
海外との貿易に関するニュースや統計を見ていると、「FOB価格」という言葉を目にすることがあります。
日本の貿易統計では、原則として輸出はFOB価格、輸入はCIF価格で計上されています。
そのため、日本の輸出額に関するニュースや統計を理解するうえでも、FOB価格がどのような価格なのかを知っておくことは大切です。
ただし、FOBは単に「輸出価格を計算する方法」という意味だけではありません。
国際商業会議所(ICC)が定めるIncoterms®(インコタームズ)の一つでもあり、売主と買主の間で、貨物の引渡し、費用負担、危険負担などをどのように分担するのかを定める貿易条件として使用されます。
今回は、FOB価格とはどのような価格なのか、日本の貿易統計ではどのように扱われているのか、さらにCIF価格との違いやFOB条件での売主・買主の役割まで、わかりやすく解説します。

目次
FOBとは
FOBは、
Free On Board
の略です。
日本語では一般に「本船渡し」と訳されます。
Incoterms® 2020におけるFOBでは、売主は、指定された船積港において、買主が指定した船舶の本船上に貨物を置くことによって引渡しを行います。
そして、貨物が本船上に置かれた時点で、貨物の滅失・損傷に関する危険が売主から買主へ移転します。
国際商業会議所(ICC)は、FOBについて、売主が買主の指定した船舶の本船上で貨物を引き渡し、その時点で貨物の滅失または損傷の危険が買主へ移転すると説明しています。
つまりFOBでは、本船への積込みが非常に重要な境目になります。
FOB価格とはどのような価格なのか
FOB価格をわかりやすく考えると、輸出する貨物について、輸出港で本船に積み込むまでに必要となる費用を反映した価格です。
一般的なイメージとしては、
商品そのものの価格+輸出港までの輸送費+輸出通関や船積みに関係する費用など
によって構成されます。
一方、本船への引渡し後に発生する主たる国際運賃や保険料は、FOB条件では基本的に買主側が負担することになります。
そのため、
FOB価格=単純な商品代金だけ
と考えるのは正確ではありません。
商品を製造・調達し、輸出港まで運び、輸出手続きを行い、本船に積み込むまでにはさまざまな費用が発生するためです。
ただし、具体的にどの費用を売買価格に含めるかについては、実際の契約条件などによって確認する必要があります。
日本の貿易統計では輸出はFOB価格
FOB価格を理解するうえで重要なのが、日本の貿易統計です。
財務省・税関の貿易統計では、
輸出:FOB価格(本船渡し価格)
輸入:CIF価格(保険料・運賃込み価格)
で計上されています。
税関の「貿易統計 よくある質問」でも、輸出についてはFOB価格、輸入についてはCIF価格で計上されることが明記されています。
また、この貿易統計の金額には関税額等は含まれません。
そのため、日本の輸出額について報道されている場合、その金額は原則としてFOB価格を基準としたものです。
なぜ輸出はFOB価格なのか
輸出額についてFOB価格を用いることで、輸出国側で貨物を本船へ引き渡す段階までの価値を基準に把握しやすくなります。
仮に輸出額に海外までの運賃や保険料まで含めてしまうと、同じ商品を同じ価格で輸出した場合でも、輸送距離や海上運賃の違いなどによって統計上の輸出額が大きく変わる可能性があります。
FOB価格を基準とすることで、輸出する貨物そのものと、輸出港までに必要となる費用を中心とした金額として把握できます。
したがって、日本の輸出額を見る際には、
「海外の買主が最終的に支払う総額」
と
「日本の貿易統計に計上される輸出額」
が必ずしも同じではないことを理解しておく必要があります。
FOB価格とCIF価格の違い
FOBとあわせて理解しておきたいのがCIFです。
CIFは、
Cost
Insurance
Freight
の頭文字を取ったもので、一般に「運賃・保険料込み価格」と呼ばれます。
単純化すると、
FOB価格:主たる国際運賃・保険料を含まない
CIF価格:貨物代金に主たる運賃・保険料を含む
という違いがあります。
たとえば、
FOB価格 100万円
海上運賃 10万円
保険料 2万円
とします。
単純化すると、
CIF価格=100万円+10万円+2万円=112万円
という関係になります。
したがって、同じ貨物でもFOB価格とCIF価格では金額が異なります。
日本の貿易統計で、
輸出はFOB価格
輸入はCIF価格
とされていることを理解しておくと、輸出額と輸入額を見る際の違いがわかりやすくなります。
CIF価格については、「CIF価格とは何か?輸入価格のニュースを見るときに知っておきたい基本」で詳しく解説しています。FOB価格との違いをより理解するために、あわせてご覧ください。

FOBでは誰が運送契約を結ぶのか
Incoterms® 2020のFOBでは、原則として売主には主たる運送契約を締結する義務はありません。
買主が船舶を指定し、主たる国際輸送を手配することが基本です。
売主は、指定された船積港で、買主が指定した船舶の本船上に貨物を引き渡します。
ただし、売主と買主が合意した場合には、売主が買主に代わって運送契約を締結することもできます。この場合でも、主たる運送にかかる費用と危険は買主が負担するのがFOBの基本的な考え方です。
そのため実際の取引では、「FOB」と記載されているだけで判断せず、誰が運送契約を手配するのか、また、その費用を誰が負担するのかについて、売買契約や具体的な取引条件を確認することが大切です。
FOBでは貨物の危険はいつ移転するのか
FOBを理解するうえで非常に重要なのが、危険負担の移転時点です。
Incoterms® 2020では、売主が貨物を買主の指定する船舶の本船上に置いた時点で、貨物の滅失・損傷に関する危険が買主へ移転します。
たとえば、貨物を本船に積み込んだ後、航海中に事故などによって貨物が損傷した場合、FOBの危険負担の考え方では、原則としてその危険は買主側に移転した後ということになります。
したがって、FOBでは、
誰が費用を負担するのか
だけではなく、
どの時点で危険が移転するのか
を理解することが重要です。
「本船に到着した時」ではない
FOBについて、
「輸入先の港に船が到着した時に危険が買主へ移る」
と考えるのは誤りです。
FOBでは、目的地への到着時ではありません。
指定された船積港において、貨物が本船上に置かれた時点で危険が移転します。
たとえば日本からアメリカへFOB条件で輸出する場合、日本の指定船積港で貨物が本船上に積み込まれた時点が重要です。
アメリカの港へ到着するまで売主が危険を負担し続けるという意味ではありません。
FOBはどの輸送方法でも使えるわけではない
FOBは非常によく知られている貿易条件ですが、どのような輸送にも適しているわけではありません。
Incoterms® 2020では、FOBは海上輸送または内陸水路輸送に使用するルールとされています。
ICCは、貨物が本船に積み込まれる前に運送人へ引き渡される取引、たとえばコンテナターミナルで運送人へ引き渡されるケースでは、FOBではなくFCA(Free Carrier:運送人渡し)の利用を検討するよう説明しています。
コンテナ貨物では、輸出者自身が貨物を直接本船へ積み込むのではなく、コンテナターミナルなどで運送人へ引き渡すことが一般的です。
そのため、実際の物流の流れによってはFOBよりFCAの方が取引実態に適する場合があります。
「輸出だからFOB」と一律に考えるのではなく、どの時点・場所で貨物を引き渡すのかによって適切な条件を選ぶ必要があります。
FOBとFCAの違い
FCAは「Free Carrier」の略です。
FOBとの大きな違いの一つは、貨物を引き渡す場所です。
FOBでは、
指定船積港の本船上
で貨物を引き渡します。
一方FCAでは、契約で定めた場所で買主側の運送人などへ貨物を引き渡します。
そのため、コンテナ貨物のように、本船へ積み込まれる前のターミナルで運送人へ貨物を渡す場合には、FCAが適する場合があります。
ICCも、コンテナ輸送や複合輸送などの場合にはFCAを検討する考え方を示しています。
FOB価格と為替の関係
日本から海外へ商品を輸出する場合、取引通貨が米ドルなどの外国通貨であれば、為替相場も会社の売上や採算に影響します。
たとえばFOB価格が1万ドルの場合、
1ドル=100円なら、
1万ドル×100円=100万円
です。
一方、
1ドル=150円なら、
1万ドル×150円=150万円
となります。
ドル建てのFOB価格が同じでも、円換算額は変わります。
したがって、輸出会社にとっては、FOB価格だけでなく契約通貨や為替相場も重要になります。
ただし、実際の会社の採算は原材料費、輸送関連費、為替予約の有無、契約条件などによって異なるため、単純に「円安なら必ず有利」と判断することはできません。
FOB価格が上昇するのはどのようなときか
FOB価格に影響する要因としては、さまざまなものがあります。
商品そのものの価格
製造原価や仕入価格が上昇すれば、輸出価格にも上昇圧力がかかります。
原材料価格、人件費、エネルギー価格などの変化も影響する可能性があります。
国内輸送費
工場や倉庫から輸出港まで貨物を運ぶための国内輸送費が増加すれば、輸出に必要なコストが増えます。
港湾・船積みに関係する費用
貨物を輸出港で取り扱い、本船へ積み込むまでにはさまざまな費用が発生します。
これらの費用の変化も、会社が設定する輸出価格に影響する可能性があります。
為替相場
外貨建てで価格設定している場合には、為替相場が円換算した売上や採算に影響します。
このように、FOB価格を見る場合にも、単純に商品価格だけではなく、その背景にあるコストや契約条件を確認することが重要です。
海上運賃が上昇するとFOB価格も上昇するのか
ここはCIF価格との違いが表れやすい部分です。
FOB条件では、原則として本船への引渡し後の主たる国際運賃を買主が負担します。
そのため、海上運賃が上昇したからといって、その金額がそのままFOB価格に加算されるわけではありません。
一方、CIFでは売主が指定仕向港までの運送契約を締結し、必要な運賃を負担します。
したがって、海上運賃の変動を見る場合には、
FOB価格なのか
CIF価格なのか
を区別することが重要です。
ただし、実際の取引価格は市場環境や売買契約などによって決まるため、国際運賃の上昇がFOB価格に間接的な影響を与える可能性まで否定するものではありません。

輸出額のニュースを見るときのポイント
ニュースで、
「日本の輸出額が増加した」
と報道された場合、その金額は原則としてFOB価格を基準に集計されています。
輸出額が増える要因には、
- 輸出数量が増えた
- 商品価格が上昇した
- 高価格の商品構成が増えた
- 円換算した金額が変化した
など、さまざまなものが考えられます。
したがって、輸出額の増加だけを見て、「海外への販売数量が増えた」と判断することはできません。
輸出額を見る場合には、数量、価格、為替などもあわせて確認することが大切です。
FOB価格は会社経営にも関係する
FOB価格は貿易統計だけの用語ではありません。
海外へ商品を販売する会社にとっては、販売価格や利益率、輸送費、為替、資金繰りにも関係します。
たとえばFOB条件で輸出する会社では、
- 商品原価はいくらか
- 国内輸送費はいくらか
- 輸出通関や船積みに必要な費用はいくらか
- どの通貨で販売するか
- 為替変動によって利益がどの程度変化するか
- 入金までにどの程度の日数がかかるか
などを確認する必要があります。
FOB価格を決める際には、単に競合他社の販売価格だけを見るのではなく、自社がどこまでの費用を負担するのかを把握することが大切です。
FOBとCIFをセットで理解する
FOBとCIFは、両方をセットで理解すると貿易ニュースがさらにわかりやすくなります。
FOBでは、基本的に売主が本船上で貨物を引き渡します。
CIFでは、売主が貨物を本船上で引き渡す点では共通しますが、さらに指定された仕向港までの運賃を負担し、一定の保険を手配します。
重要なのは、CIFだからといって危険が仕向港まで売主に残るわけではないことです。
FOBもCIFも、Incoterms® 2020では原則として貨物が本船上に置かれた時点で危険が買主へ移転します。
つまり、
費用負担の範囲
と
危険が移転する時点
を分けて考える必要があります。
この違いを理解すると、FOBとCIFを単なる「価格の違い」だけではなく、貿易条件として理解できるようになります。
まとめ
FOBは「Free On Board」の略で、日本語では一般に「本船渡し」と呼ばれます。
Incoterms® 2020では、売主が指定された船積港において買主が指定した船舶の本船上に貨物を置くことで引渡しが行われ、その時点で貨物の滅失・損傷に関する危険が買主へ移転します。
また、日本の貿易統計では、原則として輸出はFOB価格、輸入はCIF価格で計上されています。
FOB価格について考える場合には、単純な商品代金だけではなく、輸出港までの輸送や船積みまでに必要となる費用なども考慮する必要があります。
一方、本船積込み後の主たる国際運賃や保険料については、FOB条件では基本的に買主側が負担します。
さらにFOBは、原則として海上輸送・内陸水路輸送に使用するルールです。
コンテナターミナルで本船積込み前に運送人へ貨物を引き渡す場合などには、FCAの方が適切な場合があります。
輸出額に関するニュースを見る場合にも、「輸出額は原則としてFOB価格で集計されている」という点を知っておけば、数字の意味をより正確に理解しやすくなります。
FOBは「Free On Board」の略で、日本語では一般に「本船渡し」と呼ばれます。Incoterms® 2020では、売主が指定船積港で買主の指定する船舶の本船上に貨物を引き渡す取引条件です。
Incoterms® 2020では、原則として貨物が指定された船積港で本船上に置かれた時点で、貨物の滅失・損傷に関する危険が売主から買主へ移転します。
はい。財務省・税関の貿易統計では、原則として輸出はFOB価格、輸入はCIF価格で計上されています。
FOB条件では、本船への引渡し後の主たる国際運賃は基本的に買主側が負担します。そのため、一般的なFOB価格には仕向港までの主たる海上運賃は含まれません。
Incoterms® 2020では、FOBもCIFも、原則として貨物が本船上に置かれた時点で危険が買主へ移転します。両者の大きな違いの一つは、売主が負担する運賃や保険の範囲です。
FOBは海上・内陸水路輸送の規則ですが、貨物が本船積込み前にコンテナターミナルなどで運送人へ引き渡される場合、ICCはFCAの利用を検討するよう示しています。実際の貨物の引渡し方法に応じて適切な条件を選ぶ必要があります。
主な出典
財務省・税関「貿易統計 よくある質問」
https://www.customs.go.jp/toukei/sankou/howto/faq.htm
大阪税関「大阪税関管内の貿易統計」
https://www.customs.go.jp/osaka/toukei/03_kannai.html
International Chamber of Commerce(ICC)「Incoterms® 2020 Wallchart」
https://academy.iccwbo.org/wp-content/uploads/2020/08/803E_Incoterms-2020-Wallchart-A4.pdf
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的として作成しています。FOBを含む貿易条件、費用負担、危険負担その他の取扱いは、実際の売買契約、輸送方法、貨物の種類、取引条件等によって異なる場合があります。また、制度や取扱いは変更される可能性があります。実際の輸出取引を行う場合には、最新の公的情報、Incoterms®の正式な規則および個別の契約内容等をご確認ください。本記事の情報を利用したことにより生じた損害については、責任を負いかねます。




