
目次
はじめに
会社が金融機関から融資を受けるとき、必ず登場するのが「金銭消費貸借契約書」です。
この契約書は単なる形式的な書面ではなく、融資の条件・返済方法・金利など、経営に直結する重要な情報を定めています。
しかし、実務の現場では、契約書に充分に目を通さず署名・押印してしまうケースも少なくありません。 その結果、思わぬトラブルや経営上のリスクを抱えることになりかねません。
本記事では、金銭消費貸借契約書の基本から、経営者・経理担当者が押さえておくべき実務上のポイントまでを整理して解説します。

金銭消費貸借契約書とは?
「金銭消費貸借契約書」とは、金融機関が会社にお金を貸し、会社が一定の条件で返済することを約束する契約書です。
一般的には次のような項目が盛り込まれています。
- 契約金額(融資金額)
- 利率(固定金利・変動金利)
- 返済方法(元利均等返済・元金均等返済など)
- 返済期日・返済回数
- 担保や保証人に関する条項
- 期限の利益喪失条項(返済遅延時の対応)
つまり、この契約書を見れば「融資のルール」が一目でわかる仕組みになっています。
なぜ契約書が必要なのか?
口頭で「お金を貸す・返す」と約束しても、法的には不十分です。 契約内容を明文化することで、会社と金融機関の間で認識のズレを防ぎ、万一のトラブルにも備えることができます。
特に金融機関は、不良債権リスクを管理する立場にあるため、契約書なしの融資は原則としてあり得ません。 会社にとっても、契約書は安心材料となるのです。
契約書で特に注意すべきポイント
経営者や経理担当者が契約書に目を通す際、次の項目は必ず確認しておくべきです。
※契約によっては、その他にも必要な箇所は漏れなくご確認ください。
1. 金利の種類
- 固定金利:契約期間中、金利が変わらない。←返済計画を立てやすい。
- 変動金利:市中金利に連動して金利が変動。←将来的に返済額が増える可能性がある。
2. 返済方法
- 元利均等返済:毎月の返済額が一定で分かりやすいが、利息負担がやや大きくなる傾向。
- 元金均等返済:元金の減りが早く利息総額は抑えられるが、当初の返済額が大きい。
3. 担保・保証人の有無
不動産や預金を担保に差し入れるケースや、代表者個人が連帯保証人となるケースがあります。 経営リスクに直結するため、慎重な判断が必要です。
4. 期限の利益喪失条項
例えば「1回でも返済を滞納した場合、残額を一括返済しなければならない」といった条項が記載されています。小さな遅延が大きなリスクに繋がる点を理解しておくことが重要です。
実務上の主なポイント
経理担当者や経営者が契約書を受け取った際には、次の流れで確認すると効率的です。
- 融資条件(契約金額・金利・返済期間)を確認
- 契約書の条項と金融機関からの説明が一致しているか確認
- 担保や保証人に関する記載をチェック
- その他の留意事項をチェック
- 返済スケジュールを資金繰り表に反映
- 社内で契約書を保管し、必要に応じて共有
※契約書を読み込むことで、資金繰り表や会計処理にも反映しやすくなります。

まとめ
融資は会社経営を支える大きな資金調達源ですが、同時に返済という義務も伴います。 そのルールを定めるのが「金銭消費貸借契約書」です。
署名や押印をするだけでなく、契約内容を理解して経営に反映させる姿勢こそが、安定した資金運営と金融機関との良好な関係を築く事に繋がります。
「融資を受けるときの第一歩」として、まずは金銭消費貸借契約書を正しく理解することから始めましょう。