転資金に直結
- 長期金利=設備投資・成長戦略に直結
経営者や経理担当者は、日々の短期的な資金繰り管理に短期金利を、将来の投資判断に長期金利を意識して取り入れることが重要です。
金融市場の金利動向を「単なるニュース」ではなく「自社の資金管理に直結する情報」として捉えることが、安定した経営基盤を築く第一歩となります。
免責事項
本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の投資行動や資金調達の判断を推奨するものではありません。実際の経営判断にあたっては、金融機関や専門家へご相談の上で、ご自身でご判断ください。